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税制改正

暗号資産の分離課税(20%)はいつから。
改正法は成立済み、適用開始年は政令待ちです

暗号資産の利益に、株と同じような20%の分離課税が入る。この改正は、もう法律として成立しています。令和8年3月に公布された所得税法等の改正法に、租税特別措置法の新しい条文が入りました。

ただ、いつの取引から使えるかは、まだ決まっていません。適用開始は、暗号資産を金融商品取引法の対象に移す別の改正法の施行日に連動しているからです。

この記事では、e-Gov法令検索で取得した改正後の条文(未施行)をもとに、税率・対象・損失の繰越し・適用開始の決まり方を確認します。それまでの取引は、今の総合課税のままです。

公開 最終更新

この記事の要点

暗号資産の利益を他の所得と分けて課税する改正は、所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)で成立しています。税率は所得税15%と住民税5%。損失は3年間繰り越せます。ただし適用は、金融商品取引法等の改正法(令和8年法律第64号)の施行日の属する年の翌年1月1日以後の譲渡からで、その施行日は政令で決まり、まだ確定していません。対象は登録された暗号資産を国内の業者を通じて譲渡したものに限られます。e-Govの条文で確認しました。

先に見ておくと分かりやすいもの

改正法は令和8年3月に成立・公布されている

暗号資産の分離課税は、大綱の段階の話ではありません。所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)が令和8年3月31日に公布され、租税特別措置法に第38条の2と第38条の3が加わることが決まっています。e-Gov法令検索では、改正後の条文が「未施行」として公開されています。

新しい条文の見出しは「特定暗号資産に係る譲渡所得等の課税の特例」です。特定暗号資産の譲渡による事業所得・譲渡所得・雑所得を、ほかの所得と区分して課税する仕組みです。

租税特別措置法 第38条の2第1項(令和8年法律第12号による改正後。未施行)

当該特定暗号資産の譲渡による事業所得、譲渡所得及び雑所得については、所得税法第二十二条及び第八十九条並びに第百六十五条の規定にかかわらず、他の所得と区分し

住民税の側も、地方税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第2号)で地方税法の附則に同じ趣旨の特例が入っています。国税と地方税の両方が、すでに法律として成立しているということです。

適用開始は「施行日の属する年の翌年1月1日」。施行日は政令で決まる

いちばん気になる適用開始は、2026年10月20日の時点では確定していません。改正法の附則は、この特例の施行日を「次号に掲げる規定の施行の日の属する年の翌年の一月一日」としていて、その「次号」が別の法律の施行日を指しているからです。

指されているのは、金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第64号)です。2026年7月23日に公布され、施行日は公布の日から1年を超えない範囲内で政令で定める日とされています。

令和8年法律第64号の施行日分離課税の対象になる譲渡
2026年中に施行された場合2027年1月1日以後の譲渡
2027年中に施行された場合2028年1月1日以後の譲渡

e-Govは、施行日の上限にあたる2027年7月22日を予定日として表示し、それに合わせて措置法の新しい条文を2028年1月1日施行予定としています。ただしこれは政令が出る前の表示です。経過措置の附則第39条は、附則第1条第10号に定める日以後に行う譲渡について適用する、としています。年の途中から切り替わるのではなく、1月1日を境に分かれます。

税率は所得税15%と住民税5%

税率は、特定暗号資産に係る課税譲渡所得等の金額に対して、所得税が15%、住民税が5%、合わせて20%です。所得税は措置法第38条の2第1項に「百分の十五」と書かれています。

住民税は地方税法附則第35条の3の6で、道府県民税の所得割が2%、市町村民税の所得割が3%です。指定都市にお住まいの方は道府県民税1%・市町村民税4%の配分になりますが、合計はどちらも5%です。地方税法のこの改正は、令和8年法律第64号の施行日の属する年の翌々年の1月1日施行と定められています。住民税は前年中の所得に課税する仕組みなので、所得税の特例が始まる年の所得から、住民税の特例も対応する形です。

いまの総合課税では、暗号資産の利益は給与などと合算され、所得が大きいほど税率が上がります。分離課税になると、ほかの所得の大きさに関係なく同じ税率になります。

対象は登録された暗号資産を国内の業者を通じて譲渡したもの

すべての暗号資産の取引が分離課税になるわけではありません。条文は対象を二重に絞っています。一つは暗号資産の種類、もう一つは譲渡の相手です。

種類は「特定暗号資産」で、金融商品取引法の金融商品取引業者登録簿にその名称が登録されているものなど、財務省令で定めるものに限られます。譲渡の方法は、暗号資産取引業を行う金融商品取引業者(条文の呼び方は「暗号資産取引業者」)への売委託によるもの、または暗号資産取引業者に対するものに限られます。

条文の書き方からすると、海外の取引所での売却や個人間の取引は、この特例の外に置かれることになります。どの暗号資産が特定暗号資産に当たるか、暗号資産どうしの交換がどう扱われるかといった細部は、政令・財務省令で決まります。2026年10月20日の時点では、その政省令は確認できていません。

あわせて、暗号資産取引業者には、取引をした年の翌年1月31日までに、顧客の氏名・個人番号・暗号資産の名称などを書いた報告書を税務署長に出す義務が新しく課されます。附則第39条第2項により、この報告書は特例の始まる年の翌年1月1日以後の取引から適用されます。

損失は他の所得と通算しないが、3年間繰り越せる

分離課税の対象になった取引で損が出た場合、その損失は給与などほかの所得と通算できません。条文は、損失の金額は「生じなかつたものとみなす」としています。この点は、いまの雑所得の扱いと同じ結論です。

違うのは繰越しです。新しい措置法第38条の3は、前年以前3年内の各年に生じた特定暗号資産に係る譲渡損失の金額を、その年の特定暗号資産に係る譲渡所得等の金額から控除できるとしています。

租税特別措置法 第38条の3第1項(令和8年法律第12号による改正後。未施行)

その年の前年以前三年内の各年において生じた特定暗号資産に係る譲渡損失の金額(この項の規定の適用を受けて前年以前において控除されたものを除く。)を有する場合には

ただし、損失が出た年分に明細書などを添付した確定申告書を出し、その後も連続して確定申告書を出していることが条件です(同条第3項)。上場株式の譲渡損失の繰越しと同じ形で、損の出た年に申告しなければ、翌年以後に使えません。

証拠金取引など、デリバティブ取引の扱い

暗号資産の証拠金取引は、いまは申告分離課税の対象から除かれ、総合課税です。国税庁のFAQは、FXと同じく金融商品先物取引等に該当するものの、租税特別措置法の規定により申告分離課税の対象から除かれている、と説明しています。

改正後の措置法第41条の14は、先物取引に係る雑所得等の課税の特例の対象から除くデリバティブ取引を、特定暗号資産以外の暗号資産に係るものに絞る書き方に変わります。特定暗号資産に係る一定のデリバティブ取引は、先物取引の分離課税の側に入る形です。適用開始は現物の特例と同じ日です。先物取引の仕組みは先物取引に係る雑所得等で整理しています。

それまでの取引は今の総合課税のまま

分離課税が始まる日より前の譲渡には、新しい特例は使えません。それまでは、国税庁のFAQのとおり原則として雑所得の総合課税です。暗号資産で商品を買ったときや、暗号資産どうしを交換したときにも損益が出ること、損失を給与と通算できないこと、翌年に繰り越せないことは、いまも変わっていません。

計算のしかたは暗号資産の税金は原則として雑所得にまとめています。改正の施行日を定める政令が出たら、この記事を更新します。

よくある質問

暗号資産の分離課税は決まったのですか

暗号資産の分離課税は、大綱の段階の話ではありません。 所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)が令和8年3月31日に公布され、租税特別措置法に第38条の2と第38条の3が加わることが決まっています。 e-Gov法令検索では、改正後の条文が「未施行」として公開されています。→ 本文で読む

暗号資産の分離課税はいつの取引から適用されますか

いちばん気になる適用開始は、 2026年10月20日の時点では確定していません。 改正法の附則は、この特例の施行日を「次号に掲げる規定の施行の日の属する年の翌年の一月一日」としていて、その「次号」が別の法律の施行日を指しているからです。→ 本文で読む

暗号資産の分離課税の税率は何%ですか

税率は、特定暗号資産に係る課税譲渡所得等の金額に対して、 所得税が15%、住民税が5%、合わせて20% です。所得税は措置法第38条の2第1項に「百分の十五」と書かれています。 住民税は地方税法附則第35条の3の6で、道府県民税の所得割が2%、市町村民税の所得割が3%です。指定都市にお住まいの方は道府県民税1%・市町村民税4%の配分になりますが、合計はどちらも5%です。地方税法のこの改正は、令和8年法律第64号の施行日の属する年の翌々年の1月1日施行と定められています。住民税は前年中の所得に課税する仕組みなので、所得税の特例が始まる年の所得から、住民税の特例も対応する形です。→ 本文で読む

海外の取引所での売却も分離課税になりますか

すべての暗号資産の取引が分離課税になるわけではありません。条文は対象を二重に絞っています。 一つは暗号資産の種類、もう一つは譲渡の相手です。 種類は「特定暗号資産」で、金融商品取引法の金融商品取引業者登録簿にその名称が登録されているものなど、財務省令で定めるものに限られます。譲渡の方法は、暗号資産取引業を行う金融商品取引業者(条文の呼び方は「暗号資産取引業者」)への売委託によるもの、または暗号資産取引業者に対するものに限られます。→ 本文で読む

分離課税になった後、暗号資産の損失は繰り越せますか

分離課税の対象になった取引で損が出た場合、その損失は給与などほかの所得と通算できません。 条文は、損失の金額は「生じなかつたものとみなす」としています。 この点は、いまの雑所得の扱いと同じ結論です。→ 本文で読む

出典

  1. 租税特別措置法(e-Gov法令検索)第38条の2・第38条の3(令和8年法律第12号による改正。未施行)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
  2. 地方税法(e-Gov法令検索)附則第35条の3の6(令和8年法律第2号による改正。未施行)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
  3. 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」平成30年11月(令和7年12月最終改訂)
    https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

分離課税が始まるまでの取引も、記録の残し方で後の計算が変わります。

分離課税が始まっても、それより前の取引は今の総合課税で申告します。どの取引がどちらに入るかを分けるには、取引の日付と取引先の記録が欠かせません。海外の取引所やウォレットを使っている方は、特例の対象にならない取引が混ざる可能性があります。いまの保有と取引の状況から、ご相談いただけます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。