譲渡
不動産を買うための借入金の利子は取得費になります。
ただし「使用開始の日」までの期間に対応する部分だけです
ローンで買った土地や建物を売るとき、「払ってきた利息は経費にならないのか」というご質問をいただきます。
答えを先に書くと、借入金の利子のうち、借りた日からその不動産を使い始める日までの期間の分は、取得費に含めることができます。取得費が増えれば、譲渡所得はその分小さくなります。
使い始めた後の利子は取得費になりません。使わずに売れば全額が取得費、賃貸などの業務用なら必要経費との選択になります。国税庁のタックスアンサーNo.3264とNo.3252で、線引きと「使用開始の日」の判定を確認していきます。
この記事の要点
土地や建物を買うための借入金の利子のうち、借り入れた日からその不動産の使用開始の日までの期間に対応する部分は、原則として取得費に含めます。まったく使わずに売ったときは、借りた日から売った日までの利子の全額が取得費です。業務用の資産の利子は必要経費ですが、使用開始前の分は取得費に含めることもできます。使用開始の日は資産の種類と使用の状況で判定します。国税庁タックスアンサーNo.3264・No.3252をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
借入金の利子は、使用開始の日までの分が取得費
答えを先に書くと、土地や建物を買うために借りたお金の利子は、借りた日からその不動産を使い始める日までの期間の分が、原則として取得費になります。国税庁のタックスアンサーNo.3264は、土地、建物などの固定資産の取得のための借入金の利子等のうち、借り入れた日からその固定資産の使用開始の日までの期間に対応する部分の金額については、原則としてその固定資産の取得費に含める、としています。
国税庁 タックスアンサー No.3264「借入金の利子が取得費になるとき」
土地、建物などの固定資産の取得のための借入金の利子等のうち、借り入れた日からその固定資産の使用開始の日までの期間に対応する部分の金額については、原則としてその固定資産の取得費に含めます。
取得費が増えれば、将来その不動産を売ったときの譲渡所得が減ります。使い始めた後の利子は取得費になりません。マイホームなら住み始めるまで、賃貸物件なら貸し始めるまでの利子、という区切りです。取得費の全体像は取得費が分からないときや、相続した不動産の相続税の取得費加算とあわせてご覧ください。
使わずに売ったら、借りた日から売った日までの利子全額
買った土地や建物をまったく使わないまま売った場合は、利子の全額が取得費です。No.3264は、借入金で購入した土地や建物を全く使用することなく売ったときは、借り入れた日から売った日までの利子の全額が取得費に含まれる、としています。
国税庁 タックスアンサー No.3264「借入金の利子が取得費になるとき」
したがって、借入金で購入した土地や建物を全く使用することなく売ったときは、借り入れた日から売った日までの利子の全額が取得費に含まれます。
使用開始の日が来ないまま売却するので、借入期間のすべてが「使用開始の日まで」に当たるという理屈です。土地を買ったものの建てずに手放した、といった場合は、支払った利子をすべて取得費に加えて譲渡所得を計算できます。金融機関の返済予定表や利息の計算書が、その根拠になります。
事業用の資産なら必要経費。使用開始前の分は取得費にもできる
不動産賃貸や事業を営んでいる方が、その業務に使う資産を借入金で買った場合は、利子は必要経費です。No.3264は、業務を営んでいる方がその業務の用に使用する資産の取得のための借入金の利子は、その業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費になる、としています。ただし、その資産の使用開始の日までの期間に対応する部分の金額については、その資産の取得費に含めることができる、ともしています。
つまり、業務用の資産については、使用開始前の利子は「必要経費にする」か「取得費に含める」かを選べるということです。使用開始後の利子は必要経費です。不動産所得の必要経費のうち土地の借入金の利子には別の注意点があり、不動産所得が赤字のときで整理しています。
これから業務を始める方については、No.3264の注記が、業務の開始前に業務の用に使用する資産を借入金で取得し、その借入金の利子のうち業務の開始前の期間に対応するものは、その資産の取得費に含める、としています。開業前の期間の利子は、選択ではなく取得費です。
「使用開始の日」の判定。土地・建物ごとの表
取得費に含める利子の範囲を決めるのが「使用開始の日」です。No.3264は、資産の種類と使用の状況に応じて次のように区分して判定する、としています。
| 資産の種類 | 使用の状況 | 使用開始の日 |
|---|---|---|
| 土地等 | 新たに建物、構築物等の敷地の用に使用する土地 | その建物、構築物等を居住の用、事業の用等に使用した日 |
| 土地等 | 既に建物、構築物等の存する土地 | その建物、構築物等を居住の用、事業の用等に使用した日。ただし、その建物等が土地の取得の日前から、その者の居住の用、事業の用等に使用されており、引き続き使用される場合は、その土地の取得の日 |
| 土地等 | 建物、構築物等の施設を要しない土地 | そのものの本来の目的のための使用を開始した日。ただし、取得の日前からその者において使用されている場合は、その土地の取得の日 |
| 建物、構築物ならびに機械および装置 | そのものの本来の目的のための使用を開始した日。ただし、取得の日前からその者において使用されている場合は、その資産の取得の日 |
土地の使用開始の日は、その上の建物の使い方で決まります。新しく建物を建てる土地は、建物を居住や事業に使った日が使用開始の日で、それまでの利子は取得費です。既に建物がある土地を買って、その建物を買う前から自分で使っていて引き続き使う場合は、土地の取得の日が使用開始の日になり、取得費に含める利子は生じません。建物、構築物等の施設を要しない土地は、そのものの本来の目的のための使用を開始した日です。
利子のほかに取得費になるもの
借入金の利子は、取得費に含まれるもののうちの1つです。No.3252は、取得費には売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料のほか設備費や改良費なども含まれる、としたうえで、その他の取得費として次のものを挙げています。
| 取得費に含まれる主なもの(No.3252) | |
|---|---|
| (1) | 購入時に納めた登録免許税(登記費用を含む)、不動産取得税、特別土地保有税(取得分)、印紙税(業務用の資産は含まれない) |
| (2) | 借主がいる土地や建物を購入するときに、借主を立ち退かせるために支払った立退料 |
| (3) | 土地の埋立てや土盛り、地ならしをするために支払った造成費用 |
| (4) | 土地の取得に際して支払った土地の測量費 |
| (5) | 所有権などを確保するために要した訴訟費用(遺産分割のための訴訟費用等は含まれない) |
| (6) | 建物付の土地を購入して、その後おおむね1年以内に建物を取り壊すなど、当初から土地の利用が目的であったと認められる場合の建物の購入代金や取壊しの費用 |
| (7) | 土地や建物を購入するために借り入れた資金の利子のうち、その土地や建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子 |
| (8) | 既に締結されている土地などの購入契約を解除して、他の物件を取得することとした場合に支出する違約金 |
(7)が今回の借入金の利子です。事業所得などの必要経費に算入されたものは取得費に含まれません。また、業務の用に供される資産の場合、(1)の登録免許税や不動産取得税などの税金は取得費に含まれません。建物は、購入代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額が取得費です。借主を立ち退かせるための立退料(2)は立退料の記事で整理しています。
借入金の返済予定表と契約書を残す
取得費に含める利子を計算するには、借入日、使用開始日、その間に支払った利子の額が分かる資料が必要です。金銭消費貸借契約書、返済予定表、金融機関の利息の計算書、住み始めた日や貸し始めた日が分かる書類(住民票、賃貸借契約書など)を、売るときまで保管してください。
不動産を売るのは、買ってから何年も後になることが多いです。買った年の資料は、売った年の税金を決める資料でもあります。ローンの契約書類は、完済後もまとめて残しておくことをおすすめします。
よくある質問
不動産を買うための借入金の利子は取得費になりますか
答えを先に書くと、土地や建物を買うために借りたお金の利子は、借りた日からその不動産を使い始める日までの期間の分が、原則として取得費になります。国税庁のタックスアンサーNo.3264は、土地、建物などの固定資産の取得のための借入金の利子等のうち、借り入れた日からその固定資産の使用開始の日までの期間に対応する部分の金額については、原則としてその固定資産の取得費に含める、としています。→ 本文で読む
買った土地を使わずに売ったとき利子は取得費になりますか
買った土地や建物をまったく使わないまま売った場合は、利子の全額が取得費です。No.3264は、借入金で購入した土地や建物を全く使用することなく売ったときは、借り入れた日から売った日までの利子の全額が取得費に含まれる、としています。→ 本文で読む
賃貸物件のローンの利子は必要経費と取得費のどちらですか
不動産賃貸や事業を営んでいる方が、その業務に使う資産を借入金で買った場合は、利子は必要経費です。No.3264は、業務を営んでいる方がその業務の用に使用する資産の取得のための借入金の利子は、その業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費になる、としています。ただし、その資産の使用開始の日までの期間に対応する部分の金額については、その資産の取得費に含めることができる、ともしています。→ 本文で読む
使用開始の日とはいつのことですか
取得費に含める利子の範囲を決めるのが「使用開始の日」です。No.3264は、資産の種類と使用の状況に応じて次のように区分して判定する、としています。 土地の使用開始の日は、その上の建物の使い方で決まります。 新しく建物を建てる土地は、建物を居住や事業に使った日 が使用開始の日で、それまでの利子は取得費です。既に建物がある土地を買って、その建物を買う前から自分で使っていて引き続き使う場合は、土地の取得の日が使用開始の日になり、取得費に含める利子は生じません。 建物、構築物等の施設を要しない土地は、そのものの本来の目的のための使用を開始した日です。→ 本文で読む
借入金の利子のほかに取得費になるものは何ですか
借入金の利子は、取得費に含まれるもののうちの1つです。No.3252は、取得費には売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料のほか設備費や改良費なども含まれる、としたうえで、その他の取得費として次のものを挙げています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.3264 借入金の利子が取得費になるとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3264.htm - 国税庁「No.3252 取得費となるもの」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3252.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
ローンで不動産を買ったら、借入日と使い始めた日をメモしておいてください。
借入金の利子は、使用開始の日までの期間の分が取得費になり、将来売ったときの譲渡所得を減らします。使わずに売れば全額、業務用なら必要経費との選択です。契約書と返済予定表をお持ちいただければ、取得費に含められる利子を計算します。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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