ふじみの会計事務所公認会計士・税理士|埼玉県ふじみ野市 LINEで相談

譲渡

相続や贈与で取得した土地・建物を売るとき。
取得費と取得の時期は、亡くなった親や贈与者から引き継ぎます

親から相続した実家を売ることになった方から、「買った値段が分からない」「相続してすぐ売ると税金が高いのか」というご質問をいただきます。

答えを先に書くと、相続や贈与で取得した土地建物の取得費は、亡くなった親(被相続人)や贈与者が買ったときの購入代金や購入手数料を基に計算し、取得の時期も親や贈与者の取得日をそのまま引き継ぎます。相続した直後に売っても、親が長く持っていた土地なら長期譲渡所得です。

相続のときに払った登記費用や不動産取得税を取得費に足せること、買った値段が分からないときの扱いも決まっています。国税庁のタックスアンサーNo.3270に沿って確かめます。

公開 最終更新

この記事の要点

相続や贈与で取得した土地建物を売ったときの取得費は、被相続人や贈与者がその土地建物を買ったときの購入代金や購入手数料を基に計算します。相続や贈与のときに払った登記費用や不動産取得税も、業務に使っていない土地建物なら取得費に含められます。取得の時期も被相続人や贈与者の取得日を引き継ぎ、譲渡した年の1月1日までの所有期間で長期か短期かを判定します。国税庁タックスアンサーNo.3270をもとに整理しました。

先に見ておくと分かりやすいもの

取得費は被相続人・贈与者の購入代金を基に計算する

相続や贈与で取得した土地建物を売ったときの取得費は、被相続人や贈与者がその土地建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算します。相続税の評価額や、相続したときの時価ではありません。国税庁のタックスアンサーNo.3270は次のように書いています。

国税庁 タックスアンサー No.3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」

相続や贈与によって取得した土地建物を売った場合の取得費は、被相続人や贈与者がその土地建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算します。

相続で取得した人は、自分ではお金を払っていません。それでも取得費がゼロになるのではなく、亡くなった親が払った金額を、自分が払ったものとして引き継ぐという考え方です。「相続税を払ったのだから、その評価額が取得費になるのでは」と考える方が多いのですが、そうではありません。建物については、親の取得日からの減価償却費相当額を差し引いて取得費を計算します。

相続・贈与のときの登記費用や不動産取得税も取得費になる

業務に使われていない土地建物を相続や贈与で取得した際に、相続人や受贈者が支払った登記費用や不動産取得税の金額も取得費に含まれます。親の購入代金に、自分が相続のときに払った費用を足せるということです。

費用取得費に含まれるか
被相続人・贈与者が買ったときの購入代金・購入手数料含まれる
相続人・受贈者が相続・贈与のときに支払った登記費用含まれる(業務に使われていない土地建物の場合)
相続人・受贈者が支払った不動産取得税含まれる(業務に使われていない土地建物の場合)

相続登記の登録免許税や司法書士への報酬、贈与を受けたときの不動産取得税の領収書は、売却の申告まで捨てずに保管してください。「業務に使われていない」という条件が付いているのは、貸家など業務用の不動産では、これらの費用がすでに不動産所得の必要経費になっているためです。

取得費が分からないときは売った金額の5パーセント

親が買ったときの契約書が見つからないなど取得費が分からない場合は、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます。国税庁のNo.3258は、先祖伝来の土地や買い入れた時期が古い場合を例に挙げ、土地建物を3,000万円で売った場合の5パーセント相当額である150万円を取得費とできる、としています。

ただし、この5パーセントを使う場合には、相続人などが支払った登記費用などを取得費に含めることはできません。概算の取得費を使うか、実際の取得費に登記費用を足すか、どちらか一方です。

国税庁 タックスアンサー No.3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」

取得費が分からない場合などには、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます(詳しくは、コード3258「取得費が分からないとき」を参照してください。)。 ただし、この場合には、相続人などが支払った登記費用などを取得費に含めることはできません。

売った金額の5パーセントが取得費ということは、売った金額の大部分が譲渡所得として課税されるということです。実際の取得費が5パーセントを下回る場合にも5パーセントを使えますが、親が買った金額のほうが大きいことが多いので、契約書や当時の通帳、住宅ローンの記録などを探す価値があります。詳しくは取得費が分からない不動産を売ったらをご覧ください。

取得の時期も引き継ぐ

相続や贈与で取得したときは、被相続人や贈与者の取得の時期が、そのまま相続人や受贈者に引き継がれます。相続した日や贈与を受けた日が取得日になるのではありません。

国税庁 タックスアンサー No.3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」

相続や贈与によって取得したときは、被相続人や贈与者の取得の時期がそのまま取得した相続人や受贈者に引き継がれます。

取得費と同じ発想です。親が買った日を、自分が買った日として扱うということです。親が何十年も前に買った土地なら、相続した翌年に売っても、所有期間は何十年になります。

長期か短期かは、被相続人の取得日から譲渡した年の1月1日までで判定

土地建物を売ったときの譲渡所得は、被相続人や贈与者が取得した時から、相続人や受贈者が譲渡した年の1月1日までの所有期間で、長期譲渡所得か短期譲渡所得かを判定します。国税庁のNo.3202では、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものが長期譲渡所得、5年以下のものが短期譲渡所得とされています。

判定の要素相続・贈与で取得した土地建物の場合
所有期間の起点被相続人・贈与者が取得した日
所有期間の終点相続人・受贈者が譲渡した年の1月1日
長期譲渡所得譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの
短期譲渡所得譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のもの

相続した直後に売ると税率の高い短期譲渡所得になるのではないか、と心配される方が多いのですが、親が5年を超えて持っていた土地建物であれば、相続してすぐ売っても長期譲渡所得です。逆に、親が買ってから間もない不動産を相続した場合は、親の取得日から数えて判定します。相続税を納めた方が申告期限から3年以内に売る場合は、相続税の取得費加算の特例もあわせて確認してください。

用意する資料

相続や贈与で取得した土地建物を売った年の確定申告では、親や贈与者が買ったときの売買契約書・領収書、相続や贈与のときの登記費用や不動産取得税の領収書、売却時の売買契約書と仲介手数料などの領収書を用意します。取得費・取得時期を引き継ぐ制度ですから、自分が持っていない古い書類を集めるところが最初の仕事です。

何のために資料
取得費(親・贈与者の購入代金)親や贈与者が買ったときの売買契約書、領収書、購入手数料の領収書、当時の通帳や住宅ローンの記録
取得費(相続・贈与時の費用)相続登記・贈与登記の登録免許税や司法書士報酬の領収書、不動産取得税の納税通知書・領収書
取得の時期登記事項証明書(親や贈与者の所有権移転の日付)
譲渡価額・譲渡費用売却時の売買契約書、仲介手数料や測量費などの領収書

親の契約書は、実家の金庫や仏壇の引き出し、貸金庫に残っていることがよくあります。遺品整理で処分してしまう前に、不動産関係の書類だけは取り分けておいてください。相続した実家に自分が住んでから売る場合は、マイホームを売ったときの特別控除が使えることもあります。

よくある質問

相続した土地を売るとき取得費はいくらになりますか

相続や贈与で取得した土地建物を売ったときの取得費は、 被相続人や贈与者がその土地建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算 します。相続税の評価額や、相続したときの時価ではありません。国税庁のタックスアンサーNo.3270は次のように書いています。→ 本文で読む

相続登記の費用や不動産取得税は取得費に入りますか

業務に使われていない土地建物を相続や贈与で取得した際に、 相続人や受贈者が支払った登記費用や不動産取得税の金額も取得費に含まれます 。親の購入代金に、自分が相続のときに払った費用を足せるということです。→ 本文で読む

親が買った値段が分からない土地を売ったらどうなりますか

親が買ったときの契約書が見つからないなど 取得費が分からない場合は、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます 。国税庁のNo.3258は、先祖伝来の土地や買い入れた時期が古い場合を例に挙げ、土地建物を3,000万円で売った場合の5パーセント相当額である150万円を取得費とできる、としています。→ 本文で読む

相続した不動産の取得日はいつになりますか

相続や贈与で取得したときは、 被相続人や贈与者の取得の時期が、そのまま相続人や受贈者に引き継がれます 。相続した日や贈与を受けた日が取得日になるのではありません。 取得費と同じ発想です。 親が買った日を、自分が買った日として扱う ということです。親が何十年も前に買った土地なら、相続した翌年に売っても、所有期間は何十年になります。→ 本文で読む

相続してすぐ売ると短期譲渡所得になりますか

土地建物を売ったときの譲渡所得は、 被相続人や贈与者が取得した時から、相続人や受贈者が譲渡した年の1月1日までの所有期間 で、長期譲渡所得か短期譲渡所得かを判定します。国税庁のNo.3202では、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものが長期譲渡所得、5年以下のものが短期譲渡所得とされています。→ 本文で読む

相続した不動産を売った年の申告に必要な書類は何ですか

相続や贈与で取得した土地建物を売った年の確定申告では、 親や贈与者が買ったときの売買契約書・領収書、相続や贈与のときの登記費用や不動産取得税の領収書、売却時の売買契約書と仲介手数料などの領収書 を用意します。取得費・取得時期を引き継ぐ制度ですから、自分が持っていない古い書類を集めるところが最初の仕事です。→ 本文で読む

出典

  1. 国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm
  2. 国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm
  3. 国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

相続した不動産を売る前に、親が買ったときの契約書や領収書を探してください。

取得費が分かるかどうかで税額は大きく変わります。契約書が見つからない場合も、通帳の記録や登記簿の日付などから当時の取得費を確かめる方法があります。相続登記の費用や不動産取得税の領収書も取得費に足せます。売却前の段階でのご相談を承ります。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。