申告
暗号資産の税金は原則として雑所得。
売ったときだけでなく、使ったとき・交換したときにも利益が出ます
暗号資産で利益が出たとき、「円に換えていないから関係ない」と思っておられる方が少なくありません。ところが国税庁のFAQを読むと、そうはなっていません。
暗号資産で商品を買ったときも、別の暗号資産に交換したときも、そこで利益を計算することになっています。ビットコインでリップルを買った、それだけで課税関係が生じます。
国税庁の「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」は、令和7年12月に最終改訂されています。このFAQの本文にそって、どこで利益が出るのか、いくらと計算するのかを確認していきます。
この記事の要点
暗号資産取引により生じた利益は、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます。その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合は、帳簿書類の保存があれば原則として事業所得、なければ業務に係る雑所得です。売却して円に換えたときだけでなく、暗号資産で商品を購入したとき、暗号資産同士を交換したときにも譲渡損益を計算します。譲渡原価は総平均法か移動平均法で、届出をしなければ総平均法。取得価額が分からないときは売却価額の5%相当額とすることが認められます。国税庁の暗号資産FAQをもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
- 関連雑所得の3区分
- ご案内会社員の副業の確定申告
暗号資産の利益は原則として雑所得
まず所得の区分です。国税庁のFAQは、暗号資産取引により生じた利益は所得税の課税対象になり、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されるとしています。理由も書かれていて、暗号資産取引により生じた損益は邦貨または外貨との相対的な関係により認識される損益と認められるから、という整理です。
国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」2-2 暗号資産取引の所得区分
暗号資産取引により生じた利益は、所得税の課税対象になり、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます。
雑所得のなかでも「その他雑所得」です。株式の譲渡のような申告分離課税ではなく、給与などと合算して累進税率がかかる総合課税になります。ここが株式との大きな違いで、利益が大きいほど税率が上がっていきます。
収入金額が300万円を超えるとき。帳簿書類の保存があるか
ただし、収入金額が一定額を超えると区分が変わります。FAQは、その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合について、帳簿書類の保存の有無で分けています。
| その年の暗号資産取引に係る収入金額 | 帳簿書類の保存 | 所得区分 |
|---|---|---|
| 300万円以下 | - | 原則として雑所得(その他雑所得) |
| 300万円超 | あり | 原則として事業所得 |
| 300万円超 | なし | 原則として雑所得(業務に係る雑所得) |
ここでいう300万円は所得ではなく収入金額です。利益が300万円ではありません。売却した金額そのものを見ますから、売り買いを繰り返していれば、手元に残った利益が小さくても超えることがあります。
なお、帳簿書類の保存があっても自動的に事業所得になるわけではありません。FAQの注記は、暗号資産取引に営利性が認められない場合などには事業所得に該当するかどうかを個別に判断することとなる、としています。また、事業所得者が事業用資産として暗号資産を保有し、棚卸資産等の購入の際の決済手段として暗号資産を使用した場合のように、暗号資産取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合は事業所得に区分されます。
売ったときだけではない。使ったとき・交換したときにも利益が出る
ここがいちばん誤解の多いところです。FAQは、売却のほかに「暗号資産で商品を購入した場合」と「暗号資産同士の交換を行った場合」を、それぞれ独立した項目として立てています。
国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」1-2 暗号資産で商品を購入した場合
保有する暗号資産で商品を購入した場合、保有する暗号資産を譲渡したことになりますので、この譲渡に係る所得金額は、その暗号資産の譲渡価額とその暗号資産の譲渡原価等との差額となります。
交換についても同じ考え方です。FAQは、保有する暗号資産Aを他の暗号資産Bと交換した場合、暗号資産Aで暗号資産Bを購入したことになる、としています。ビットコインでリップルを買えば、ビットコインを売ったのと同じ扱いです。円に戻していなくても、そこで損益が確定します。
これを知らずに取引だけを重ねていると、年末に円に換えた金額はわずかなのに、申告すべき利益は大きく積み上がっている、ということが起こります。損益が出る場面は、円への売却・商品の決済・暗号資産同士の交換の3つ。まずここを押さえてください。
計算のしかた。譲渡価額から譲渡原価を引く
計算の形はどの場面でも同じで、譲渡価額から譲渡原価を引きます。FAQの設例で確かめます。4月2日に4,000,000円で4BTCを購入し、4月20日に0.2BTCを210,000円で売却した場合です(売買手数料は勘案していません)。
国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」1-1 暗号資産を売却した場合
210,000円 -(4,000,000円÷4BTC)× 0.2BTC = 10,000円
商品を買った場合も形は変わりません。同じ4BTCを持っている人が、10月5日に403,000円(消費税等込)の商品を購入する際の決済に0.3BTCを支払った場合、商品価額403,000円がビットコインの譲渡価額になり、403,000円-(4,000,000円÷4BTC)×0.3BTC=103,000円が所得金額です。
交換の場合は、受け取った側の暗号資産の購入価額が譲渡価額になります。11月2日に40XRPを購入する際の決済に1BTCを支払い、取引時の交換レートが1XRP=30,000円であれば、(30,000円×40XRP)-(4,000,000円÷4BTC)×1BTC=200,000円です。円は動いていませんが、200,000円の所得が出ています。
取得価額には購入手数料を含める
譲渡原価の土台になるのが取得価額です。FAQは、対価を支払って取得(購入)した場合の取得価額は購入時に支払った対価の額であり、購入手数料など暗号資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額となるとしています。
設例では、10月2日に2BTCを2,000,000円で購入し、購入時に手数料550円(消費税等込)を支払った場合、取得価額は購入の代価2,000,000円に手数料550円を加算した2,000,550円になるとされています。
取得の方法によって取得価額の決め方は変わります。FAQの整理は次のとおりです。
| 取得の方法 | 取得価額 |
|---|---|
| 対価を支払って取得(購入)した場合 | 購入時に支払った対価の額(購入手数料等を加算) |
| 自己が発行することにより取得した場合 | その発行のために要した費用の額 |
| 贈与または遺贈により取得した場合(下記を除く) | 贈与または遺贈の時の価額(時価) |
| 相続人に対する死因贈与、相続、包括遺贈または相続人に対する特定遺贈により取得した場合 | 被相続人の死亡の時に、その被相続人が暗号資産について選択していた方法により評価した金額 |
| 上記以外(暗号資産同士の交換、マイニング、分裂など) | その取得時点の価額(時価) |
交換で取得した暗号資産の取得価額は、その取得時点の時価です。交換のたびに、渡した側で損益が出て、受け取った側で新しい取得価額が立つ、という関係になります。
総平均法と移動平均法。届け出なければ総平均法になる
同じ種類の暗号資産を何度も売り買いしていると、1単位あたりいくらで取得したことにするかを決めなければ譲渡原価が計算できません。FAQは、総平均法または移動平均法のいずれかの評価方法により算出することとしています。
| 評価方法 | 考え方 |
|---|---|
| 総平均法 | 年初時点で保有する暗号資産の評価額と、その年中に取得した暗号資産の取得価額との総額との合計額を、これらの暗号資産の総量で除して「年末時点での1単位当たりの取得価額」とする |
| 移動平均法 | 暗号資産を取得する都度、その取得時点において保有している暗号資産の簿価の総額をその時点の数量で除して平均単価を出し、12月31日から最も近い日に算出された平均単価を使う |
どちらを選ぶかで金額は変わります。FAQの設例(1年間の購入額の総額4,037,800円・6.5BTC、売却額の総額5,295,000円・5BTC)では、譲渡原価は総平均法で3,106,000円、移動平均法で3,080,200円と、25,800円の差が出ています。
手続も決まっています。初めて暗号資産を取得した場合、および異なる種類の暗号資産を取得した場合には、その取得した年分の確定申告期限(原則:翌年3月15日)までに「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。FAQは、評価方法の届出書の提出がない場合には評価方法は総平均法になる、と明記しています。
いったん選んだ方法を変えるときは、届出では足りません。変更しようとする年の3月15日までに「所得税の暗号資産の評価方法の変更承認申請書」を提出して承認を受ける必要があります。しかもFAQの注記は、変更前の評価方法を採用してから相当期間(特別の理由がない場合には3年)を経過していないときなどは申請が却下される場合がある、としています。思いつきで行き来できる仕組みではありません。
取得価額が分からないときは売却価額の5パーセント
取引履歴を残していなかった場合の手当てもFAQに書かれています。まず国内の暗号資産交換業者を通じた取引であれば、年中購入数量・年中購入金額・年中売却数量・年中売却金額などが記載された年間取引報告書が手がかりになります。手元になければ、暗号資産交換業者に再交付を依頼するよう案内されています。
国外の暗号資産交換業者や個人間取引の場合は、銀行口座の出金・入金の状況や、取引履歴と暗号資産交換業者が公表する取引相場から確認していくことになります。それでも分からない場合について、FAQは次のように書いています。
国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」2-7 暗号資産の取得価額や売却価額が分からない場合
売却した暗号資産の取得価額については、売却価額の5%相当額とすることが認められます。
設例では、ある暗号資産を500万円で売却した場合に、その暗号資産の取得価額を売却価額の5パーセント相当額である25万円とすることが認められる、とされています。ただしこれは、残りが利益として課税されるということでもあります。実際の取得価額が分かるならそのほうが有利になる場面が多く、履歴を残しておくことの価値はここにあります。
マイニング・ステーキング・レンディングで取得したとき
買ったのではなく、受け取る形で増えた場合です。FAQは、いわゆるマイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合、その取得に伴い生ずる利益は所得税または法人税の課税対象となるとしています。
具体的には、取得した暗号資産の取得時点の価額(時価)が総収入金額に算入され、マイニング等に要した費用が必要経費に算入されます。受け取った時点で課税関係が生じますから、その後に値下がりしても、受け取った時の時価で収入を計上することになります。
必要経費については、FAQに具体例が挙がっています。譲渡原価と売却の際に支払った手数料のほか、インターネットやスマートフォン等の回線利用料、パソコン等の購入費用も、暗号資産の売却のために直接必要な支出であると認められる部分の金額に限り算入できるとされています。ただし回線利用料は暗号資産取引に係る利用料を明確に区分できる場合に限るとされ、パソコンなど使用可能期間が1年以上で一定金額を超える資産は減価償却によることとされています。
損失が出ても、給与とは通算できない
最後に損失です。暗号資産の取引で損が出た年に、給与から引けないかというご質問はよく受けます。FAQの答えははっきりしています。
国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」2-11 暗号資産取引で損失が生じた場合の取扱い
雑所得の金額の計算上生じた損失については、給与所得など他の所得から差し引く(通算する)ことはできません。
理由も書かれています。所得税法上、他の所得と通算できる損失は不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の金額の計算上生じた損失に限られ、雑所得はこれらに該当しないためです。
上場株式のような譲渡損失の繰越控除の仕組みも、雑所得にはありません。利益が出た年には総合課税で累進税率がかかり、損失が出た年には他の所得から引けない。この非対称を前提に考えておく必要があります。取引を始める前の段階でご相談いただければ、記録の残し方も含めてお話しできます。
よくある質問
暗号資産の利益は何所得になりますか
まず所得の区分です。国税庁のFAQは、暗号資産取引により生じた利益は所得税の課税対象になり、 原則として雑所得(その他雑所得)に区分される としています。理由も書かれていて、暗号資産取引により生じた損益は邦貨または外貨との相対的な関係により認識される損益と認められるから、という整理です。→ 本文で読む
暗号資産の収入金額が300万円を超えるとどうなりますか
ただし、収入金額が一定額を超えると区分が変わります。FAQは、その年の暗号資産取引に係る収入金額が 300万円を超える場合 について、帳簿書類の保存の有無で分けています。 ここでいう300万円は所得ではなく 収入金額 です。利益が300万円ではありません。売却した金額そのものを見ますから、売り買いを繰り返していれば、手元に残った利益が小さくても超えることがあります。→ 本文で読む
暗号資産を円に換えていなければ課税されませんか
ここがいちばん誤解の多いところです。FAQは、売却のほかに「暗号資産で商品を購入した場合」と「暗号資産同士の交換を行った場合」を、それぞれ独立した項目として立てています。 交換についても同じ考え方です。FAQは、保有する暗号資産Aを他の暗号資産Bと交換した場合、暗号資産Aで暗号資産Bを購入したことになる、としています。 ビットコインでリップルを買えば、ビットコインを売ったのと同じ扱い です。円に戻していなくても、そこで損益が確定します。→ 本文で読む
暗号資産の評価方法の届出書は出す必要がありますか
同じ種類の暗号資産を何度も売り買いしていると、1単位あたりいくらで取得したことにするかを決めなければ譲渡原価が計算できません。FAQは、 総平均法 または 移動平均法 のいずれかの評価方法により算出することとしています。→ 本文で読む
暗号資産の取得価額が分からない場合はどうしますか
取引履歴を残していなかった場合の手当てもFAQに書かれています。まず国内の暗号資産交換業者を通じた取引であれば、年中購入数量・年中購入金額・年中売却数量・年中売却金額などが記載された 年間取引報告書 が手がかりになります。手元になければ、暗号資産交換業者に再交付を依頼するよう案内されています。→ 本文で読む
暗号資産の損失を給与所得から差し引けますか
最後に損失です。暗号資産の取引で損が出た年に、給与から引けないかというご質問はよく受けます。FAQの答えははっきりしています。 理由も書かれています。所得税法上、他の所得と通算できる損失は 不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得 の金額の計算上生じた損失に限られ、雑所得はこれらに該当しないためです。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」平成30年11月(令和7年12月最終改訂)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf - 国税庁「No.1524 暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1524.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
暗号資産の取引履歴は、年が明けてからでは集めにくくなります。
暗号資産の申告でいちばん時間がかかるのは、税額の計算ではなく取引履歴の整理です。国内の交換業者だけでなく海外の取引所やウォレットが混ざっていると、年が明けてから集めるのは大変な作業になります。取引をしている段階でご相談いただければ、必要な記録の残し方からお伝えできます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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