控除
外国税額控除。外国で払った所得税を日本の所得税から引く。
控除限度額の算式と3年間の繰越し
外国株式の配当を受け取ると、現地で税金が引かれたうえに、日本でも所得税がかかります。「二重に税金を払っているのではないか」というご質問をいただきます。
答えを先に書くと、外国で納めた所得税は、外国税額控除として日本の所得税額から差し引けます。ただし引ける額には控除限度額があり、その年の所得税額のうち、所得全体に占める国外所得の割合に応じた分までです。
限度額を超えた分や、逆に使い残した枠は、前年以前3年内で繰り越して使えます。国税庁のタックスアンサーNo.1240は長い解説ですが、個人の方に関わる部分に絞って順に確認していきます。
この記事の要点
外国税額控除は、日本の居住者が外国の法令により所得税に相当する税(外国所得税)を納める場合に、控除限度額を限度として、その外国所得税額をその年分の所得税額から差し引く制度です。控除限度額は「その年分の所得税額×調整国外所得金額÷所得総額」。限度額を超える分や余った枠は前年以前3年内で繰り越せます。NISA口座内の配当に課された外国所得税は対象外です。国税庁タックスアンサーNo.1240をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
外国税額控除とは。外国で払った所得税を日本の所得税から引く
答えを先に書くと、外国税額控除は、日本の居住者がその年に外国の法令により所得税に相当する税(外国所得税)を納めることになる場合に、控除限度額を限度として、その外国所得税額をその年分の所得税額から差し引く制度です。国税庁のタックスアンサーNo.1240はそのように説明しています。
国税庁 タックスアンサー No.1240「居住者に係る外国税額控除」
居住者が、その年において外国の法令により所得税に相当する租税(以下「外国所得税」といいます。)を納付することとなる場合には、次の算式で計算した控除限度額を限度として、その外国所得税額をその年分の所得税額から差し引くことができます。
外国で税金を払った所得に日本でも所得税がかかると、同じ所得について税を二重に負担することになります。その調整のための仕組みです。外国株式の配当から現地の税が引かれている方、海外の不動産や預金口座から収入がある方に関わります。
控除限度額の算式。所得税額×国外所得の割合
引ける金額には上限があります。所得税の控除限度額は、その年分の所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)です。所得全体のうち国外所得が占める割合の分だけ、所得税額から引けるという考え方です。
国税庁 タックスアンサー No.1240「居住者に係る外国税額控除」
(1)所得税の控除限度額=その年分の所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)
外国所得税額が所得税の控除限度額を超える場合には、復興特別所得税の控除限度額(その年分の復興特別所得税額×同じ割合)を限度として、超える金額をその年分の復興特別所得税額から差し引くことができます。復興特別所得税額は、基準所得税額に2.1パーセントの税率を乗じて計算した金額が基礎です。
算式の「所得税額」は、配当控除や住宅借入金等特別控除などの税額控除、災害減免額を適用した後の所得税額です(令和6年分特別税額控除は除きます)。「所得総額」と「調整国外所得金額」は、純損失や雑損失の繰越控除、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除などを適用する前の金額で計算します。国外所得金額が所得総額を超える場合は、所得総額に相当する金額が上限です。
対象になる外国所得税、ならないもの。NISA口座は対象外
外国所得税とは、外国の法令に基づき外国またはその地方公共団体により個人の所得を課税標準として課される税です。No.1240は、超過所得税や附加税、徴税上の便宜のため所得に代えて収入金額を課税標準とする税なども含む、としています。
一方、外国の税であっても外国所得税に含まれないものがあります。納付後に任意に還付を請求できる税、納付が猶予される期間を任意に定めることができる税、税率を合意で決められる税のうち一定の部分、附帯税に相当する税などです。
さらに、外国所得税であっても控除の対象にならない税額が列挙されています。個人の方に関わりが深いのは、非課税口座(NISA)内上場株式等の配当等や未成年者口座内上場株式等の配当等に対して課される外国所得税額と、租税条約で相手国が課税できる額を超える部分です。NISA口座で外国株式の配当を受けて現地で税が引かれても、その分は外国税額控除できません。NISAの仕組みはiDeCoとNISAで整理しています。非居住者であった期間内に生じた所得に対する外国所得税額も対象外です。
国外所得金額。配当・利子・不動産・給与など
控除限度額の計算に使う国外所得金額は、国外源泉所得に係る所得の金額の合計額です。合計額が0円を下回る場合には0円とします。No.1240は、国外事業所等帰属所得と、その他の国外源泉所得を列挙しています。
個人の方に多いものを挙げると、国外にある資産の運用や保有により生ずる所得、国外にある資産の譲渡による一定の所得、国外にある不動産の貸付けの対価、外国の国債や外国法人の発行する債券の利子、国外にある営業所に預け入れられた預貯金の利子、外国法人から受ける剰余金の配当、国外において行う勤務に基因する給与、外国の法令に基づく社会保険制度に類するものに基づいて支給される年金などです。
これらの所得だけについて所得税を課すものとした場合の総所得金額などの合計額が、国外所得金額になります。租税条約に異なる定めがある場合は、その定めによります。
控除額の計算。限度額に満たないか、超えるか
外国税額控除は、外国所得税を納付することとなる日の属する年分の所得税および復興特別所得税の額から控除します。継続して、実際に納付した日の属する年分で控除している場合には、その方法も認められます。
その年分の外国所得税額が所得税の控除限度額に満たない場合、外国税額控除額はその年分の外国所得税額の全額です。超える場合は、所得税の控除限度額に、「外国所得税額から所得税の控除限度額を差し引いた残額」と「復興特別所得税の控除限度額」のいずれか少ない方の金額を加えた合計額が控除額になります。
所得税と復興特別所得税から引ききれない外国所得税については、地方税の控除限度額(その年の所得税の控除限度額に30パーセントを乗じた金額)もあります。ここまで使ってもなお残る分が、次の繰越しの対象です。
引ききれない分・余った枠は3年間繰り越せる
外国税額控除には、前年以前3年内の各年から繰り越された外国所得税額または控除限度額を使う仕組みがあります。外国所得税が多い年と少ない年があるためです。
納付する外国所得税額が、所得税・復興特別所得税・地方税の控除限度額の合計額を超える場合、前年以前3年内の各年の所得税の控除限度額のうち使い残した部分(繰越控除限度額)を限度として、超える部分をその年分の所得税額から控除できます。逆に、外国所得税額が所得税の控除限度額に満たない場合、前年以前3年内の各年に納付した外国所得税額のうち引ききれずに繰り越された部分(繰越外国所得税額)を、その年の控除限度額から外国所得税額を控除した残額を限度として控除できます。
枠が余った年と、税が余った年をならして使えるということです。控除余裕額や控除限度超過額は、最も古い年のものから順次充てていきます。
なお、外国所得税が後から減った・増えたときの扱いも決められています。外国税額控除の適用を受けた年の翌年以後7年内の各年において、その外国所得税額が減額された場合は、減額された日の属する年で調整します。その年に納付する外国所得税額から減額分を控除し、足りなければ前年以前3年内の各年の控除限度超過額から控除し、それでも充てられない部分は、その年分の雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入します。
増額された場合は、増額のあった日の属する年分において新たに生じたものとして外国税額控除の計算を行います。外国での還付や追徴があった年は、日本の申告にも影響します。
手続。明細書と外国の納税を証する書類を添付する
外国税額控除を受けるには、確定申告書、修正申告書または更正請求書に「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」を添付し、外国所得税額を課されたことを証する書類、税の名称・金額・納付日などを記載した書類、申告書の写しや納税証明書・源泉徴収票などの納付を証する書類、国外源泉所得の金額の計算に関する明細を記載した書類を添えます。控除される金額は、一定の場合を除き、明細書に記載された金額が限度です。
繰越控除を使うときは、繰越しの対象となる年のうち最も古い年以後の各年について、各年の控除限度額や納付した外国所得税額を記載した明細書と申告書等を提出していることが必要です。外国所得税が引かれたことを示す書類を保管し、毎年の申告で明細書を付けておくと、後の年で繰越しを使えます。株式の損失の繰越しと同じく、連続して申告しておくことが要点です。株の譲渡損失の繰越控除もあわせてご覧ください。
よくある質問
外国税額控除とはどのような制度ですか
答えを先に書くと、外国税額控除は、日本の居住者がその年に外国の法令により所得税に相当する税(外国所得税)を納めることになる場合に、控除限度額を限度として、その外国所得税額をその年分の所得税額から差し引く制度です。国税庁のタックスアンサーNo.1240はそのように説明しています。→ 本文で読む
外国税額控除の控除限度額はどう計算しますか
引ける金額には上限があります。所得税の控除限度額は、その年分の所得税額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)です。 所得全体のうち国外所得が占める割合の分だけ、所得税額から引ける という考え方です。→ 本文で読む
NISA口座で受けた外国株式の配当の外国所得税は控除できますか
外国所得税とは、外国の法令に基づき外国またはその地方公共団体により個人の所得を課税標準として課される税です。No.1240は、超過所得税や附加税、徴税上の便宜のため所得に代えて収入金額を課税標準とする税なども含む、としています。→ 本文で読む
外国所得税が控除限度額を超えたらどうなりますか
外国税額控除は、外国所得税を納付することとなる日の属する年分の所得税および復興特別所得税の額から控除します。継続して、実際に納付した日の属する年分で控除している場合には、その方法も認められます。→ 本文で読む
外国税額控除で引ききれなかった分は繰り越せますか
外国税額控除には、前年以前3年内の各年から繰り越された外国所得税額または控除限度額を使う仕組みがあります。外国所得税が多い年と少ない年があるためです。 納付する外国所得税額が、所得税・復興特別所得税・地方税の控除限度額の合計額を超える場合、前年以前3年内の各年の所得税の控除限度額のうち使い残した部分(繰越控除限度額)を限度として、超える部分をその年分の所得税額から控除できます。逆に、外国所得税額が所得税の控除限度額に満たない場合、前年以前3年内の各年に納付した外国所得税額のうち引ききれずに繰り越された部分(繰越外国所得税額)を、その年の控除限度額から外国所得税額を控除した残額を限度として控除できます。→ 本文で読む
外国税額控除を受けるには何を添付しますか
外国税額控除を受けるには、確定申告書、修正申告書または更正請求書に「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」を添付し、外国所得税額を課されたことを証する書類、税の名称・金額・納付日などを記載した書類、申告書の写しや納税証明書・源泉徴収票などの納付を証する書類、国外源泉所得の金額の計算に関する明細を記載した書類を添えます。控除される金額は、一定の場合を除き、明細書に記載された金額が限度です。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1240.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
外国株式や海外口座の収入がある方は、毎年の申告で明細書を付けておいてください。
外国税額控除は、控除限度額の計算に所得全体と国外所得の両方が必要です。限度額を超えた分や、逆に使い残した枠は、明細書を付けて申告し続けていれば繰り越して使えます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。