譲渡
土地や建物を売ったときの譲渡所得。
計算式と特別控除、所有5年で15%と30%に分かれる税率
土地や建物を売ると、「売った金額にそのまま税金がかかるのか」と心配される方が多くいらっしゃいます。
答えを先に書くと、税金がかかるのは、売った金額から買ったときの値段(取得費)と売るためにかかった費用(譲渡費用)を引き、さらに特別控除額を引いた残りです。そして譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超えるかどうかで、所得税の税率が15%と30%に分かれます。
給与とは合算しない分離課税ですから、給与の税率は関係ありません。国税庁のタックスアンサーNo.1440とNo.3202で、計算の骨組みを順に確認していきます。
この記事の要点
土地や建物を売ったときの譲渡所得は、収入金額から取得費と譲渡費用を引き、特別控除額を引いて計算します。給与と合算しない分離課税で、譲渡した年の1月1日現在で所有期間5年超なら長期譲渡所得で15%、5年以下なら短期譲渡所得で30%の所得税がかかります。特別控除にはマイホームの3,000万円など7種類があり、年間の限度は5,000万円です。国税庁タックスアンサーNo.1440・No.3202をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
譲渡所得とは。土地・建物は分離課税
答えを先に書くと、土地や建物を売って得た所得は譲渡所得で、給与など他の所得と合計せずに分離して税額を計算します。国税庁のタックスアンサーNo.1440は、譲渡所得とは一般的に土地、建物、株式等、ゴルフ会員権、金地金などの資産を譲渡することによって生ずる所得、としています。
ただし、事業用の商品などの棚卸資産や山林などの譲渡による所得は、譲渡所得にはなりません。どの資産が譲渡所得になるかは譲渡所得になる資産・ならない資産で整理しています。この記事では、土地や建物を売ったときの計算の骨組みを確認します。
計算式。収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額
土地や建物を譲渡したときの課税譲渡所得金額は、収入金額から取得費と譲渡費用を差し引き、さらに特別控除額を差し引いて計算します。売った金額に税金がかかるのではなく、買ったときの値段と売るためにかかった費用を引いた残りに税金がかかります。
国税庁 タックスアンサー No.1440「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額 = 課税譲渡所得金額
この式の項目を順に見ていきます。取得費が分かるかどうか、譲渡費用に何が入るか、という点で税額が大きく変わります。
収入金額。固定資産税の精算金も含まれる
収入金額は、通常、土地や建物の譲渡の対価として買主から受け取る金銭の額です。ここで見落としやすいのが固定資産税の精算金です。No.1440は、譲渡代金のほかに、譲渡から年末までの期間に対応する固定資産税および都市計画税(未経過固定資産税等)に相当する額の支払を受けた場合には、その額は譲渡価額に算入される、としています。
買主から受け取る精算金は、税金の立替えではなく売却代金の一部として扱います。また、金銭の代わりに物や権利などを受け取った場合はその時価が、資産を譲り渡すことによってその他経済的な利益を受けた場合はその経済的な利益も、収入金額に含まれます。
取得費と譲渡費用。建物は減価償却分を引く
取得費は、売った土地や建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などの資産の取得に要した金額に、その後支出した改良費、設備費などの額を加えた合計額です。No.3202は、建物の取得費は所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算する、としています。建物の計算は建物の取得費の計算で確認できます。
取得費が分からなかったり、実際の取得費が譲渡価額の5パーセントよりも少ないときは、譲渡価額の5パーセントを取得費(概算取得費)とすることができます。くわしくは取得費が分からない不動産を売ったらをご覧ください。
譲渡費用は、土地や建物を売るために直接かかった費用です。No.3202は、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、売却するときに借家人などに支払った立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などを挙げています。売るために直接かかった費用かどうかが線引きです。
特別控除額。マイホームの3,000万円など7種類
一定の要件を満たす場合、課税譲渡所得金額の計算で特別控除額を差し引けます。No.1440は、土地や建物を譲渡した場合の特別控除額を次のように示しています。
| 譲渡の内容 | 特別控除額 |
|---|---|
| (イ)収用等により土地建物を譲渡した場合 | 5,000万円 |
| (ロ)マイホーム(居住用財産)を譲渡した場合 | 3,000万円 |
| 被相続人の居住用財産(空き家)を譲渡した場合 | 3,000万円または2,000万円 |
| (ハ)特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合 | 2,000万円 |
| (ニ)特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合 | 1,500万円 |
| (ホ)平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合 | 1,000万円 |
| (ヘ)農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合 | 800万円 |
| (ト)低未利用土地等を譲渡した場合 | 100万円 |
最もよく使われるのはマイホームを譲渡した場合の3,000万円です。要件はマイホームを売ったときの3,000万円控除で整理しています。(ホ)と(ト)以外の特別控除額は、長期譲渡所得、短期譲渡所得のいずれからも一定の順序で控除できます。(ホ)と(ト)は長期譲渡所得に限り控除できます。特別控除額の最高限度額は、年間の譲渡所得全体を通じて5,000万円です。
長期と短期。譲渡した年の1月1日で5年を超えるか
土地や建物の譲渡所得は、所有期間で長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれます。長期譲渡所得は、譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える土地建物を、短期譲渡所得は、譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年以下の土地建物を譲渡したことによる所得です。
判定の基準日は売った日ではなく譲渡した年の1月1日です。買ってから丸5年たった直後に売っても、その年の1月1日時点では5年以下ということがあります。No.3202の注記では、所有期間は土地や建物の取得の日から引き続き所有していた期間をいい、相続や贈与により取得したものは、原則として、被相続人や贈与者の取得した日から計算する、とされています。
税率。長期は15%、短期は30%
税額は、課税長期譲渡所得金額×15%、課税短期譲渡所得金額×30%で計算します。No.1440は、土地や建物の譲渡による所得は他の所得、例えば給与所得などと合計せず、分離して計算する分離課税制度が採用されている、としています。
国税庁 タックスアンサー No.1440「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
課税長期譲渡所得金額×15%
平成25年から令和29年までの各年分については、復興特別所得税を所得税と併せて申告・納付します。復興特別所得税額は、基準所得税額に2.1パーセントの税率を掛けて計算します。同じ売却益でも、長期か短期かで所得税の税率が倍違いますから、売る時期の判断に直結します。所有期間の長いマイホームには軽減税率もあります。マイホームの軽減税率をご覧ください。
よくある質問
土地や建物の譲渡所得はどのように計算しますか
土地や建物を譲渡したときの課税譲渡所得金額は、収入金額から取得費と譲渡費用を差し引き、さらに特別控除額を差し引いて計算します。売った金額に税金がかかるのではなく、 買ったときの値段と売るためにかかった費用を引いた残り に税金がかかります。→ 本文で読む
固定資産税の精算金は譲渡所得の収入金額に含まれますか
収入金額は、通常、土地や建物の譲渡の対価として買主から受け取る金銭の額です。ここで見落としやすいのが固定資産税の精算金です。No.1440は、譲渡代金のほかに、譲渡から年末までの期間に対応する固定資産税および都市計画税(未経過固定資産税等)に相当する額の支払を受けた場合には、その額は譲渡価額に算入される、としています。→ 本文で読む
譲渡費用には何が含まれますか
取得費は、売った土地や建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などの資産の取得に要した金額に、その後支出した改良費、設備費などの額を加えた合計額です。No.3202は、建物の取得費は所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算する、としています。建物の計算は 建物の取得費の計算 で確認できます。→ 本文で読む
土地や建物の譲渡所得の特別控除にはどのようなものがありますか
一定の要件を満たす場合、課税譲渡所得金額の計算で特別控除額を差し引けます。No.1440は、土地や建物を譲渡した場合の特別控除額を次のように示しています。 最もよく使われるのはマイホームを譲渡した場合の3,000万円です。要件は マイホームを売ったときの3,000万円控除 で整理しています。(ホ)と(ト)以外の特別控除額は、長期譲渡所得、短期譲渡所得のいずれからも一定の順序で控除できます。(ホ)と(ト)は長期譲渡所得に限り控除できます。 特別控除額の最高限度額は、年間の譲渡所得全体を通じて5,000万円 です。→ 本文で読む
長期譲渡所得と短期譲渡所得はどこで分かれますか
土地や建物の譲渡所得は、所有期間で長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれます。長期譲渡所得は、譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える土地建物を、短期譲渡所得は、譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年以下の土地建物を譲渡したことによる所得です。→ 本文で読む
土地や建物の譲渡所得の税率は何%ですか
税額は、課税長期譲渡所得金額×15%、課税短期譲渡所得金額×30%で計算します。No.1440は、土地や建物の譲渡による所得は他の所得、例えば給与所得などと合計せず、分離して計算する分離課税制度が採用されている、としています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1440.htm - 国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
売買契約書と、買ったときの契約書・領収書を一緒にお持ちください。
譲渡所得は、取得費が分かるかどうか、譲渡費用に何を入れられるか、特別控除が使えるかで税額が大きく変わります。売る前に所有期間を判定し、税額の見込みを立てておくと、売る時期の判断にも使えます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
あわせて読む
同じテーマの記事
不動産・資産の売却
譲渡所得になる資産・ならない資産。生活用動産は非課税
譲渡所得の対象になる資産は、土地・建物・株式等・金地金・宝石・書画・ゴルフ会員権・著作権など幅…
不動産・資産の売却
ゴルフ会員権・金を売った税金。50万円控除と2分の1
ゴルフ会員権や金地金など、土地・建物・株式等以外の資産を売って出た利益は譲渡所得です。
不動産・資産の売却
土地の権利金は不動産所得。時価の2分の1超で譲渡所得
土地を建物の所有を目的として貸し、借地権の設定の対価として受け取った権利金は、原則として不動産…
不動産・資産の売却
借入金の利子は取得費になる。使い始める日までの分
土地や建物を買うための借入金の利子のうち、借り入れた日からその不動産の使用開始の日までの期間に…