経費
定額法と定率法の償却限度額の計算。
国税庁の100万円・8年の例で、毎年いくら償却できるかを確かめます
会社で買った車やパソコン、機械は、買った年に全額を経費にはできず、減価償却で何年かに分けて損金にします。その1年分の上限が償却限度額です。
答えを先に書くと、定額法は取得価額に償却率をかけるだけ、定率法は残っている帳簿価額に償却率をかけるので初めの年ほど大きく償却できます。どちらも平成19年4月1日以後に取得した資産は、最後に1円を残して償却し切ります。
算式だけ見ても実感が湧きにくいので、国税庁が示している取得価額100万円・耐用年数8年の計算例を表にして、毎年の償却費がどう動くかを確かめます。国税庁のタックスアンサーNo.5410で順に見ていきます。
この記事の要点
平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産は、残存簿価1円まで償却できます。定額法の償却限度額は取得価額×償却率、定率法は(取得価額-既償却額)×償却率で、調整前償却額が償却保証額に満たなくなると改定取得価額×改定償却率に切り替わります。取得価額100万円・耐用年数8年の例で、定額法は毎年125,000円、200%定率法は初年度250,000円と確かめます。国税庁タックスアンサーNo.5410・No.5407をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
平成19年4月1日以後の取得分は残存簿価1円まで償却できる
国税庁のタックスアンサーNo.5410は、平成19年度税制改正により、平成19年4月1日以後に取得をされた減価償却資産については、償却可能限度額および残存価額が廃止され、耐用年数経過時に残存簿価1円まで償却できるようになった、としています。いま会社が買う資産は、ほぼすべてこの新しい方法の対象です。
国税庁 タックスアンサー No.5410「減価償却資産の償却限度額の計算方法(平成19年4月1日以後取得分)」
平成19年4月1日以後に取得をされた減価償却資産については、償却可能限度額および残存価額が廃止され、耐用年数経過時に残存簿価1円まで償却できるようになるとともに、新たな償却方法として、従前における計算の仕組みとは異なる定額法や定率法などが導入されました。
もうひとつ、定率法の償却率については平成23年12月の税制改正があります。No.5410は、平成24年4月1日以後に取得をされた減価償却資産に適用される定率法の償却率が、定額法の償却率を2.5倍した「250%定率法」から、2倍した「200%定率法」に引き下げられた、としています。いま新しく買う資産の定率法は200%定率法です。
定額法の算式。取得価額×定額法の償却率
定額法は、毎年同じ額を償却する方法です。No.5410は、定額法の償却限度額=取得価額×定額法の償却率、としています。償却率は耐用年数省令別表第八に規定されています。
取得価額が変わらないので、償却費は毎年一定です。建物のように長く使う資産や、毎年の利益を平らに見せたい場合に向いています。取得価額に何を含めるかで毎年の償却費が変わりますから、その決め方は取得価額に含めなくてよい付随費用で確かめてください。
定率法の算式。償却保証額を下回ったら改定償却率に切り替え
定率法は、残っている帳簿価額に償却率をかける方法です。No.5410は、定率法の償却限度額=(取得価額-既償却額)×定率法の償却率(算式1)とし、この金額を調整前償却額と呼んでいます。既償却額は前事業年度までに損金の額に算入された償却費の累積額です。
ただし、残高が減ると償却額も小さくなり、いつまでも償却が終わりません。そこで切り替えの仕組みがあります。No.5410は、調整前償却額が償却保証額に満たない場合は、改定取得価額×改定償却率(算式2)が償却限度額になる、としています。
| 用語 | 意味(No.5410の注) |
|---|---|
| 償却保証額 | 取得価額×耐用年数に応じた保証率(耐用年数省令別表第九、十) |
| 既償却額 | 前事業年度までに損金の額に算入された償却費の累積額 |
| 改定取得価額 | 原則として、調整前償却額が最初に償却保証額に満たなくなる事業年度の期首未償却残高 |
| 改定償却率 | 耐用年数省令別表第九、第十に規定 |
言葉で言うと、通常の定率法で計算した償却額が「最低限これだけは償却する」という保証額を下回った年から、その年の期首の残高に改定償却率をかけた定額で償却し切るという流れです。次の計算例で実際の数字を見ると分かりやすくなります。
計算例(定額法)。100万円・8年なら毎年125,000円
No.5410の具体例は、平成19年4月1日に取得して事業に使い始めた(3月決算法人)、取得価額100万円、耐用年数8年、定額法の償却率0.125の資産です。毎年の償却費は1,000,000×0.125×12/12=125,000円で、8年目だけ1円を残します。
| 事業年度(至) | 償却費(償却限度額) | 償却累積額 | 未償却残高 |
|---|---|---|---|
| 20.3.31 | 125,000 | 125,000 | 875,000 |
| 21.3.31 | 125,000 | 250,000 | 750,000 |
| 22.3.31 | 125,000 | 375,000 | 625,000 |
| 23.3.31 | 125,000 | 500,000 | 500,000 |
| 24.3.31 | 125,000 | 625,000 | 375,000 |
| 25.3.31 | 125,000 | 750,000 | 250,000 |
| 26.3.31 | 125,000 | 875,000 | 125,000 |
| 27.3.31 | 125,000 → 124,999 | 999,999 | 1 |
No.5410の注は、8年目における計算上の償却限度額は12万5,000円ですが、残存簿価が1円になりますので、結果として実際の償却限度額は12万4,999円になる、としています。最後の年は1円を残す分だけ償却費が小さくなる、ここだけ覚えておけば定額法は迷いません。
計算例(200%定率法)。初年度250,000円から減っていく
次は同じ取得価額100万円・耐用年数8年を、平成24年4月1日に取得した場合の200%定率法です。No.5410の例では、償却率0.250、改定償却率0.334、保証率0.07909(償却保証額79,090円)です。償却率0.250は、定額法の0.125の2倍になっています。
| 事業年度(至) | 償却費(償却限度額) | 償却累積額 | 未償却残高 |
|---|---|---|---|
| 25.3.31 | 1,000,000×0.250=250,000 | 250,000 | 750,000 |
| 26.3.31 | 750,000×0.250=187,500 | 437,500 | 562,500 |
| 27.3.31 | 562,500×0.250=140,625 | 578,125 | 421,875 |
| 28.3.31 | 421,875×0.250=105,468 | 683,593 | 316,407 |
| 29.3.31 | 316,407×0.250=79,101 | 762,694 | 237,306 |
| 30.3.31 | 237,306×0.250=59,326<79,090 → 237,306×0.334=79,260 | 841,954 | 158,046 |
| 31.3.31 | 237,306×0.334=79,260 | 921,214 | 78,786 |
| R2.3.31 | 79,260 → 78,785 | 999,999 | 1 |
見どころは30.3.31の行です。通常どおり計算した59,326円が償却保証額79,090円を下回ったため、この年の期首残高237,306円が改定取得価額になり、以後は237,306×0.334=79,260円の定額で償却します。定率法は初年度に250,000円と、定額法の2倍を償却できる一方、後半は小さくなります。最後の年はやはり1円を残し、No.5410の注のとおり79,260円ではなく78,785円が実際の償却限度額です。
リース期間定額法。所有権移転外リースの資産
リースで借りている資産にも償却の算式があります。No.5410は、リース期間定額法は、平成20年4月1日以後に締結された所有権移転外リース取引により賃借人が取得したものとされる減価償却資産に適用される、とし、算式をリース資産の取得価額/リース期間の月数×その事業年度におけるそのリース期間の月数、としています。
要するにリース料総額をリース期間で月割りする方法です。コピー機や車をリースしている場合、契約が所有権移転外リースに当たるかどうかで処理が変わりますので、契約書を確かめてください。
償却方法を変えるには事前の承認申請が要る
定額法から定率法へ、あるいはその逆に変えたいときは、勝手には変えられません。No.5407は、減価償却資産の償却方法を変更しようとするときは、原則として、新たな償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を所轄税務署長に提出して承認を受けなければならない、としています。
期限は変えたい事業年度が始まる日の前日までで、決算が終わってから「今期は定率法にしたい」と思っても間に合いません。さらにNo.5407は、現在の償却方法を採用してから相当期間を経過していないときは承認されない、とし、注で3年を経過していない場合は特別な理由があるときを除いて相当の期間を経過していないときに該当する、としています。一度選んだ償却方法は、少なくとも3年は続ける前提で決めてください。中古で買った資産の耐用年数の考え方は中古資産の耐用年数を、少額の資産を一度に経費にする制度は少額減価償却資産の特例をご覧ください。
よくある質問
減価償却は最後に1円を残すのですか
国税庁のタックスアンサーNo.5410は、平成19年度税制改正により、平成19年4月1日以後に取得をされた減価償却資産については、償却可能限度額および残存価額が廃止され、耐用年数経過時に残存簿価1円まで償却できるようになった、としています。いま会社が買う資産は、ほぼすべてこの新しい方法の対象です。→ 本文で読む
定額法の償却限度額はどう計算しますか
定額法は、毎年同じ額を償却する方法です。No.5410は、定額法の償却限度額=取得価額×定額法の償却率、としています。償却率は耐用年数省令別表第八に規定されています。 取得価額が変わらないので、償却費は毎年一定です。建物のように長く使う資産や、毎年の利益を平らに見せたい場合に向いています。 取得価額に何を含めるか で毎年の償却費が変わりますから、その決め方は 取得価額に含めなくてよい付随費用 で確かめてください。→ 本文で読む
定率法の償却保証額と改定償却率とは何ですか
定率法は、残っている帳簿価額に償却率をかける方法です。No.5410は、定率法の償却限度額=(取得価額-既償却額)×定率法の償却率(算式1)とし、この金額を調整前償却額と呼んでいます。既償却額は前事業年度までに損金の額に算入された償却費の累積額です。→ 本文で読む
100万円の資産を定額法で8年償却すると毎年いくらですか
No.5410の具体例は、平成19年4月1日に取得して事業に使い始めた(3月決算法人)、取得価額100万円、耐用年数8年、定額法の償却率0.125の資産です。毎年の償却費は1,000,000×0.125×12/12=125,000円で、8年目だけ1円を残します。→ 本文で読む
200%定率法では初年度にいくら償却できますか
次は同じ取得価額100万円・耐用年数8年を、平成24年4月1日に取得した場合の200%定率法です。No.5410の例では、償却率0.250、改定償却率0.334、保証率0.07909(償却保証額79,090円)です。償却率0.250は、定額法の0.125の2倍になっています。→ 本文で読む
定額法から定率法に変更するにはどうしますか
定額法から定率法へ、あるいはその逆に変えたいときは、勝手には変えられません。No.5407は、減価償却資産の償却方法を変更しようとするときは、原則として、新たな償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を所轄税務署長に提出して承認を受けなければならない、としています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.5410 減価償却資産の償却限度額の計算方法(平成19年4月1日以後取得分)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5410.htm - 国税庁「No.5407 減価償却資産の償却方法の変更手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5407.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
固定資産台帳の償却方法と償却率を、一度見直してみてください。
定額法か定率法か、どの償却率を使っているかで、毎年の損金の額と利益の見え方が変わります。会計ソフトの自動計算でも、取得日や耐用年数の入力が違えば償却限度額を超えてしまうことがあります。決算前に台帳をお持ちいただければ、限度額の範囲に収まっているかを一緒に確かめます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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