控除
雑損控除の計算。総所得金額等の10%と5万円の2つの式、
詐欺や恐喝の被害は対象外です
台風や地震で家が壊れた、空き巣に入られた。そんな年に「税金は安くならないのか」というご相談をいただきます。
答えを先に書くと、災害・盗難・横領による損害であれば、雑損控除という所得控除を受けられます。控除額は2つの式で計算し、多い方を使います。損失が大きければ翌年以後3年間繰り越せます。
ただし、対象になる資産と損害の原因には条件があります。とくに詐欺や恐喝の被害は対象外です。国税庁のタックスアンサーNo.1110で順に確認していきます。
この記事の要点
雑損控除は、災害・盗難・横領によって生活に通常必要な資産に損害を受けたときの所得控除です。控除額は「損害金額+災害等関連支出−保険金等−総所得金額等×10%」と「災害関連支出−保険金等−5万円」の多い方。事業用資産や30万円超の貴金属・書画は対象外で、詐欺や恐喝の被害も対象になりません。引ききれない損失は翌年以後3年間繰り越せます。国税庁タックスアンサーNo.1110をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
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雑損控除とは。災害・盗難・横領による損害が対象
まず答えを書くと、雑損控除は、災害または盗難もしくは横領によって、生活に通常必要な資産に損害を受けたときに受けられる所得控除です。国税庁のタックスアンサーNo.1110は、一定の要件にあてはまる資産について損害を受けた場合に、一定の金額の所得控除を受けることができる、としています。
国税庁 タックスアンサー No.1110「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」
災害または盗難もしくは横領によって、下記の「雑損控除の対象になる資産の要件」にあてはまる資産について損害を受けた場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを雑損控除といいます。
医療費控除や生命保険料控除と同じ「所得控除」の仲間で、所得から差し引いてから税金を計算します。ただし、何に対して、どんな原因で受けた損害かで、使えるかどうかが決まります。順に確認していきます。
控除額の計算。2つの式のうち多い方
雑損控除の金額は、次の(1)と(2)のうちいずれか多い方の金額です。No.1110は、損害金額と災害等関連支出から保険金等を引き、そこから総所得金額等の10%を差し引く式と、災害関連支出から保険金等を引いて5万円を差し引く式の2つを示しています。
| 算式 | |
|---|---|
| (1) | (損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10% |
| (2) | (災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円 |
用語を整理します。損害金額は、損害を受けた時の直前におけるその資産の時価を基にして計算した損害の額です。住宅や家財、車両については、国税庁が示す「合理的な計算方法」で計算することもできます。また、減価償却資産であれば、取得価額から非業務用資産として計算した減価償却費累積額相当額を控除した金額を基礎にすることもできます。
災害等関連支出の金額は、①災害により滅失した住宅、家財などを取壊しまたは除去するために支出した金額などと、②盗難や横領により損害を受けた資産の原状回復のための支出などです。(2)の式に使う災害関連支出の金額は、このうち①だけを指します。
保険金等の額は、災害などに関して受け取った保険金や損害賠償金などです。保険金等はまず損害金額から差し引き、保険金等が損害金額を超える場合には、災害(等)関連支出の金額から差し引きます。保険で全額まかなえた場合、控除は残りません。
対象になる資産。所有者と種類の2つの要件
対象になるのは、所有者と資産の種類の2つの要件をどちらも満たす資産です。No.1110は、資産の所有者が、納税者本人か、納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、その年の総所得金額等が58万円以下の方であることを求めています。
この58万円は、令和2年分から令和6年分までは48万円以下でした。さらに注記では、令和8年12月1日に施行され、令和8年分から適用される金額は「62万円以下」とされています。家族名義の資産の損害を本人の控除に入れるときは、その年分の金額で判定してください。
資産の種類については、棚卸資産もしくは事業用固定資産等または「生活に通常必要でない資産」のいずれにも該当しないことが条件です。事業用の資産の損失は雑損控除ではなく、事業所得の計算のほうで扱います。
「生活に通常必要でない資産」の例として、No.1110は、別荘など趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で保有する不動産(平成26年4月1日以後は同じ目的で保有する不動産以外の資産、ゴルフ会員権なども含まれます)や、貴金属や書画、骨董など1個または1組の価額が30万円超のものを挙げています。高価な貴金属や美術品を盗まれても、雑損控除の対象にはなりません。
損害の原因。詐欺・恐喝は対象外
雑損控除が使える損害の原因は限られています。No.1110は、次の5つの場合に限る、としています。
- 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
- 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
- 害虫などの生物による異常な災害
- 盗難
- 横領
国税庁 タックスアンサー No.1110「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」
なお、詐欺や恐喝の場合には、雑損控除は受けられません。
ここがよくご質問をいただく点です。振り込め詐欺や投資詐欺で失ったお金は、盗難でも横領でもないため、雑損控除の対象外です。どちらも被害には違いありませんが、国税庁は詐欺・恐喝を対象から外しています。
手続。領収書を添付し、引ききれない分は3年間繰り越せる
雑損控除を受けるには、確定申告書に雑損控除に関する事項を記載するとともに、災害等に関連したやむを得ない支出の金額の領収を証する書類を添付するか、提示します。取壊しや原状回復の費用の領収書は捨てずに残してください。
損失額が大きくてその年の所得金額から控除しきれない場合には、翌年以後3年間に繰り越して、各年の所得金額から控除できます。東日本大震災又は令和5年4月1日以後に発生する特定非常災害により生じた損失額については、5年間です。雑損控除は他の所得控除に先だって控除することとされていますので、大きな損害を受けた年は、まず雑損控除から引いていきます。
なお、給与所得のある方について、平成31年4月1日以後、給与所得の源泉徴収票の添付や提示は不要となりました。ただし申告書を作るときには源泉徴収票が必要ですので、手元に用意しておいてください。年末調整だけで済んでいる会社員の方が雑損控除を受けるには確定申告が必要です。期限は還付申告は翌年1月1日から5年間できますで確認できます。
災害減免法との選択。所得1,000万円以下なら比べる
雑損控除とは別に、災害減免法による所得税の軽減免除という制度があります。No.1110は、その年の所得金額の合計額が1,000万円以下の人が災害にあった場合は、納税者の選択によりどちらか有利な方法を選べる、としています。
雑損控除は所得から差し引く仕組みで、繰越しができます。災害減免法は所得税を軽減免除する仕組みです。どちらが有利かは、損害の額と所得の額の組み合わせで変わります。災害にあった年は、両方を計算して比べてから申告してください。所得控除の全体の位置づけは医療費控除の記事とあわせてご覧ください。
よくある質問
雑損控除はどのような損害が対象ですか
まず答えを書くと、雑損控除は、災害または盗難もしくは横領によって、生活に通常必要な資産に損害を受けたときに受けられる所得控除です。国税庁のタックスアンサーNo.1110は、一定の要件にあてはまる資産について損害を受けた場合に、一定の金額の所得控除を受けることができる、としています。→ 本文で読む
雑損控除の金額はどのように計算しますか
雑損控除の金額は、次の(1)と(2)のうちいずれか多い方の金額です。No.1110は、損害金額と災害等関連支出から保険金等を引き、そこから総所得金額等の10%を差し引く式と、災害関連支出から保険金等を引いて5万円を差し引く式の2つを示しています。→ 本文で読む
家族名義の資産や高価な貴金属の損害も雑損控除の対象になりますか
対象になるのは、所有者と資産の種類の2つの要件をどちらも満たす資産です。No.1110は、資産の所有者が、納税者本人か、納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、その年の総所得金額等が58万円以下の方であることを求めています。→ 本文で読む
詐欺で失ったお金は雑損控除の対象になりますか
雑損控除が使える損害の原因は限られています。No.1110は、次の5つの場合に限る、としています。 ここがよくご質問をいただく点です。 振り込め詐欺や投資詐欺で失ったお金は、盗難でも横領でもないため、雑損控除の対象外です。 どちらも被害には違いありませんが、国税庁は詐欺・恐喝を対象から外しています。→ 本文で読む
雑損控除で引ききれない損失は繰り越せますか
雑損控除を受けるには、確定申告書に雑損控除に関する事項を記載するとともに、災害等に関連したやむを得ない支出の金額の領収を証する書類を添付するか、提示します。取壊しや原状回復の費用の領収書は捨てずに残してください。→ 本文で読む
雑損控除と災害減免法はどちらを選べばよいですか
雑損控除とは別に、災害減免法による所得税の軽減免除という制度があります。No.1110は、その年の所得金額の合計額が1,000万円以下の人が災害にあった場合は、納税者の選択によりどちらか有利な方法を選べる、としています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1110.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
被害を受けた年は、損害の額と保険金の額を早めに整理してください。
雑損控除は、損害金額・取壊しや原状回復の費用・受け取った保険金の3つがそろえば計算できます。修理や撤去の領収書は必ず残してください。所得1,000万円以下の方は災害減免法との比較も必要です。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。