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経費

貸倒引当金の対象になる債権、ならない債権。
売掛金・貸付金は入り、敷金・前渡金・仮払金は入りません。中小法人の法定繰入率も

貸倒引当金は、まだ貸し倒れていない売掛金や貸付金について、将来の貸倒れに備えて損金を先に計上できる制度です。資本金1億円以下の会社なら、業種ごとの決まった率をかけるだけで使えます。

答えを先に書くと、対象になるのは売掛金・貸付金と、それに準ずる債権です。敷金や前渡金、仮払金のように「お金を返してもらう権利」に見えても、対象にならないものがあります。ここを間違えると繰入限度額を超えてしまいます。

国税庁は、対象になるものを9つ、ならないものを11挙げています。小さな会社の貸借対照表に出てきやすいものを中心に、国税庁のタックスアンサーNo.5500とNo.5501で確認していきます。

公開 最終更新

この記事の要点

一括評価金銭債権とは、売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権で個別評価金銭債権を除いたものです。売掛金・貸付金、益金に算入した未収の譲渡代金や未収利子、立替金、求償権などが対象で、預貯金とその未収利子、保証金・敷金、手付金・前渡金、前払給料などの仮払金、仕入割戻しの未収金は対象外です。資本金1億円以下の中小法人の法定繰入率も含め、国税庁タックスアンサーNo.5500・No.5501をもとに整理しました。

先に見ておくと分かりやすいもの

一括評価金銭債権とは。売掛金・貸付金とこれに準ずるもの

国税庁のタックスアンサーNo.5500は、一括評価金銭債権とは、売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権で、個別評価金銭債権を除いたものをいう、としています。相手先ごとに回収可能性を見積もるのではなく、期末の債権をまとめて一定の率で引当金を計算する対象です。

国税庁 タックスアンサー No.5500「一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の対象となる金銭債権の範囲」

一括評価金銭債権とは、売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権で、個別評価金銭債権を除いたものをいい、具体的には次のとおりです。

ポイントは「売掛金、貸付金その他これらに準ずる」という範囲です。商品やサービスを売った代金、貸したお金、それと同じ性質のものが対象で、単に「将来お金が入ってくる」だけの権利は入りません。相手の倒産などで個別に見積もる債権(個別評価金銭債権)は、ここからは除いて別に計算します。実際に貸し倒れたときの処理は貸倒損失を計上できる3つの場合で整理しています。

対象になるもの9つ

No.5500は、一括評価金銭債権に当たるものとして次の9つを挙げています。小さな会社で出てくるのは、主に1から5です。

一括評価金銭債権に当たるもの
1売掛金、貸付金
2未収の譲渡代金、未収加工料、未収請負金、未収手数料、未収保管料、未収地代家賃等または貸付金の未収利子で、益金の額に算入されたもの
3他人のために立替払をした場合の立替金(将来精算される費用の前払として一時的に経理されているものを除く)
4未収の損害賠償金で益金の額に算入されたもの
5保証債務を履行した場合の求償権
6通算税効果額に係る未収金
7売掛金、貸付金などの債権について取得した受取手形で裏書譲渡(割引を含む)をしたもの(金額が財務諸表の注記等で確認できる場合に限る)
8売掛金、貸付金などの債権について取得した先日付小切手のうち法人が一括評価金銭債権に含めたもの
9売買があったものとされる法人税法上のリース取引のリース料のうち、事業年度終了の時に支払期日の到来していないもの

2と4に「益金の額に算入されたもの」という条件が付いている点に注意してください。未収の家賃や手数料は、売上として計上している分だけが対象です。請求書を出しておらず売上にも入っていないものは、対象になりません。また、割り引いた受取手形も、注記などで金額が確認できれば対象に含められます。

対象にならないもの11

一方、No.5500は、一括評価金銭債権に当たらないものを11挙げています。金融機関や証券会社、保険会社に特有のものも含まれますが、小さな会社に関係するものを中心に一覧にします。

一括評価金銭債権に当たらないもの
1預貯金およびその未収利子、公社債の未収利子、未収配当その他これらに類する債権
2保証金、敷金、預け金その他これらに類する債権
3手付金、前渡金等のように資産の取得の代価または費用の支出に充てるものとして支出した金額
4前払給料、概算払旅費、前渡交際費等のように将来精算される費用の前払として、一時的に仮払金、立替金等として経理されている金額
5金融機関における他店為替貸借の決済取引に伴う未決済為替貸勘定の金額
6証券会社または証券金融会社に対し、借株の担保として差し入れた信用取引に係る株式の売却代金に相当する金額
7雇用保険法などの法令の規定に基づき交付を受ける給付金等の未収金
8仕入割戻しの未収金
9保険会社における代理店貸勘定の金額
10未決済デリバティブ取引に係る差金勘定等の金額
11特定目的会社(SPC)を用いて売掛債権等の証券化を行った場合に法人が保有することとなった証券等

7の給付金等の未収金は、雇用関係の助成金を申請して受け取る前の状態が典型です。助成金の未収入金は、売掛金と同じ「未収」でも対象にはなりません。

間違えやすいもの。敷金・前渡金・仮払金・仕入割戻し

小さな会社の貸借対照表で、対象になりそうに見えて対象にならないのは、敷金・前渡金・仮払金・仕入割戻しの未収金の4つです。いずれも「相手に預けてある、または返してもらえるお金」ですが、No.5500は一括評価金銭債権には当たらないとしています。

事務所を借りるときの敷金・保証金は、貸付けではなく預けたお金です。仕入先に払った手付金・前渡金は、資産の取得や費用の支出に充てるためのお金で、返してもらう性質のものではありません。役員や従業員への前払給料・概算払旅費・前渡交際費は、将来精算される費用の前払で、仮払金や立替金として経理されていても対象外です。同じ「立替金」という科目でも、他人のための立替払は対象、費用の前払としての立替金は対象外と、中身で分かれます。仕入先からもらう割戻しの未収金も、売った代金ではないので入りません。前払いした費用の扱いは短期前払費用もあわせてご覧ください。

繰り入れられるのは資本金1億円以下の法人など

そもそも貸倒引当金を損金にできる会社は限られています。No.5501は、貸倒引当金を繰り入れることのできる法人として、普通法人のうち各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの、または資本もしくは出資を有しないもの(大法人による完全支配関係がある法人などを除く)、公益法人等または協同組合等、人格のない社団等、銀行・保険会社などを挙げています。

マイクロ法人や小さな会社は、資本金1億円以下の普通法人としてこの中に入ります。ただし、資本金5億円以上の大法人に完全支配されている会社は除かれます。親会社が大法人でなければ、小さな会社は貸倒引当金を使えます。逆に言うと、大きな会社にとってはもう使えない制度なので、小さな会社ならではの損金といえます。

中小法人は法定繰入率で計算できる

繰入限度額は、原則として過去3年間の貸倒損失発生額に基づく貸倒実績率を期末の一括評価金銭債権の帳簿価額にかけて計算します。ただしNo.5501は、中小法人などについては、実績繰入率に代えて法定繰入率で計算することが認められている、としています。中小法人とは、上の資本金1億円以下などの法人で、適用除外事業者(事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等)を除いたものです。

事業の区分法定繰入率
卸売業および小売業(飲食店業・料理店業を含み、割賦販売小売業を除く)1,000分の10
製造業(電気業、ガス業、熱供給業、水道業、修理業を含む)1,000分の8
金融業および保険業1,000分の3
割賦販売小売業、包括信用購入あっせん業、個別信用購入あっせん業1,000分の7(令和3年4月1日前に開始する事業年度は1,000分の13)
その他の事業1,000分の6

過去に貸倒れがほとんどない小さな会社では、実績率はゼロに近くなりますから、法定繰入率のほうが有利になることが多いはずです。コンサルティングやIT、デザインといったサービス業は「その他の事業」で1,000分の6、小売や飲食なら1,000分の10です。期末の売掛金と貸付金の合計に、この率をかけた金額が繰入限度額の目安になります。なお、貸倒実績率は小数点以下4位未満を切り上げて計算します。No.5500が根拠として挙げているのは法人税法52条と法人税基本通達11-2-16~18・20、No.5501は法人税法52・66、法人税法施行令96、租税特別措置法57の9などです。

よくある質問

一括評価金銭債権とは何ですか

国税庁のタックスアンサーNo.5500は、一括評価金銭債権とは、売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権で、個別評価金銭債権を除いたものをいう、としています。相手先ごとに回収可能性を見積もるのではなく、期末の債権をまとめて一定の率で引当金を計算する対象です。→ 本文で読む

貸倒引当金の対象になる債権にはどのようなものがありますか

No.5500は、一括評価金銭債権に当たるものとして次の9つを挙げています。小さな会社で出てくるのは、主に1から5です。 2と4に 「益金の額に算入されたもの」 という条件が付いている点に注意してください。未収の家賃や手数料は、売上として計上している分だけが対象です。 請求書を出しておらず売上にも入っていないものは、対象になりません。 また、割り引いた受取手形も、注記などで金額が確認できれば対象に含められます。→ 本文で読む

貸倒引当金の対象にならない債権にはどのようなものがありますか

一方、No.5500は、一括評価金銭債権に当たらないものを11挙げています。金融機関や証券会社、保険会社に特有のものも含まれますが、小さな会社に関係するものを中心に一覧にします。 7の給付金等の未収金は、雇用関係の助成金を申請して受け取る前の状態が典型です。 助成金の未収入金は、売掛金と同じ「未収」でも対象にはなりません。→ 本文で読む

敷金や前渡金、仮払金は貸倒引当金の対象になりますか

小さな会社の貸借対照表で、対象になりそうに見えて対象にならないのは、敷金・前渡金・仮払金・仕入割戻しの未収金の4つです。いずれも「相手に預けてある、または返してもらえるお金」ですが、No.5500は一括評価金銭債権には当たらないとしています。→ 本文で読む

小さな会社でも貸倒引当金を損金にできますか

そもそも貸倒引当金を損金にできる会社は限られています。No.5501は、貸倒引当金を繰り入れることのできる法人として、普通法人のうち各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの、または資本もしくは出資を有しないもの(大法人による完全支配関係がある法人などを除く)、公益法人等または協同組合等、人格のない社団等、銀行・保険会社などを挙げています。→ 本文で読む

中小法人の貸倒引当金の法定繰入率はいくらですか

繰入限度額は、原則として過去3年間の貸倒損失発生額に基づく貸倒実績率を期末の一括評価金銭債権の帳簿価額にかけて計算します。ただしNo.5501は、中小法人などについては、実績繰入率に代えて法定繰入率で計算することが認められている、としています。中小法人とは、上の資本金1億円以下などの法人で、適用除外事業者(事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等)を除いたものです。→ 本文で読む

出典

  1. 国税庁「No.5500 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の対象となる金銭債権の範囲」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5500.htm
  2. 国税庁「No.5501 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5501.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

決算の貸借対照表で、売掛金・貸付金・未収入金・仮払金・敷金の残高を並べてみてください。

貸倒引当金の対象は売掛金や貸付金とそれに準ずる債権だけで、敷金や前渡金、仮払金は入りません。対象になる債権の期末残高に業種ごとの法定繰入率をかければ、小さな会社でも繰入限度額が出ます。科目の中身を一度整理しておくと、毎年の計算が楽になります。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。