消費税
税抜経理と税込経理、会社はどちらを選ぶか。
免税事業者は税込のみ、売上を税抜にすれば経費は税込でもよい
会計ソフトを立ち上げると、最初に「税抜経理か、税込経理か」を選ぶ画面が出てきます。どちらでもよいと聞くと、かえって迷います。
答えを先に書くと、法人はどちらを選んでもよいのですが、免税事業者は税込経理でしか法人税を計算できません。課税事業者になったら、売上を税抜にすれば経費や固定資産は税込のままでもよい、という組み合わせも認められています。
国税庁のタックスアンサーNo.6905は、法人の場合の選択と、税抜と税込の併用の条件を示しています。設立当初は免税事業者で、途中から課税事業者になる会社が多いので、切り替えのときに読み返せるように整理しておきます。
この記事の要点
消費税の経理処理には税抜経理方式と税込経理方式があり、法人はどちらを選んでもよいのですが、選んだ方式はすべての取引に適用するのが原則です。税抜経理を選ぶ場合、売上などの収益は必ず税抜にし、固定資産等の取得と経費等の支出のいずれかは税込にできます。個々の資産や経費ごとに方式を変えることはできません。免税事業者は税抜で記帳していても法人税は税込で計算します。国税庁タックスアンサーNo.6905をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
2つの方式。どちらを選んでもよいが、すべての取引に適用が原則
消費税の経理処理は税抜経理方式と税込経理方式の2つで、法人はどちらを選んでもかまいません。国税庁のタックスアンサーNo.6905は次のように示しています。
国税庁 タックスアンサー No.6905「税抜経理と税込経理の選択適用(法人の場合)」
消費税および地方消費税の経理処理として税抜経理方式と税込経理方式とがあり、どちらの方式を選択してもよいことになっていますが、選択した方式は、その法人が行うすべての取引に適用するのが原則です。
税抜経理方式は、売上や仕入の金額から消費税を分けて、消費税を「仮受消費税」「仮払消費税」として別に記帳する方法です。損益計算書の売上高や経費は税抜の金額になります。税込経理方式は、消費税を分けずに、支払った金額・受け取った金額そのままで記帳する方法です。納める消費税は、決算のときに「租税公課」などの費用として計上します。
選んだ方式は、すべての取引に適用するのが原則です。売上だけ税抜、経費だけ税込、というのは原則の外ですが、次に見るように一定の併用が認められています。
免税事業者は税込経理で法人税を計算する
設立したばかりの会社の多くは免税事業者です。免税事業者には選択の余地がありません。No.6905は、消費税の納税義務が免除されている事業者(免税事業者)は、その行う取引について税抜経理方式で経理している場合であっても、税込経理方式を適用して法人税の所得金額を計算することになる、としています。
免税事業者は消費税を納めませんから、受け取った消費税相当額はそのまま会社の収入です。それを「仮受消費税」として売上から外してしまうと、所得が実態より小さくなります。だから法人税の計算は税込で行う、というわけです。
会計ソフトで税抜の設定にしていても、免税事業者の期の法人税は税込で計算しなければなりません。免税事業者のあいだは、最初から税込経理で記帳しておくのが実務上いちばん簡単です。免税事業者でも税抜と税込を併用することはできない、ともNo.6905は明記しています。設立当初から課税事業者になる場合は資本金の額で決まる設立当初の消費税で扱っています。
税抜経理を選んだときの併用。売上は必ず税抜、経費と固定資産は選べる
課税事業者になって税抜経理を選ぶ場合、売上は必ず税抜ですが、経費や固定資産は税込にすることもできます。No.6905は次のように示しています。
国税庁 タックスアンサー No.6905「税抜経理と税込経理の選択適用(法人の場合)」
税抜経理方式を選択適用する場合は、売上げなどの収益に係る取引について必ず税抜経理方式で経理をしなければなりません。しかし、固定資産、棚卸資産および繰延資産(以下「固定資産等」といいます。)の取得に関する取引または販売費、一般管理費など(以下「経費等」といいます。)の支出に関する取引のいずれかの取引について税込経理方式を選択適用することができます。
| 取引の区分 | 税抜経理を選んだ場合 |
|---|---|
| 売上げなどの収益に係る取引 | 必ず税抜経理 |
| 固定資産等(固定資産・棚卸資産・繰延資産)の取得に関する取引 | 税抜または税込を選べる |
| 経費等(販売費、一般管理費など)の支出に関する取引 | 税抜または税込を選べる |
つまり、「売上は税抜、経費は税込」「売上と経費は税抜、固定資産は税込」といった組み合わせが認められます。逆に、No.6905の注2にあるとおり、売上げなどの収益に係る取引について税込経理方式を選択適用する場合は、固定資産等の取得と経費等の支出のすべてについて税込経理をすることが必要です。売上を税込にしたら、全部税込です。
棚卸資産だけ別の方式にできる。継続適用が条件
固定資産等のなかでも、棚卸資産(商品や材料の在庫)は別扱いができます。No.6905は、固定資産等のうち棚卸資産の取得に関する取引については、継続して適用することを条件として固定資産および繰延資産と異なる経理処理方式を適用することができる、としています。
たとえば、仕入れた商品(棚卸資産)は税抜で、パソコンや車などの固定資産は税込で、という組み合わせです。条件は「継続して適用すること」で、期によって行ったり来たりすることはできません。在庫の金額が大きい小売や卸の会社で、仕入は売上と同じ税抜で見たいが、固定資産は税込のほうが管理しやすい、という場合に使う選択肢です。
個々の資産や経費ごとに変えることはできない
併用が認められるのは、取引の「区分」ごとです。区分のなかで個別に変えることはできません。No.6905の注1は次のように示しています。
国税庁 タックスアンサー No.6905「税抜経理と税込経理の選択適用(法人の場合)」
税抜経理方式と税込経理方式とを併用する場合でも、個々の固定資産等または個々の経費等について異なる経理方式を適用することはできません。例えば、固定資産のうちある固定資産については税抜経理方式とし、そのほかの固定資産については税込経理方式とするというようなことは認められません。
固定資産を税込にすると決めたら、すべての固定資産が税込です。金額の大きい資産だけ税抜にして少額資産の判定を有利にする、といった使い分けはできません。経費等についても同じで、交際費だけ税抜、ほかの経費は税込、というのは認められません。交際費等の金額判定が経理方式で変わる点は交際費と寄附金の区分で触れています。
期末一括税抜経理方式。都度でなく期末にまとめて処理できる
税抜経理は、取引のたびに消費税を分けるのが原則ですが、期末にまとめて処理する方法も認められています。No.6905の注3は、税抜経理方式による経理処理は原則として取引(請求書の交付を含みます。)の都度行いますが、課税仕入れに係る消費税額の計算につき消費税法施行令第46条第2項の規定の適用を受ける場合(帳簿積上げ計算の規定の適用を受ける場合)を除き、税抜経理処理を事業年度終了の時において一括して行うことができる(期末一括税抜経理方式)、としています。
日々の記帳は税込の金額で行い、決算のときに一括して仮受消費税・仮払消費税を分ける、という進め方です。会計ソフトを使えば取引ごとの税抜処理は自動でできますから、実務でこの方式を意識する場面は減っていますが、選択肢として認められていることは知っておいてよいと思います。ただし、帳簿積上げ計算を選んでいる場合は、取引の都度の処理が前提になるため、期末一括は使えません。
小さな会社の選び方
免税事業者のあいだは税込経理です。これは選択ではなく、法人税の計算がそうなるからです。課税事業者になった期からが選択の場面です。
税抜経理の長所は、売上や経費の金額が消費税の影響を受けないことです。前期と今期の売上を比べるとき、消費税の分がずれません。また、資産や費用の金額を税抜で判定できます。短所は、仮受・仮払の勘定が増えて帳簿がやや複雑になることです。税込経理の長所は記帳が簡単なことで、短所は納める消費税が決算で一度に費用になり、期中の利益が実態より大きく見えることです。
売上が数千万円規模の会社であれば、課税事業者になった期から税抜経理に切り替え、売上・経費・固定資産をすべて税抜でそろえるのが、判定や比較のうえで見通しがよいと考えています。経費だけ税込にする併用は、記帳の手間が理由になることが多いのですが、会計ソフトが処理してくれる現在では、あえて選ぶ理由は少なくなっています。No.6905が根拠として挙げているのは、「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(平成元年3月1日付直法2-1)です。源泉徴収の場面での税抜・税込は税理士報酬の源泉徴収は税込か税抜かで扱っています。
よくある質問
税抜経理と税込経理はどちらを選んでもよいのですか
消費税の経理処理は税抜経理方式と税込経理方式の2つで、法人はどちらを選んでもかまいません。国税庁のタックスアンサーNo.6905は次のように示しています。 税抜経理方式 は、売上や仕入の金額から消費税を分けて、消費税を「仮受消費税」「仮払消費税」として別に記帳する方法です。損益計算書の売上高や経費は税抜の金額になります。 税込経理方式 は、消費税を分けずに、支払った金額・受け取った金額そのままで記帳する方法です。納める消費税は、決算のときに「租税公課」などの費用として計上します。→ 本文で読む
免税事業者は税抜経理を使えますか
設立したばかりの会社の多くは免税事業者です。免税事業者には選択の余地がありません。No.6905は、消費税の納税義務が免除されている事業者(免税事業者)は、その行う取引について税抜経理方式で経理している場合であっても、税込経理方式を適用して法人税の所得金額を計算することになる、としています。→ 本文で読む
売上は税抜、経費は税込という経理はできますか
課税事業者になって税抜経理を選ぶ場合、売上は必ず税抜ですが、経費や固定資産は税込にすることもできます。No.6905は次のように示しています。 つまり、 「売上は税抜、経費は税込」「売上と経費は税抜、固定資産は税込」といった組み合わせが認められます。 逆に、No.6905の注2にあるとおり、売上げなどの収益に係る取引について税込経理方式を選択適用する場合は、固定資産等の取得と経費等の支出のすべてについて税込経理をすることが必要です。 売上を税込にしたら、全部税込です。→ 本文で読む
在庫だけ固定資産と違う経理方式にできますか
固定資産等のなかでも、棚卸資産(商品や材料の在庫)は別扱いができます。No.6905は、固定資産等のうち棚卸資産の取得に関する取引については、継続して適用することを条件として固定資産および繰延資産と異なる経理処理方式を適用することができる、としています。→ 本文で読む
一部の固定資産だけ税抜にすることはできますか
併用が認められるのは、取引の「区分」ごとです。区分のなかで個別に変えることはできません。No.6905の注1は次のように示しています。 固定資産を税込にすると決めたら、すべての固定資産が税込です。 金額の大きい資産だけ税抜にして少額資産の判定を有利にする、といった使い分けはできません。 経費等についても同じで、交際費だけ税抜、ほかの経費は税込、というのは認められません。交際費等の金額判定が経理方式で変わる点は 交際費と寄附金の区分 で触れています。→ 本文で読む
税抜処理を期末にまとめて行うことはできますか
税抜経理は、取引のたびに消費税を分けるのが原則ですが、期末にまとめて処理する方法も認められています。No.6905の注3は、税抜経理方式による経理処理は原則として取引(請求書の交付を含みます。)の都度行いますが、課税仕入れに係る消費税額の計算につき消費税法施行令第46条第2項の規定の適用を受ける場合(帳簿積上げ計算の規定の適用を受ける場合)を除き、税抜経理処理を事業年度終了の時において一括して行うことができる(期末一括税抜経理方式)、としています。→ 本文で読む
小さな会社は税抜経理と税込経理のどちらがよいですか
免税事業者のあいだは税込経理です。これは選択ではなく、法人税の計算がそうなるからです。課税事業者になった期からが選択の場面です。 税抜経理の長所は、売上や経費の金額が消費税の影響を受けないことです。 前期と今期の売上を比べるとき、消費税の分がずれません。 また、資産や費用の金額を税抜で判定できます。短所は、仮受・仮払の勘定が増えて帳簿がやや複雑になることです。税込経理の長所は記帳が簡単なことで、短所は納める消費税が決算で一度に費用になり、期中の利益が実態より大きく見えることです。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.6905 税抜経理と税込経理の選択適用(法人の場合)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6905.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
課税事業者になる期の初めに、経理方式を決めてください。
免税事業者のあいだは税込経理ですが、課税事業者になった期から税抜経理に切り替える会社が多くあります。売上は税抜、経費は税込という併用も可能です。会計ソフトの設定と、交際費や少額資産の判定への影響をあわせて確かめます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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