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経費

事務所や店舗を借りるときの権利金・立退料は繰延資産。
原則5年で償却し、仲介手数料はその期の損金です

事務所や店舗を借りるとき、家賃のほかに権利金や礼金、仲介手数料を払います。まとまった金額になるので、「全部その期の経費でいいのか」と迷うところです。

答えを先に書くと、権利金や立退料のように支出の効果が1年以上に及ぶものは繰延資産として、原則5年で償却します。仲介手数料は払った期の損金にできます。

繰延資産という言葉はなじみが薄いかもしれませんが、考え方は減価償却と同じで「何年かに分けて経費にする」ものです。国税庁のタックスアンサーNo.5460で、何が繰延資産になり、何年で償却するのかを確認していきます。

公開 最終更新

この記事の要点

会社が建物を借りるために支払った権利金や立退料など、支出の効果が1年以上に及ぶ費用は繰延資産になり、償却期間にわたって損金にします。償却期間は原則5年で、賃借期間が5年未満で更新時に再び権利金の支払が必要なら賃借期間、建物の新築時に建設費の大部分に相当する権利金を払った場合などは耐用年数の10分の7です。不動産業者への仲介手数料は支払った事業年度の損金にできます。国税庁タックスアンサーNo.5460をもとに整理しました。

先に見ておくと分かりやすいもの

権利金・立退料は繰延資産。効果が1年以上に及ぶ費用

まず答えを書くと、会社が建物を借りるために支払った権利金や立退料などの費用で、支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものは、繰延資産になります。国税庁のタックスアンサーNo.5460がそのように示しています。払った期に全額を損金にするのではなく、償却期間にわたって少しずつ損金にします。

国税庁 タックスアンサー No.5460「建物を賃借するための権利金等」

法人が建物を賃借するために支払った権利金、立退料などの費用で支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものは、繰延資産となります。

繰延資産とは、すでに支払いが済んでいて、その効果が将来にわたって続く費用のことです。権利金を払うことで、その建物を借りる地位を得て、その後も借り続けられます。効果が1年以上続くので、払った期だけの費用にはしない、という考え方です。

実務では「礼金」という名前で払うことが多いですが、名前ではなく中身で見ます。退去時に返ってこないお金で、借りる権利の対価なら、権利金と同じ扱いと考えてください。なお、返ってくる敷金や保証金は、そもそも費用ではなく預け金です。

仲介手数料は支払った事業年度の損金

権利金と一緒に払う仲介手数料は、繰延資産にしなくてよい費用です。No.5460は、建物の賃借に際して不動産業者などに支払った仲介手数料については、その支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することができる、としています。

仲介手数料は、物件を紹介してもらったサービスの対価で、借りる権利そのものの対価ではありません。入居のときに1回払って、それで終わりの費用なので、その期の損金でよいとされています。

入居時の支出扱い
権利金・礼金・立退料(効果が1年以上)繰延資産。償却期間にわたって損金
不動産業者への仲介手数料支払った事業年度の損金
内装工事(造作)減価償却資産。耐用年数を見積もって償却

入居時の請求書は、権利金・仲介手数料・前払家賃・敷金が1枚にまとまっていることが多いので、項目ごとに分けて処理します。家賃・敷金・権利金の消費税の扱いは地代は非課税、家賃は課税で整理しています。

償却期間は3区分。原則は5年

繰延資産になった権利金等は、何年で償却するのでしょうか。No.5460は、償却期間を3つに分けて示しています。小さな会社がテナントを借りる場面では、ほとんどが3つめの「5年」です。

権利金等の内容償却期間
1 建物の新築に際して支払った権利金等で、その金額が建物の賃借部分の建設費の大部分に相当し、かつ、その建物が存続する期間中は賃借できる状況にあると認められる場合その建物の耐用年数の10分の7に相当する年数
2 1以外の権利金等で、契約や慣習などによって、明渡しに際して借家権として転売できることになっている場合その建物の賃借後の見積残存耐用年数の10分の7に相当する年数
3 上記1および2以外の権利金等5年

1は、建物を建てる段階から建設費の大部分を権利金として負担するような、特別な場合です。2は、借家権を転売できる商慣習がある場合です。ふつうにテナント募集に応じて入居する場合は、どちらにも当たらず、5年になります。

なお、No.5460の注記は、償却期間に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨てる、としています。10分の7で計算して端数が出たら、年数は切り捨てです。

賃借期間が5年未満なら賃借期間。更新時に再び権利金が要る場合

原則5年にも、例外があります。No.5460は、契約による賃借期間が5年未満の場合で、契約の更新に際して再び権利金等の支払を要することが明らかであるときは、その賃借期間が償却期間になる、としています。

国税庁 タックスアンサー No.5460「建物を賃借するための権利金等」

ただし、契約による賃借期間が5年未満の場合で、契約の更新に際して再び権利金等の支払を要することが明らかであるときは、その賃借期間となります。

条件は2つです。賃借期間が5年未満であること、更新のときにまた権利金を払わなければならないことが明らかであること。更新のたびに権利金を払うなら、最初の権利金の効果は最初の契約期間で終わるので、その期間で償却してよい、という理屈です。

逆に、更新時に権利金が要らない契約なら、賃借期間が短くても原則の5年で償却します。契約書の「更新」の条項に、更新料や権利金の定めがあるかどうかを見てください。ここが分かれ目です。

償却限度額の計算。月数で割って、その期の月数を掛ける

償却期間が決まったら、各期にいくら損金にできるかを計算します。No.5460の注記は、償却限度額は、繰延資産の額を償却期間の月数で割ったものに、その事業年度の月数を掛けて計算した金額、としています。

言葉にすると、権利金の額を償却期間の月数で割って月あたりの額を出し、その期の月数分を損金にするという計算です。減価償却の定額法と似ていますが、年単位ではなく月単位で計算するのが特徴です。

事業年度の途中で入居した期は、月数が変わります。No.5460は、事業年度の中途での支出の場合は、「その事業年度の月数」は支出の日から事業年度末までの月数となり、月数は暦に従って計算し、1か月に満たない端数は1か月とする、としています。月の途中で入居しても、その月は1か月として数えます。

確定申告書に別表16(6)を添付する

繰延資産の償却費を損金にするには、申告書に明細を付ける必要があります。No.5460の注記は、繰延資産の償却費を損金算入する場合には、確定申告書に繰延資産の償却額の計算に関する明細書(別表16(6))を添付する必要がある、としています。

会計ソフトで償却費を計上するだけでは足りず、法人税の申告書に別表16(6)を付けて、償却の計算を示すことが求められています。減価償却資産の別表とは別の様式です。

権利金の償却は入居した期から5年続きます。最初の期に繰延資産として登録し、償却期間を正しく設定しておけば、翌期以降は自動で続きます。入居した期の決算で、権利金・仲介手数料・造作を正しく分けることが、いちばん大事な作業です。家賃を前払いしたときの扱いは短期前払費用で整理しています。

よくある質問

事務所を借りるときに払った権利金や礼金は経費になりますか

まず答えを書くと、会社が建物を借りるために支払った権利金や立退料などの費用で、支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものは、繰延資産になります。国税庁のタックスアンサーNo.5460がそのように示しています。払った期に全額を損金にするのではなく、償却期間にわたって少しずつ損金にします。→ 本文で読む

不動産業者に払った仲介手数料はその期の経費になりますか

権利金と一緒に払う仲介手数料は、繰延資産にしなくてよい費用です。No.5460は、建物の賃借に際して不動産業者などに支払った仲介手数料については、その支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することができる、としています。→ 本文で読む

権利金は何年で償却しますか

繰延資産になった権利金等は、何年で償却するのでしょうか。No.5460は、償却期間を3つに分けて示しています。小さな会社がテナントを借りる場面では、ほとんどが3つめの「5年」です。→ 本文で読む

賃借期間が5年未満のときの権利金の償却期間はどうなりますか

原則5年にも、例外があります。No.5460は、契約による賃借期間が5年未満の場合で、契約の更新に際して再び権利金等の支払を要することが明らかであるときは、その賃借期間が償却期間になる、としています。→ 本文で読む

権利金の償却費はどのように計算しますか

償却期間が決まったら、各期にいくら損金にできるかを計算します。No.5460の注記は、償却限度額は、繰延資産の額を償却期間の月数で割ったものに、その事業年度の月数を掛けて計算した金額、としています。→ 本文で読む

繰延資産の償却に必要な申告書の様式は何ですか

繰延資産の償却費を損金にするには、申告書に明細を付ける必要があります。No.5460の注記は、繰延資産の償却費を損金算入する場合には、確定申告書に繰延資産の償却額の計算に関する明細書(別表16(6))を添付する必要がある、としています。→ 本文で読む

出典

  1. 国税庁「No.5460 建物を賃借するための権利金等」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5460.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

入居時の請求書と賃貸借契約書を、決算前に見せてください。

権利金・礼金は繰延資産、仲介手数料はその期の損金、内装工事は造作として減価償却と、テナントに入るときの支出は項目ごとに扱いが違います。賃借期間が5年未満かどうか、更新時に権利金の支払が必要かどうかで、償却期間も変わります。契約書と請求書をそろえていただければ、決算での処理を一緒に決めます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。