譲渡
親が老人ホームに入っていた実家を売るとき。
要介護認定を受けて入所し、家を貸さずに残していれば空き家の特例の対象になります
親御さんが晩年を老人ホームで過ごし、実家が空き家のまま残った。その家を相続して売るとき、空き家の特例は使えるのかというご相談が増えています。
答えを先に書くと、亡くなった方が要介護認定などを受けて老人ホーム等に入所していて、入所後もその家を貸さず、他人を住まわせず、物品の保管などに使っていたなら、居住しなくなる直前まで住んでいた家として特例の対象になります。
ただし、施設の種類、入所の経緯、家の建築時期に細かな要件があります。国税庁のタックスアンサーNo.3307で、(1)から(3)の要件を順に確認していきます。
この記事の要点
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例は、亡くなった方が相続開始の直前に老人ホーム等に入所していて家に住んでいなかった場合でも、要件を満たせば使えます。要介護認定などを受けて特定の施設に入所していたこと、入所後も家を物品の保管などに使い、貸したり他人を住まわせたりしていないこと、家屋が昭和56年5月31日以前の建築で区分所有建物でないことが要件です。国税庁タックスアンサーNo.3307をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
老人ホームに入っていても「被相続人居住用家屋」になる
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例では、相続の開始の直前に被相続人が住んでいなかった家屋であっても、(1)から(3)の要件を満たすときは、居住しなくなる直前まで被相続人が住んでいた家屋を「被相続人居住用家屋」として特例の対象にします。国税庁のタックスアンサーNo.3307がこの扱いを示しています。
国税庁 タックスアンサー No.3307「被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋」
相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった家屋であっても、次の(1)から(3)の要件を満たすときは、その居住の用に供されなくなる直前まで被相続人の居住の用に供されていた家屋は、被相続人居住用家屋として特例の対象になります。
空き家の特例は、本来「相続の開始の直前に被相続人が住んでいた家」が対象です。老人ホームで亡くなった方は、亡くなる直前に自宅に住んでいなかったことになり、そのままでは対象から外れます。No.3307は、その例外として、住まなくなった理由と、その後の家の使い方に条件をつけて対象に含めています。特例そのものの全体像はマイホームを売ったときの特別控除で整理しています。
要件(1) 特定事由。要介護認定などを受けて老人ホーム等に入所していたこと
要件(1)は、「特定事由」により相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかったことです。特定事由とは、要介護認定もしくは要支援認定を受けていた被相続人などが老人ホーム等に入居・入所していたこと、または障害支援区分の認定を受けていた被相続人が障害者支援施設等に入所・入居していたことです。
No.3307は特定事由を2つに分けています。イは、介護保険法第19条第1項に規定する要介護認定もしくは同条第2項に規定する要支援認定を受けていた被相続人、または介護保険法施行規則第140条の62の4第2号に該当していた被相続人が、次の節で示す住居または施設に入居または入所をしていたことです。ロは、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第21条第1項に規定する障害支援区分の認定を受けていた被相続人が、同法第5条第11項に規定する障害者支援施設(施設入所支援が行われるものに限ります)または同条第17項に規定する共同生活援助を行う住居に入所または入居をしていたことです。
大切なのは、単に老人ホームに入っていただけでは足りず、要介護認定・要支援認定などを受けていたことが必要な点です。元気なうちに自立型の施設へ移った、という場合は、認定の有無を確かめる必要があります。
対象になる住居・施設の一覧
要介護認定などを受けていた被相続人が入っていた住居・施設として、No.3307は認知症グループホーム、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅を挙げています。それぞれ根拠となる法律の条項が示されています。
| 住居・施設 | 根拠 | |
|---|---|---|
| (イ) | 認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居(グループホーム) | 老人福祉法第5条の2第6項 |
| (イ) | 養護老人ホーム | 老人福祉法第20条の4 |
| (イ) | 特別養護老人ホーム | 老人福祉法第20条の5 |
| (イ) | 軽費老人ホーム | 老人福祉法第20条の6 |
| (イ) | 有料老人ホーム | 老人福祉法第29条第1項 |
| (ロ) | 介護老人保健施設 | 介護保険法第8条第28項 |
| (ロ) | 介護医療院 | 介護保険法第8条第29項 |
| (ハ) | サービス付き高齢者向け住宅((イ)の有料老人ホームを除く) | 高齢者の居住の安定確保に関する法律第5条第1項 |
特別養護老人ホームだけでなく、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅も含まれています。入所していた施設がどの法律に基づくものかは、入所契約書や施設の案内で確かめられます。施設の名称が「ホーム」でなくても、この表のどれかに当たれば対象です。入所中の費用の医療費控除は介護施設の費用と医療費控除で整理しています。
要件(2) 入所後の家の使い方。物品の保管に使い、貸さず、他人を住まわせない
要件(2)は、入所後の家の使い方に関する3つの条件です。特定事由で住まなくなった時から相続の開始の直前まで、引き続きその家屋が被相続人の物品の保管その他の用に供されていたこと、事業の用・貸付けの用・被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと、被相続人が主として居住していたと認められる家屋が老人ホーム等であることです。
| 要件(2)の内容 | |
|---|---|
| イ | 特定事由によりその家屋が被相続人の居住の用に供されなくなった時から相続の開始の直前まで、引き続きその家屋がその被相続人の物品の保管その他の用に供されていたこと |
| ロ | 特定事由によりその家屋が被相続人の居住の用に供されなくなった時から相続の開始の直前までその家屋が事業の用、貸付けの用または被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと |
| ハ | 被相続人が老人ホーム等に入所をした時から相続の開始の直前までの間において、被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる家屋がその老人ホーム等であること |
実務で引っかかりやすいのはロです。空き家がもったいないからと親戚に住まわせたり、貸したりしていると、この要件を満たしません。入所中に一度でも貸付けや他人の居住に使うと対象外になります。家具や荷物を置いたまま、誰にも使わせずに残しておいた家、というのがイとロの求める状態です。
ハは、入所後の生活の本拠が老人ホーム等であったことです。入所していても頻繫に自宅に戻って生活していたような場合は、どちらが主たる住まいかという問題になります。
要件(3) 家屋の要件。昭和56年5月31日以前の建築、区分所有でない、一人暮らし
要件(3)は家屋そのものの要件で、昭和56年5月31日以前に建築されたこと、区分所有建物登記がされている建物でないこと、特定事由により被相続人の居住の用に供されなくなる直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと、の3つすべてに当てはまることです。対象は、住まなくなる直前に主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物に限られます。
国税庁 タックスアンサー No.3307「被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋」
イ 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。 ロ 区分所有建物登記がされている建物でないこと。 ハ 特定事由により被相続人の居住の用に供されなくなる直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
昭和56年5月31日以前の建築、つまり旧耐震基準の家屋が対象です。建築年月日は登記事項証明書で確かめます。区分所有建物登記がされているマンションは対象外です。「被相続人以外に居住をしていた人がいなかった」は、通常の空き家の特例と同じで、親御さんが一人暮らしだったことが前提になります。ここでも判定の時点は「相続の開始の直前」ではなく「特定事由により居住しなくなる直前」で、入所する前に一人で住んでいたかどうかを見ます。
認定を受けていたかは、住まなくなる直前で判定する
被相続人が要介護認定・要支援認定または障害支援区分の認定を受けていたかどうかは、特定事由により被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなる直前において、被相続人がその認定を受けていたかにより判定します。入所した時点で認定があったかどうかを見ます。
No.3307の注記に明記されている判定時点です。入所後に認定を受けた場合や、亡くなる直前に初めて認定を受けた場合は、この要件を満たさない可能性があります。家を出て施設に入るその時点で、すでに認定を受けていたかがポイントです。
認定の時期は、市区町村の介護保険の認定通知書や介護保険被保険者証で確かめられます。相続後の売却を考えている方は、遺品を整理する前に、認定関係の書類、入所契約書、家の登記事項証明書を確保してください。相続した不動産の売却では、この特例のほかに相続した不動産を3年以内に売ると相続税の一部を取得費にで整理している制度もあわせて検討します。どちらを使うかは、売却額や相続税の額で変わります。
よくある質問
親が老人ホームで亡くなった場合も空き家の特例は使えますか
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例では、相続の開始の直前に被相続人が住んでいなかった家屋であっても、(1)から(3)の要件を満たすときは、居住しなくなる直前まで被相続人が住んでいた家屋を「被相続人居住用家屋」として特例の対象にします。国税庁のタックスアンサーNo.3307がこの扱いを示しています。→ 本文で読む
空き家の特例で老人ホームに入所していた場合に必要な認定は何ですか
要件(1)は、「特定事由」により相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかったことです。特定事由とは、要介護認定もしくは要支援認定を受けていた被相続人などが老人ホーム等に入居・入所していたこと、または障害支援区分の認定を受けていた被相続人が障害者支援施設等に入所・入居していたことです。→ 本文で読む
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に入っていた場合も対象ですか
要介護認定などを受けていた被相続人が入っていた住居・施設として、No.3307は認知症グループホーム、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅を挙げています。それぞれ根拠となる法律の条項が示されています。→ 本文で読む
親の入所中に実家を貸していた場合は空き家の特例を使えますか
要件(2)は、入所後の家の使い方に関する3つの条件です。特定事由で住まなくなった時から相続の開始の直前まで、引き続きその家屋が被相続人の物品の保管その他の用に供されていたこと、事業の用・貸付けの用・被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと、被相続人が主として居住していたと認められる家屋が老人ホーム等であることです。→ 本文で読む
空き家の特例の対象になる家屋の要件は何ですか
要件(3)は家屋そのものの要件で、昭和56年5月31日以前に建築されたこと、区分所有建物登記がされている建物でないこと、特定事由により被相続人の居住の用に供されなくなる直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと、の3つすべてに当てはまることです。対象は、住まなくなる直前に主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物に限られます。→ 本文で読む
要介護認定を受けていたかどうかはいつの時点で判定しますか
被相続人が要介護認定・要支援認定または障害支援区分の認定を受けていたかどうかは、特定事由により被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなる直前において、被相続人がその認定を受けていたかにより判定します。入所した時点で認定があったかどうかを見ます。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3307.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
売却の前に、介護保険の認定の記録と施設の入所契約書を探してください。
老人ホームに入所していた場合の空き家の特例は、要介護認定の有無、施設の種類、入所後の家の使い方を書類で示せるかどうかで決まります。認定通知書や入所契約書、家の登記事項証明書がそろえば、要件を満たすかを一つずつ確かめられます。相続後に売る予定がある方は、遺品を整理する前にご相談ください。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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