消費税
控除対象外消費税額等の処理。
税抜経理で課税売上割合が95パーセント未満だと出てくる「引けなかった消費税」の落とし方
消費税の申告書を作ると、「仮払消費税の残りが消えない」ことがあります。払った消費税のうち、控除できなかった部分です。
答えを先に書くと、税抜経理で課税売上割合が95パーセント未満などのときに生じる「控除対象外消費税額等」は、経費に係るものなら全額その期の損金、資産に係るものは条件によって損金にするか、繰延消費税額等として60か月で落とします。
小さな会社でも、住宅の貸付けなど非課税の売上があると課税売上割合が下がり、この処理が必要になります。国税庁のタックスアンサーNo.6921で、いつ生じるか、どう処理するかを順に確認していきます。
この記事の要点
税抜経理方式で、課税売上高が5億円超または課税売上割合が95パーセント未満のときは、仕入れの消費税を全額控除できず、控除対象外消費税額等が生じます。経費に係るものは全額その期の損金(交際費等に係る分は交際費等に加算)、資産に係るものは課税売上割合80パーセント以上・棚卸資産・20万円未満なら損金、それ以外は繰延消費税額等として60で除して落とします。国税庁タックスアンサーNo.6921をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
- 関連本則課税のしくみ
- ご案内ひとり法人の税務顧問
控除対象外消費税額等とは。5億円超または95パーセント未満で生じる
控除対象外消費税額等とは、仕入税額控除ができない仮払消費税等の額です。国税庁のタックスアンサーNo.6921は、税抜経理方式を採用している場合において、その課税期間中の課税売上高が5億円超または課税売上割合が95パーセント未満であるときには、仕入控除税額は課税仕入れ等に対する消費税額等の全額ではなく、課税売上げに対応する部分の金額になる、としています。その差が、控除対象外消費税額等です。
国税庁 タックスアンサー No.6921「控除できなかった消費税額等(控除対象外消費税額等)の処理」
税抜経理方式を採用している場合において、その課税期間中の課税売上高が5億円超または課税売上割合(注2)が95パーセント未満であるときには、その課税期間の仕入控除税額は、課税仕入れ等に対する消費税額等の全額ではなく、課税売上げに対応する部分の金額となります(注1)。
言い換えると、課税売上高が5億円以下で、かつ課税売上割合が95パーセント以上なら、払った消費税は全額控除できて、この処理は出てきません。小さな会社でこの処理が必要になるのは、非課税の売上があって課税売上割合が95パーセントを切るときです。なお、控除対象外消費税額等には、居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限の適用を受ける取引に係るものも含まれます(注3)。預かった消費税から払った消費税を引く基本の仕組みは本則課税のしくみで説明しています。
課税売上割合の計算。免税売上は分子に入り、非課税売上は分母だけ
課税売上割合は、その課税期間の課税売上高(税抜き)を、その課税期間の総売上高(税抜き)で割って求めます。No.6921の注2の算式です。
国税庁 タックスアンサー No.6921「控除できなかった消費税額等(控除対象外消費税額等)の処理」(注2)
課税売上割合 = その課税期間の課税売上高(税抜き) ÷ その課税期間の総売上高(税抜き)
分子の課税売上高は、国内における課税資産の譲渡等の対価の額の合計額で、輸出による免税売上高が含まれます。分母の総売上高は、国内における資産の譲渡等の対価の合計額で、課税売上高と非課税売上高の合計額です。非課税売上は分母にだけ入るので、非課税売上が増えると割合が下がります。住宅の家賃はその代表例で、住宅の家賃は消費税非課税で整理しています。
税込経理なら特別な処理は要らない
この処理は、税抜経理方式を採用している場合の話です。No.6921の注1は、税込経理方式を採用している場合には、消費税額および地方消費税額は資産の取得価額または経費の額に含まれるので、特別な処理は要しない、としています。
税込経理では、消費税を含んだ金額がそのまま資産や経費になっているため、「控除できなかった消費税」を別に取り出す必要がありません。控除対象外消費税額等の処理は、税抜経理を選んだ会社だけの課題です。対象者の欄にも、税抜経理方式を採用している一定の要件に該当する事業者(免税事業者を除きます)と書かれています。
資産に係るもの。取得価額か、損金か、繰延消費税額等か
控除対象外消費税額等のうち、建物や機械などの資産に係るものは、次のいずれかの方法で損金にします。No.6921は3つの方法を示しています。
| 資産に係る控除対象外消費税額等の処理 | |
|---|---|
| (1) | その資産の取得価額に算入し、それ以後の事業年度において償却費などとして損金の額に算入する |
| (2) | 次のいずれかに該当する場合は、損金経理をした金額をその事業年度の損金の額に算入する イ その事業年度の課税売上割合が80パーセント以上 ロ 棚卸資産に係る控除対象外消費税額等 ハ 一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満 |
| (3) | 上記に該当しない場合は、「繰延消費税額等」として資産計上し、60で除して月数を乗じた金額の範囲内で損金の額に算入する |
(1)は、資産の値段に消費税分を乗せて、減価償却で少しずつ落とす方法です。(2)は、一度に損金にできる場合で、課税売上割合が80パーセント以上なら資産に係るものも全額その期の損金にできます。棚卸資産(商品・材料)に係るもの、一の資産につき20万円未満のものも同じです。割合が95パーセント未満でも80パーセント以上なら、資産の分も一括で落とせるということです。
(3)は、課税売上割合が80パーセント未満で、棚卸資産でもなく、一の資産につき20万円以上の場合です。ここだけが繰延消費税額等になります。
繰延消費税額等の落とし方。60で除して月数を乗じ、初年度は2分の1
繰延消費税額等は、法人税では、繰延消費税額等を60で除し、これにその事業年度の月数を乗じて計算した金額の範囲内で、その法人が損金経理をした金額を損金の額に算入します。60か月、つまり5年かけて落とす計算です。
国税庁 タックスアンサー No.6921「控除できなかった消費税額等(控除対象外消費税額等)の処理」(3)イ 法人税
なお、その資産を取得した事業年度においては、上記によって計算した金額の2分の1に相当する金額の範囲内で、その法人が損金経理をした金額を損金の額に算入します。
資産を取得した事業年度だけは、計算した金額の2分の1までです。初年度は半分、翌期から満額、という流れで、損金経理をした金額が損金になります。損金経理が条件なので、帳簿で費用に落とす処理をしておかないと損金になりません。なお、所得税(個人事業)でも同じく60で除して業務を行っていた期間の月数を乗じ、取得した年分は2分の1ですが、こちらは損金経理の条件がなく、計算した金額が必要経費になります。
資産以外に係るものは全額損金。ただし交際費等は加算
控除対象外消費税額等が資産に係るもの以外、つまり経費に係るものである場合は、法人税では全額をその事業年度の損金の額に算入します。家賃、外注費、消耗品などの経費に対応する分は、まとめてその期の損金です。
国税庁 タックスアンサー No.6921「控除できなかった消費税額等(控除対象外消費税額等)の処理」(1)法人税
ただし、交際費等に係る控除対象外消費税額等に相当する金額は、交際費等の額に加算して交際費等の損金不算入額を計算します。
例外は交際費等です。交際費等に係る控除対象外消費税額等は、交際費等の額に足してから、損金不算入額を計算します。交際費等には損金にできる額の枠があるため、控除できなかった消費税分もその枠の中で見る、ということです。交際費等の消費税の扱いは、No.6921ではコード6917を参照するよう案内されています。交際費等の範囲そのものは交際費と広告宣伝費の区分で整理しています。
小さな会社の実務。非課税売上があるなら割合を先に見る
ひとり会社や小さな会社では、課税売上高が5億円を超えることはまずありません。ですから、この処理が出てくるかどうかは課税売上割合が95パーセント未満になるかで決まります。決算のときに、非課税売上(住宅の貸付けなど)があるかを先に確かめ、割合を計算してください。
95パーセント以上なら、控除対象外消費税額等は生じません。95パーセント未満なら、経費に係る分は全額損金(交際費等は加算)、資産に係る分は80パーセント以上・棚卸資産・20万円未満のどれかに当たれば損金、当たらなければ繰延消費税額等として60で除して落とします。繰延消費税額等が出た年は、翌期以降も毎期の損金経理が続きますから、固定資産台帳と同じように残高を管理してください。税込経理を採用していれば、この処理はそもそも要りません。
よくある質問
控除対象外消費税額等とは何ですか
控除対象外消費税額等とは、仕入税額控除ができない仮払消費税等の額です。国税庁のタックスアンサーNo.6921は、税抜経理方式を採用している場合において、その課税期間中の課税売上高が5億円超または課税売上割合が95パーセント未満であるときには、仕入控除税額は課税仕入れ等に対する消費税額等の全額ではなく、課税売上げに対応する部分の金額になる、としています。 その差が、控除対象外消費税額等 です。→ 本文で読む
課税売上割合はどう計算しますか
課税売上割合は、その課税期間の課税売上高(税抜き)を、その課税期間の総売上高(税抜き)で割って求めます。No.6921の注2の算式です。 分子の課税売上高は、国内における課税資産の譲渡等の対価の額の合計額で、 輸出による免税売上高が含まれます 。分母の総売上高は、国内における資産の譲渡等の対価の合計額で、課税売上高と非課税売上高の合計額です。 非課税売上は分母にだけ入るので、非課税売上が増えると割合が下がります。 住宅の家賃はその代表例で、 住宅の家賃は消費税非課税 で整理しています。→ 本文で読む
資産に係る控除対象外消費税額等はどう処理しますか
控除対象外消費税額等のうち、建物や機械などの資産に係るものは、次のいずれかの方法で損金にします。No.6921は3つの方法を示しています。 (1)は、資産の値段に消費税分を乗せて、減価償却で少しずつ落とす方法です。(2)は、一度に損金にできる場合で、 課税売上割合が80パーセント以上なら資産に係るものも全額その期の損金 にできます。棚卸資産(商品・材料)に係るもの、一の資産につき20万円未満のものも同じです。 割合が95パーセント未満でも80パーセント以上なら、資産の分も一括で落とせる ということです。→ 本文で読む
繰延消費税額等は何年で損金にしますか
繰延消費税額等は、法人税では、繰延消費税額等を60で除し、これにその事業年度の月数を乗じて計算した金額の範囲内で、その法人が損金経理をした金額を損金の額に算入します。 60か月、つまり5年かけて落とす 計算です。→ 本文で読む
経費に係る控除対象外消費税額等はその期の損金になりますか
控除対象外消費税額等が資産に係るもの以外、つまり経費に係るものである場合は、法人税では全額をその事業年度の損金の額に算入します。家賃、外注費、消耗品などの経費に対応する分は、まとめてその期の損金です。→ 本文で読む
小さな会社で控除対象外消費税額等が出るのはどのようなときですか
ひとり会社や小さな会社では、課税売上高が5億円を超えることはまずありません。ですから、この処理が出てくるかどうかは 課税売上割合が95パーセント未満になるか で決まります。決算のときに、非課税売上(住宅の貸付けなど)があるかを先に確かめ、割合を計算してください。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.6921 控除できなかった消費税額等(控除対象外消費税額等)の処理」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6921.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
課税売上割合が95パーセントを切りそうなら、決算の前に教えてください。
控除対象外消費税額等は、資産に係るものと経費に係るもので処理が違い、資産に係るものはさらに3つに分かれます。特に繰延消費税額等は60か月にわたって損金にするため、翌期以降の管理が要ります。非課税売上の見込みが分かれば、処理の型を先に決められます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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