申告
所得税のしくみ。
10種類の所得から所得控除を引き、税率をかける計算の流れ
確定申告書を初めて見ると、所得金額、所得控除、課税所得金額、税額控除と似た言葉が並んでいて、どこから読めばよいか分からなくなります。
答えを先に書くと、所得税の計算は「所得を10種類に分けて合計する→所得控除を引く→税率をかける→税額控除を引く→源泉徴収された分を差し引く」という一本の流れです。この順番さえ押さえれば、申告書のどの欄が何をしているかが読めるようになります。
国税庁のタックスアンサーNo.1000は、この流れを自営業の方と会社員の方の2つの具体例で示しています。数字を追いながら、順に確認していきます。
この記事の要点
所得税は、1年間のすべての所得金額から所得控除額を差し引いた課税所得金額に税率を適用して計算します。所得は利子・配当・不動産・事業・給与・退職・山林・譲渡・一時・雑の10種類、所得控除は基礎控除など16種類、税率は超過累進税率です。所得税額から税額控除を引き、復興特別所得税を足し、源泉徴収税額を差し引いた残りが納める税金です。国税庁タックスアンサーNo.1000をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
所得税の計算は一本の流れ
所得税は、個人の所得に対してかかる税金で、1年間のすべての所得金額から所得控除額を差し引いた残りの金額(課税所得金額)に税率を適用して税額を計算します。国税庁のタックスアンサーNo.1000は、この計算を所得金額、課税所得金額、所得税額、基準所得税額、復興特別所得税額、申告納税額の順に説明しています。
国税庁 タックスアンサー No.1000「所得税のしくみ」
所得税は、個人の所得に対してかかる税金であり、「1年間のすべての所得金額」から「所得控除額」を差し引いた残りの金額(課税所得金額)に税率を適用して税額を計算します。
| 段階 | 何をするか |
|---|---|
| 所得金額 | 所得を種類ごとに分け、収入から必要経費などを引く |
| 課税所得金額 | すべての所得金額から所得控除額を引く |
| 所得税額 | 課税所得金額に税率をかける |
| 基準所得税額 | 所得税額から税額控除を引く |
| 復興特別所得税額 | 基準所得税額に税率をかける |
| 申告納税額 | 合計から源泉徴収税額や予定納税額を引く |
「収入」と「所得」は別の言葉です。収入から必要経費などを引いたものが所得で、そこからさらに所得控除を引いたものが課税所得金額です。税率をかけるのは、いちばん最後に残った課税所得金額です。
所得は10種類に分けて計算する
所得は、その性質によって10種類に分かれ、それぞれについて収入や必要経費の範囲、所得の計算方法が定められています。No.1000が挙げるのは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10種類です。
給与は給与所得、アパートの家賃は不動産所得、株の売却益は譲渡所得、年金や副業の収入は雑所得、というように、まずどの種類の所得かを決めます。種類が決まれば、その所得の計算方法が決まります。
なお、所得税は納税義務者に帰属するすべての所得に課税することを原則としていますが、社会政策その他の見地から所得税を課さないもの(非課税所得)もあります。受け取ったお金がすべて課税されるわけではないということです。
所得控除は16種類。個人的な事情を加味する
課税所得金額は、その方のすべての所得金額から所得控除額を差し引いて算出します。No.1000は所得控除を、控除の対象となる扶養親族が何人いるかなどの個人的な事情を加味して税負担を調整するもの、と説明し、次の16種類を挙げています。
| 種類 | 所得控除 |
|---|---|
| 損失や支出に関するもの | 雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除 |
| 本人の事情に関するもの | 障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除 |
| 家族に関するもの | 配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、特定親族特別控除 |
| すべての人 | 基礎控除 |
同じ所得金額でも、家族が多い、医療費がかさんだ、保険料を払っている、といった事情で課税所得金額は変わります。会社員の方が確定申告で税金が戻るのは、年末調整に入っていない所得控除を足すことが多いからです。医療費控除の要件は医療費控除で確認できます。
税率は超過累進税率。分離課税の所得もある
所得税額は、課税所得金額に所得税の税率を適用して計算します。No.1000は、所得税の税率は所得が多くなるに従って段階的に高くなり、納税者がその支払能力に応じて公平に税を負担するしくみ(超過累進税率)になっている、としています。
「超過」累進というのは、課税所得金額のうち一定の金額を超えた部分だけに高い税率がかかるという意味です。所得が増えて税率の段階が上がっても、所得全体に高い税率がかかるわけではありません。税率の段階と速算表の読み方は所得税の税率と速算表で整理しています。
また、No.1000の注記にあるように、土地建物等や株式等の譲渡所得など、他の所得と区分して税額を計算する所得もあります。これらは合計に入れずに、別の税率で計算します(申告分離課税)。
税額控除を引き、復興特別所得税を足す
所得税額から、税額控除などの所得税額から差し引かれる金額を控除して、基準所得税額を算出します。No.1000が挙げる主な税額控除は、配当控除、政党等寄附金特別控除、認定NPO法人等寄附金特別控除、公益社団法人等寄附金特別控除、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の5つです。
所得控除は「税率をかける前」に所得から引くもの、税額控除は「税率をかけた後」に税額から直接引くものです。住宅ローン控除が大きく効くのは、税額から直接引く税額控除だからです。
次に復興特別所得税です。平成25年から令和29年までの各年分については、復興特別所得税を所得税と併せて申告・納付します。復興特別所得税額は、基準所得税額に2.1パーセントの税率を掛けて計算します。なお、令和9年1月1日以後に生ずる所得については、復興特別所得税の税率が1.1パーセントに引き下げられ、防衛特別所得税(源泉徴収すべき所得税の額の1%相当額)が併せて源泉徴収されます。
基準所得税額と復興特別所得税額の合計から、源泉徴収税額や予定納税額などを差し引いた残りが、所得税および復興特別所得税の申告納税額(納める税金)です。源泉徴収税額や予定納税額のほうが多いときは、確定申告をすることによって納め過ぎの所得税の還付を受けることができます。
国税庁の具体例で流れを追う
No.1000には2つの具体例が載っています。自営業の方の例では、収入金額1,000万円、必要経費700万円、社会保険料34万円、収入のない配偶者(30歳)を扶養している場合を計算しています。
国税庁 タックスアンサー No.1000「所得税のしくみ」具体例1
10,000,000円(事業収入) – 7,000,000円(必要経費) = 3,000,000円
所得控除額は、社会保険料控除340,000円、配偶者控除380,000円、基礎控除1,040,000円の合計1,760,000円です。課税所得金額は3,000,000円-1,760,000円=1,240,000円、所得税額は1,240,000円×5%=62,000円、復興特別所得税額は62,000円×2.1%=1,302円、合計63,300円(100円未満切り捨て)が申告納税額です。
会社員の方の例では、収入金額600万円、給与所得控除後の金額436万円、所得控除の額の合計額166万円、源泉徴収税額176,100円で、医療費50万円(保険の補てん6万円)があった場合です。医療費控除の金額は500,000円-60,000円-100,000円=340,000円、所得控除額は1,660,000円+340,000円=2,000,000円、課税所得金額は4,360,000円-2,000,000円=2,360,000円、所得税額は2,360,000円×10%-97,500円=138,500円です。
復興特別所得税額は138,500円×2.1%=2,908円。所得税額138,500円と復興特別所得税額2,908円の合計に対して、源泉徴収税額が176,100円ですから、差額の34,692円が還付される税金になります。年末調整済みの給与に医療費控除を足しただけで、この流れのとおりに還付額が出てきます。
申告期限と還付申告
申告の期限は、原則として、その年の翌年2月16日から3月15日までです。ただし、No.1000は、所得税の還付を受けるための申告(還付申告)はこの期限とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出することができる、としています。
会社員の方が医療費控除で税金を戻すような申告は還付申告ですから、3月15日を過ぎていても出せます。申告書は所轄税務署に提出します。国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」を使うと、画面の案内に沿って金額を入力することで、必要な付表や明細書も自動的に作成されます。
会社員の方でも確定申告が必要になる場合については、会社員でも確定申告が必要な場合で整理しています。期限までに申告できなかった場合や、内容に誤りがあった場合の扱いは、別のタックスアンサーで案内されています。
よくある質問
所得税はどのような流れで計算しますか
所得税は、個人の所得に対してかかる税金で、1年間のすべての所得金額から所得控除額を差し引いた残りの金額(課税所得金額)に税率を適用して税額を計算します。国税庁のタックスアンサーNo.1000は、この計算を所得金額、課税所得金額、所得税額、基準所得税額、復興特別所得税額、申告納税額の順に説明しています。→ 本文で読む
所得は何種類に分かれていますか
所得は、その性質によって10種類に分かれ、それぞれについて収入や必要経費の範囲、所得の計算方法が定められています。No.1000が挙げるのは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10種類です。→ 本文で読む
所得控除にはどのようなものがありますか
課税所得金額は、その方のすべての所得金額から所得控除額を差し引いて算出します。No.1000は所得控除を、控除の対象となる扶養親族が何人いるかなどの個人的な事情を加味して税負担を調整するもの、と説明し、次の16種類を挙げています。→ 本文で読む
所得税の税率はどのようなしくみですか
所得税額は、課税所得金額に所得税の税率を適用して計算します。No.1000は、所得税の税率は所得が多くなるに従って段階的に高くなり、納税者がその支払能力に応じて公平に税を負担するしくみ(超過累進税率)になっている、としています。→ 本文で読む
所得控除と税額控除は何が違いますか
所得税額から、税額控除などの所得税額から差し引かれる金額を控除して、基準所得税額を算出します。No.1000が挙げる主な税額控除は、配当控除、政党等寄附金特別控除、認定NPO法人等寄附金特別控除、公益社団法人等寄附金特別控除、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の5つです。→ 本文で読む
所得税の申告期限はいつですか
申告の期限は、原則として、その年の翌年2月16日から3月15日までです。ただし、No.1000は、所得税の還付を受けるための申告(還付申告)はこの期限とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出することができる、としています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1000 所得税のしくみ」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1000.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
申告書の数字がどこから来たか分からないときは、流れの順に戻ってください。
所得金額、所得控除、課税所得金額、税額控除のどこで数字が変わったのかを追うと、たいていの疑問は解けます。源泉徴収票や支払調書、控除証明書をお持ちいただければ、ご自身の申告書をこの流れに沿って一緒に読み解きます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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