副業
会社員の暗号資産の利益と20万円。
判定は売却額ではなく所得金額で見ます
「暗号資産の利益が20万円以下なら申告しなくていい」。会社員の方から、いちばん多く確認される点です。半分は合っています。
国税庁のタックスアンサーNo.1900は、給与を1か所から受けている人について、給与・退職以外の所得金額の合計額が20万円を超えると確定申告が必要としています。ここで見るのは売った金額ではなく、所得金額です。そして暗号資産だけでなく、ほかの副業の所得と合わせた金額です。
この記事では、20万円の判定に何を入れて、何を引くのかを、No.1900と国税庁の暗号資産FAQで確かめます。
この記事の要点
給与を1か所から受けていて全部が源泉徴収の対象になる会社員は、給与所得と退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超えると確定申告が必要です。暗号資産の利益は原則として雑所得で、この合計に入ります。20万円は売却した金額ではなく、売却価額から譲渡原価や手数料を引いた所得金額です。交換や決済で出た利益も含め、副業の所得と合算して判定します。国税庁タックスアンサーNo.1900と暗号資産FAQをもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
給与1か所の会社員は、ほかの所得の合計が20万円を超えると申告が必要
先に答えを書くと、給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象になる方は、給与所得と退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下なら、所得税の確定申告をしなければならない人には当たりません。暗号資産の利益はこの「ほかの所得」に入ります。
国税庁 タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」
給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人
No.1900には、この合計額に含まれない所得の一覧もあります。源泉徴収選択口座の上場株式等の譲渡所得で申告しないことを選んだもの、源泉分離課税の預貯金の利子などです。暗号資産の所得は、この一覧に入っていません。暗号資産の利益は、20万円の判定に数える所得です。
国税庁のFAQは、暗号資産取引により生じた利益を、原則として雑所得(その他雑所得)としています。雑所得の区分の考え方は雑所得の3区分で整理しています。
20万円は所得金額。売却額から譲渡原価と手数料を引いた額
20万円と比べるのは、売った金額(収入金額)ではなく所得金額です。所得金額は、総収入金額から必要経費を引いて出します。暗号資産の必要経費の中心は、売った暗号資産の譲渡原価と、売却の際に払った手数料です。
国税庁のFAQの設例で見ると、4,000,000円で4BTCを買い、0.2BTCを210,000円で売った場合の所得金額は、次のとおりです。
国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」1-1 暗号資産を売却した場合
210,000円 -(4,000,000円÷4BTC)× 0.2BTC = 10,000円
210,000円で売っていても、所得金額は10,000円です。逆に、売却額が小さくても、安いときに買ったものなら所得金額は大きくなります。判定には、1単位あたりの取得価額を計算することが欠かせません。同じ暗号資産を何度も買っていれば、総平均法か移動平均法で計算します。
インターネットの回線利用料やパソコンの購入費用も、暗号資産の売却のために直接必要な部分に限って必要経費にできます。ただし回線利用料は暗号資産取引の分を明確に区分できる場合に限られ、パソコンなど使用可能期間が1年以上で一定金額を超えるものは減価償却になります。
交換や決済で出た利益も合計に入る
円に換えていない取引も、所得の計算に入ります。国税庁のFAQは、暗号資産で商品を買ったときや、暗号資産どうしを交換したときに、手放した暗号資産を譲渡したことになるとしています。
FAQの設例では、4,000,000円で4BTCを買った人が、そのうち1BTCを払って40XRPを受け取り、そのときのレートが1XRP=30,000円だった場合、200,000円の所得が出ています。この1回の交換だけで、20万円に届く計算です。
「円に戻したのは少しだけだから20万円以下」という判断は、交換の分が抜けていることがあります。年間の取引をすべて並べてから判定してください。
副業など、ほかの所得と合わせて判定する
20万円は、暗号資産の所得だけの枠ではありません。No.1900の基準は「各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額」です。副業の雑所得、不動産所得などがあれば、暗号資産の所得と合計して20万円を超えるかを見ます。
暗号資産の所得が15万円、副業の所得が10万円なら、合計25万円で申告が必要です。どちらか一方だけを見て「20万円以下」と判断しないように注意してください。
なお、ここで書いたのは所得税の確定申告の要否です。住民税は所得税とは別の仕組みで扱われます。副業と20万円で、住民税を含めて整理しています。
20万円とは別に申告が必要になる人
暗号資産の所得が20万円以下でも、ほかの理由で申告が必要な方がいます。No.1900は、給与の年間収入金額が2,000万円を超える人、給与を2か所以上から受けている一定の人、同族会社の役員で会社から貸付金の利子や資産の賃貸料を受け取っている人などを挙げています。
給与を2か所以上から受けている場合は、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与・退職以外の所得金額との合計額が20万円を超えるかで判定します。給与の収入金額の合計額から一定の所得控除を引いた金額が150万円以下で、ほかの所得の合計額が20万円以下なら、申告は不要です。
申告が必要な場合の一覧は給与所得者で確定申告が必要な人にまとめています。
損をした年は、給与から引けない
反対に、暗号資産で損をした年はどうか。雑所得の計算上生じた損失は、給与所得などほかの所得から差し引くことができません。国税庁のFAQは、所得税法上ほかの所得と通算できる損失は不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得に限られ、雑所得はこれに当たらないためと説明しています。
源泉徴収された給与の税金が、暗号資産の損で戻ってくることはありません。同じ雑所得の中でほかに利益があれば、その範囲で差し引きされます。利益の出た年と損の出た年で扱いが対称ではないことを、前提にしておく必要があります。
よくある質問
会社員は暗号資産の利益が20万円以下なら確定申告は不要ですか
先に答えを書くと、 給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象になる方は、給与所得と退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下なら、所得税の確定申告をしなければならない人には当たりません。 暗号資産の利益はこの「ほかの所得」に入ります。→ 本文で読む
20万円は暗号資産の売却額で判定しますか
20万円と比べるのは、売った金額(収入金額)ではなく 所得金額 です。所得金額は、総収入金額から必要経費を引いて出します。暗号資産の必要経費の中心は、売った暗号資産の譲渡原価と、売却の際に払った手数料です。→ 本文で読む
円に換えていない交換の利益も20万円に含めますか
円に換えていない取引も、所得の計算に入ります。 国税庁のFAQは、暗号資産で商品を買ったときや、暗号資産どうしを交換したときに、手放した暗号資産を譲渡したことになるとしています。 FAQの設例では、4,000,000円で4BTCを買った人が、そのうち1BTCを払って40XRPを受け取り、そのときのレートが1XRP=30,000円だった場合、200,000円の所得が出ています。この1回の交換だけで、20万円に届く計算です。→ 本文で読む
副業の所得と暗号資産の所得は合計して判定しますか
20万円は、暗号資産の所得だけの枠ではありません。 No.1900の基準は「各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額」です。 副業の雑所得、不動産所得などがあれば、暗号資産の所得と合計して20万円を超えるかを見ます。→ 本文で読む
暗号資産の損失を給与から差し引けますか
反対に、暗号資産で損をした年はどうか。 雑所得の計算上生じた損失は、給与所得などほかの所得から差し引くことができません。 国税庁のFAQは、所得税法上ほかの所得と通算できる損失は不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得に限られ、雑所得はこれに当たらないためと説明しています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm - 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」平成30年11月(令和7年12月最終改訂)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
20万円を超えるかどうかは、取引履歴を集計しないと分かりません。
暗号資産の所得は、売却額を見ているだけでは分かりません。交換や決済も含めて譲渡原価を計算して、はじめて20万円を超えるかどうかが判定できます。年間取引報告書と取引履歴をお持ちいただければ、申告が必要かどうかの判定からお手伝いします。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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