申告
慰謝料・治療費・損害賠償金は非課税。
ただし事業の収入や必要経費を補てんする部分は事業所得の収入になります
交通事故や事故のあと、加害者側から治療費や慰謝料、賠償金を受け取ったとき、「これは申告するのですか」というご質問をいただきます。
答えを先に書くと、心身や資産に加えられた損害について受け取る治療費・慰謝料・損害賠償金は、非課税です。申告する必要はありません。
ただし、例外があります。治療費を受け取ったなら医療費控除の計算で差し引く必要がありますし、個人事業をしている方が事業の収入や経費を補てんするために受け取った賠償金は、事業所得の収入になります。国税庁のタックスアンサーNo.1700で、非課税になるものと、そうでないものを順に確認していきます。
この記事の要点
交通事故などで加害者から受け取る治療費・慰謝料・損害賠償金は、原則として非課税です。心身の損害に対する慰謝料や休業の補償、資産の損害に対する賠償金、社会通念上相当な見舞金が対象です。ただし治療費として受け取った額は医療費控除の医療費から差し引きます。商品の損害や仮店舗の賃借料の補償など、事業の収入や必要経費を補てんするものは事業所得の収入金額になります。国税庁タックスアンサーNo.1700・No.2201をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
- 関連医療費控除のしくみ
- ご案内会社員の副業の確定申告
加害者から受け取る治療費・慰謝料・損害賠償金は原則非課税
事故の被害者が加害者から受け取る治療費、慰謝料、損害賠償金は、原則として非課税です。国税庁のタックスアンサーNo.1700は、交通事故などのために、被害者が治療費、慰謝料、損害賠償金などを受け取ったときは、これらの損害賠償金等は非課税となる、としています。
国税庁 タックスアンサー No.1700「加害者から治療費、慰謝料及び損害賠償金などを受け取ったとき」
ただし、これらの損害賠償金のうちに、その被害者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合には、その補てんされた金額に相当する部分については、各種所得の収入金額とされます。
非課税になるのは、損害を埋め合わせるためのお金だからです。もうけではありません。ただし、必要経費を補てんするための金額が含まれていれば、その部分は所得の収入金額になります。No.1700は、非課税となる賠償金等を3つに分けて示しています。心身の損害に対するもの、資産の損害に対するもの、見舞金の3つです。順に見ていきます。
心身の損害に対する慰謝料・治療費・休業の補償は非課税
心身に加えられた損害について支払を受ける慰謝料などは非課税です。No.1700は、具体的には、事故による負傷について受ける治療費や慰謝料、それに負傷して働けないことによる収益の補償をする損害賠償金などである、としています。
ここで注目したいのは、働けないことによる収益の補償も非課税だという点です。休業損害として受け取る賠償金は、給与の代わりのように見えますが、心身に加えられた損害についての賠償として非課税に含まれます。けがをして休んだ分の補償を受け取っても、所得として申告する必要はありません。一方で、後で見るように、個人事業の「必要経費」を補てんするものは別の扱いになります。
治療費を受け取ったら、医療費控除の医療費から差し引く
治療費として受け取った金額は、医療費控除を受けるときに支払った医療費から差し引きます。No.1700は、治療費として受け取った金額は、医療費を補てんする金額であるため、医療費控除を受ける場合は、支払った医療費の金額から差し引くことになる、としています。
国税庁 タックスアンサー No.1700「加害者から治療費、慰謝料及び損害賠償金などを受け取ったとき」
しかし、その医療費を補てんし、なお余りがあっても他の医療費から差し引く必要はありません。
差し引く範囲は、その治療費が補てんの対象としている医療費までです。事故の治療費として受け取った金額が、その治療にかかった医療費を上回っていても、余った分を家族の別の医療費から引く必要はありません。賠償金は非課税ですが、医療費控除では「自分が実際に負担した医療費」だけが対象になる、という整理です。医療費控除の計算は医療費控除のしくみで確認できます。
資産の損害に対する賠償金も非課税。事業用資産は3つのケースに注意
不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害について受ける損害賠償金も非課税です。No.1700は、具体的には、事故による車両の破損について受ける損害賠償金などである、としています。自家用車をぶつけられて修理代の賠償を受けた、という場合はここに当たります。
ただし、損害を受けた資産が事業用の資産の場合、No.1700は次の3つのケースに注意が必要だとしています。
| ケース | 扱い |
|---|---|
| (1)商品の配送中の事故で使いものにならなくなった商品について賠償金を受け取った | 収入金額に代わる性質を持つため、非課税とならず事業所得の収入金額 |
| (2)車両が店舗に飛び込み、補修期間中に仮店舗を賃借するときの賃借料の補償として賠償金を受け取った | 必要経費に算入される金額を補てんするため、非課税とならず事業所得の収入金額 |
| (3)事故により事業用の車両を廃車とし、その車両の損害について賠償金を受け取った | 非課税。ただし資産損失の計算では損失額から補てん部分を差し引く |
(3)の事業用車両の賠償金は非課税ですが、No.1700は、車両について資産損失の金額を計算する場合は、損失額から損害賠償金などによって補てんされる部分の金額を差し引いて計算する、としています。賠償金の額が損失額を超えても、全額が非課税です。この点はNo.1700に「損害賠償金などの金額がその損失額を超えたとしても、全額が非課税となります」と明記されています。
事業の収入や必要経費を補てんするものは事業所得の収入
個人事業者が受け取る賠償金のうち、収入の代わりになるものや必要経費を補てんするものは、非課税にならず事業所得の収入金額です。No.2201は、個人が資産に加えられた損害について受け取る損害賠償金は原則として非課税だが、個人事業者が受け取る収益補償や必要経費補てんのための損害賠償金などは課税の対象となる、としています。
理由もNo.2201に書かれています。事業所得の必要経費を補てんするために受け取る損害賠償金は、既に必要経費に算入された費用や、将来必要経費に算入される費用を補てんするものだから、事業所得の総収入金額に算入する、というものです。経費として引く一方で、その補てんを非課税にすると二重に得をしてしまうためです。
No.2201は仮店舗の例も挙げています。店舗の隣の建設現場の事故により店舗が損壊し、補修期間中に仮店舗を賃借するときの賃借料の補償として受け取った損害賠償金は、その年の事業所得の収入金額となり、一方、支払った賃借料は支払った年の事業所得の必要経費となる、としています。受け取った補償は収入、払った家賃は経費、と両方を帳簿に載せることになります。必要経費の考え方は副業の必要経費でも整理しています。
見舞金は社会通念上相当な金額まで非課税
心身または資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金も非課税です。No.1700は、非課税となる見舞金は、社会通念上それにふさわしい金額のものに限られる、としています。
「相当の」「社会通念上ふさわしい」という限定がついています。見舞金という名目でも、金額が常識的な範囲を超えていれば非課税にはなりません。また、No.1700は、収入金額に代わる性質を持つものや役務の対価となる性質を持つものは、非課税所得から除かれる、としています。名目が見舞金でも、実質が売上の補償や仕事の報酬であれば、所得として扱います。保険会社から受け取る保険金の課税区分については満期保険金・解約返戻金の税金も参考にしてください。
よくある質問
交通事故で受け取った慰謝料や損害賠償金に税金はかかりますか
事故の被害者が加害者から受け取る治療費、慰謝料、損害賠償金は、原則として非課税です。国税庁のタックスアンサーNo.1700は、交通事故などのために、被害者が治療費、慰謝料、損害賠償金などを受け取ったときは、これらの損害賠償金等は非課税となる、としています。→ 本文で読む
休業損害として受け取った補償は非課税ですか
心身に加えられた損害について支払を受ける慰謝料などは非課税です。No.1700は、具体的には、事故による負傷について受ける治療費や慰謝料、それに負傷して働けないことによる収益の補償をする損害賠償金などである、としています。→ 本文で読む
加害者から治療費を受け取った場合、医療費控除はどうなりますか
治療費として受け取った金額は、医療費控除を受けるときに支払った医療費から差し引きます。No.1700は、治療費として受け取った金額は、医療費を補てんする金額であるため、医療費控除を受ける場合は、支払った医療費の金額から差し引くことになる、としています。→ 本文で読む
事業用の車が事故で廃車になり賠償金を受け取ったら課税されますか
不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害について受ける損害賠償金も非課税です。No.1700は、具体的には、事故による車両の破損について受ける損害賠償金などである、としています。自家用車をぶつけられて修理代の賠償を受けた、という場合はここに当たります。→ 本文で読む
個人事業者が受け取った損害賠償金が事業所得の収入になるのはどのような場合ですか
個人事業者が受け取る賠償金のうち、収入の代わりになるものや必要経費を補てんするものは、非課税にならず事業所得の収入金額です。No.2201は、個人が資産に加えられた損害について受け取る損害賠償金は原則として非課税だが、個人事業者が受け取る収益補償や必要経費補てんのための損害賠償金などは課税の対象となる、としています。→ 本文で読む
見舞金は非課税ですか
心身または資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金も非課税です。No.1700は、非課税となる見舞金は、社会通念上それにふさわしい金額のものに限られる、としています。 「相当の」「社会通念上ふさわしい」という限定がついています。 見舞金という名目でも、金額が常識的な範囲を超えていれば非課税にはなりません。 また、No.1700は、収入金額に代わる性質を持つものや役務の対価となる性質を持つものは、非課税所得から除かれる、としています。 名目が見舞金でも、実質が売上の補償や仕事の報酬であれば、所得として扱います。 保険会社から受け取る保険金の課税区分については 満期保険金・解約返戻金の税金 も参考にしてください。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1700 加害者から治療費、慰謝料及び損害賠償金などを受け取ったとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1700.htm - 国税庁「No.2201 個人事業者が事業所得の必要経費を補てんするための損害賠償金を受け取ったとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2201.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
賠償金を受け取ったら、何に対する支払いかを内訳で残しておいてください。
同じ示談金でも、慰謝料や車の修理の補償は非課税、商品の損害や仮店舗の家賃の補償は事業の収入と、名目で扱いが分かれます。治療費を受け取った年に医療費控除を受けるなら、その分を差し引いて計算します。示談書や保険会社の支払明細をお持ちいただければ、申告に入れるものと入れないものを一緒に整理します。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
あわせて読む
同じテーマの記事
株式・投資・保険金の税金
公社債の償還金の税金。源泉分離課税と申告分離課税
公社債の償還金の課税は2つに分かれます。
株式・投資・保険金の税金
金融類似商品の税金は20.315%の源泉分離課税。対象は6つ
金融類似商品の収益には、一律20.315パーセント(所得税15.315パーセント、地方税5パー…
株式・投資・保険金の税金
死亡保険金は所得税・相続税・贈与税のどれか
死亡保険金の税金は、被保険者・保険料の負担者・保険金受取人の3者が誰かで決まります。
株式・投資・保険金の税金
暗号資産の税金は雑所得。交換や決済でも課税
暗号資産取引により生じた利益は、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます。