譲渡
マイホームの譲渡損失の特例の対象になる「譲渡資産」と「特定譲渡」。
所有期間5年超、住まなくなって3年、令和9年12月31日までの譲渡
住宅ローンの残高を下回る価格でマイホームを売ると、損失を給与などから差し引ける特例があります。ただ、どんな家でも、どんな売り方でも使えるわけではありません。
答えを先に書くと、売った資産が所有期間5年超の自宅(または住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る元の自宅)とその敷地で、売却が令和9年12月31日までの親族等以外への譲渡であることが入口の条件です。
国税庁のタックスアンサーNo.3392は、この「譲渡資産」の範囲と「特定譲渡」の要件を定めています。取り壊した場合、災害で失った場合の扱いも含めて確かめていきます。
この記事の要点
住宅ローンが残るマイホームを売って損が出たときの特例(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除)は、資産が「譲渡資産」、売却が「特定譲渡」に当たることが必要です。譲渡資産は、譲渡した年の1月1日で所有期間5年超の自宅や、住まなくなって3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る元の自宅です。特定譲渡は令和9年12月31日までの親族等以外への譲渡です。国税庁タックスアンサーNo.3392・No.3390をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
特例を使うための入口。譲渡資産と特定譲渡の2つ
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を使うには、売った資産と売り方の両方が条件を満たす必要があります。国税庁のタックスアンサーNo.3392は、譲渡資産が一定の要件を満たす居住用財産であり、かつ、その譲渡が一定の要件を満たすもの(特定譲渡)であることが必要だ、としています。
国税庁 タックスアンサー No.3392「『特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例』の対象となる『譲渡資産』及び『特定譲渡』とは」
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けるためには、譲渡資産が一定の要件を満たす居住用財産であり、かつ、その譲渡が一定の要件を満たすもの(特定譲渡)であることが必要です。
この特例は、No.3390によれば、令和9年12月31日までに住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの残高を下回る価額で売却して損失が生じたときに、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)でき、控除しきれない分は譲渡の年の翌年以後3年間繰り越せる、というものです。新たなマイホームを取得しない場合でも使えます。特例の全体像は住宅ローンが残るマイホームを売って損が出たらで整理しています。この記事では、その入口にあたる「譲渡資産」と「特定譲渡」を確かめます。
所有期間は譲渡した年の1月1日で5年超
譲渡資産に共通する条件が所有期間です。No.3392は、譲渡資産とは、個人が有する家屋または土地等(土地または土地の上に存する権利)で、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもののうち、次に掲げるものをいう、としています。
注意したいのは、所有期間を「売った日」ではなく「売った年の1月1日」で数えることです。買ってから5年を過ぎた直後に売ると、その年の1月1日ではまだ5年を超えていない、ということが起こります。年の途中で5年を迎える方は、翌年に入ってから売れば要件を満たします。No.3390も、売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間がともに5年を超えていることを要件に挙げています。
譲渡資産になる家屋と敷地。住まなくなってから3年
所有期間5年超のもののうち、譲渡資産になる家屋と敷地は次のとおりです。No.3392は(1)から(3)を挙げています。
| 譲渡資産の範囲 | |
|---|---|
| (1) | 譲渡する個人が居住の用に供している家屋で国内にあるもの |
| (2) | (1)の家屋でその個人の居住の用に供されなくなったもの(住まなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されるものに限る) |
| (3) | (1)または(2)の家屋およびその家屋の敷地の用に供されている土地等 |
(1)はいま住んでいる家です。家屋を2以上持っている場合は、主として居住の用に供している一の家屋に限られます。また、店舗兼住宅のように居住の用以外の用に供している部分がある場合は、居住の用に供している部分だけが対象です。
(2)は、以前住んでいて、いまは住んでいない家です。住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。転勤で引っ越してから空き家や貸家にしていた家を売る場合、この期限を過ぎていないかを最初に確かめます。(3)の敷地は、家屋と一緒に売る土地や借地権です。土地だけを売る場合は、次の取り壊しや災害の要件を見ます。
家屋を取り壊した場合の敷地。3つの要件
住んでいた家屋や住まなくなった家屋を取り壊して、土地だけを売る場合は、次の3つの要件すべてに当てはまることが必要です。No.3392は注記で次のように定めています。
| 家屋を取り壊した場合の要件 | |
|---|---|
| イ | 取り壊された家屋およびその敷地は、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が5年を超えるものであること |
| ロ | その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること |
| ハ | 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと |
取り壊した場合は、所有期間を取り壊した日の属する年の1月1日で見ます。そして、取り壊しから1年以内に売買契約を結び、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが求められます。
いちばん落としやすいのはハです。取り壊したあと、売れるまでの間に貸駐車場にしてしまうと、この特例は使えなくなります。「空けておくのはもったいない」と一時的に貸すことがありますが、契約を結ぶまでは何にも使わないでおく必要があります。
災害で家屋が滅失した場合の敷地
住んでいた家屋が災害で滅失してしまった場合の敷地も、譲渡資産に含まれます。No.3392は(4)として、災害により滅失した家屋を引き続き所有していたならば、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えることとなる、その家屋の敷地の用に供されていた土地等を挙げています。
売る期限は、その災害があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。住まなくなった家屋が災害で滅失した場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までとなります。災害で失った家の敷地は、家屋がない状態で売ることになりますが、取り壊しの場合の「1年以内の契約」や「他の用途に供していない」という要件は課されていません。No.3390も、これらの土地は住まなくなった後どのような用途に使用していてもかまわない、としています。
特定譲渡の要件。令和9年12月31日まで、親族等への譲渡ではない
売る資産の条件を満たしていても、売り方が「特定譲渡」に当たらなければ特例は使えません。No.3392は、特定譲渡の要件を2つ挙げています。
国税庁 タックスアンサー No.3392「『特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例』の対象となる『譲渡資産』及び『特定譲渡』とは」
(1)令和9年12月31日までに行われる譲渡(通常の売買のほか、借地権の設定などの譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含みます。)であること
ひとつは時期です。令和9年12月31日までに行われる譲渡であること。通常の売買のほか、借地権の設定などの譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けも含みます。
もうひとつは相手と方法です。譲渡する個人の親族等に対する譲渡、および贈与または出資による譲渡でないこと。親や子、配偶者などに売った場合は、損が出ていてもこの特例は使えません。親族等の範囲は、No.3392がコード3376(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の特例の特定譲渡)を参照するよう案内しています。No.3390は「特別の関係がある人」として、親子や夫婦のほか、生計を一にする親族、家屋を売却した後その家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係にある法人なども挙げています。
なお、No.3392の注記は、その年中において特定譲渡が2以上ある場合には、いずれかの特定譲渡に限って特例を適用できる、としています。同じ年に2つの自宅を売って両方に損が出ても、特例を使えるのはどちらか1つです。ここまでの入口を通ったうえで、住宅ローンの残高や所得の要件、添付書類の話に進みます。益が出た場合の特例は譲渡所得の特別控除は7種類やマイホームの3,000万円控除をご覧ください。
よくある質問
マイホームの譲渡損失の特例を使うための入口の条件は何ですか
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を使うには、売った資産と売り方の両方が条件を満たす必要があります。国税庁のタックスアンサーNo.3392は、譲渡資産が一定の要件を満たす居住用財産であり、かつ、その譲渡が一定の要件を満たすもの(特定譲渡)であることが必要だ、としています。→ 本文で読む
マイホームの譲渡損失の特例の所有期間はどう数えますか
譲渡資産に共通する条件が所有期間です。No.3392は、譲渡資産とは、個人が有する家屋または土地等(土地または土地の上に存する権利)で、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもののうち、次に掲げるものをいう、としています。→ 本文で読む
住まなくなった家はいつまでに売れば特例の対象になりますか
所有期間5年超のもののうち、譲渡資産になる家屋と敷地は次のとおりです。No.3392は(1)から(3)を挙げています。 (1)はいま住んでいる家です。家屋を2以上持っている場合は、主として居住の用に供している一の家屋に限られます。また、店舗兼住宅のように居住の用以外の用に供している部分がある場合は、居住の用に供している部分だけが対象です。→ 本文で読む
家を取り壊して土地だけ売った場合も特例の対象になりますか
住んでいた家屋や住まなくなった家屋を取り壊して、土地だけを売る場合は、次の3つの要件すべてに当てはまることが必要です。No.3392は注記で次のように定めています。 取り壊した場合は、所有期間を 取り壊した日の属する年の1月1日 で見ます。そして、取り壊しから1年以内に売買契約を結び、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが求められます。→ 本文で読む
災害で家がなくなった土地を売った場合はどうなりますか
住んでいた家屋が災害で滅失してしまった場合の敷地も、譲渡資産に含まれます。No.3392は(4)として、災害により滅失した家屋を引き続き所有していたならば、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えることとなる、その家屋の敷地の用に供されていた土地等を挙げています。→ 本文で読む
親族にマイホームを売った場合も譲渡損失の特例は使えますか
売る資産の条件を満たしていても、売り方が「特定譲渡」に当たらなければ特例は使えません。No.3392は、特定譲渡の要件を2つ挙げています。 ひとつは時期です。 令和9年12月31日までに行われる譲渡 であること。通常の売買のほか、借地権の設定などの譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けも含みます。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.3392 「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の対象となる「譲渡資産」及び「特定譲渡」とは」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3392.htm - 国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3390.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
売却の前に、登記事項証明書と住宅ローンの残高証明書を確かめてください。
この特例は、所有期間・住まなくなってからの期間・売る相手・売る時期のどれか一つが外れると使えません。売却の契約を結ぶ前であれば、時期や相手を調整できることもあります。買い換えをしない場合でも使える特例ですので、損が出そうな売却は早めにご相談ください。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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