経費
決算賞与を今期の損金にする条件。
期末までに全員へ通知し、1か月以内に支払い、損金経理する
利益が出た期の終わりに、「従業員に決算賞与を出して、今期の経費にしたい」と考える経営者は多いと思います。
答えを先に書くと、期末までに全員へ支給額を通知し、期末の翌日から1か月以内に支払い、今期の決算で損金経理する。この3つがそろえば、未払いの賞与でも今期の損金になります。1つでも欠けると、実際に支払った期の損金にずれます。
国税庁のタックスアンサーNo.5350は、使用人賞与の損金算入時期を3つの区分で示しています。ひとり会社でも、パートやご家族を従業員として雇っていれば関わってきます。順に確認していきます。
この記事の要点
従業員への賞与は、原則として支払った日の事業年度の損金です。ただし決算賞与のように期末に未払いでも、支給額を各人別に同時期に支給を受けるすべての使用人へ通知し、通知した事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払い、その事業年度で損金経理をしていれば、通知した日の事業年度の損金にできます。支給日に在職する人だけに支給する定めがあると通知に当たりません。就業規則で支給予定日が定められた賞与は、支給予定日か通知日の遅い日の事業年度です。国税庁タックスアンサーNo.5350をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
原則は支払った日の事業年度の損金
従業員への賞与は、原則として実際に支払った日の属する事業年度の損金です。国税庁のタックスアンサーNo.5350は、使用人に支給する賞与を3つに区分し、それぞれ損金に算入する事業年度を定めています。そのうち3番目の「上記1および2に掲げる賞与以外の賞与」は、その支払をした日の属する事業年度の損金とされています。
| 区分 | 損金に算入する事業年度 |
|---|---|
| 1 就業規則などで支給予定日が定められた賞与 | 支給予定日または通知日のいずれか遅い日の属する事業年度 |
| 2 3つの要件をすべて満たす賞与 | 支給額を通知した日の属する事業年度 |
| 3 上記以外の賞与 | 支払をした日の属する事業年度 |
つまり、何も手を打たなければ、期末に未払いの賞与は今期の損金になりません。翌期に支払った時点で翌期の損金です。今期の損金にしたいなら、2の要件を満たす必要があります。
未払いでも損金にできる3つの要件
期末時点で未払いの賞与を今期の損金にする要件は3つで、No.5350はそのすべてを満たす賞与について、使用人にその支給額の通知をした日の属する事業年度の損金としています。
国税庁 タックスアンサー No.5350「使用人賞与の損金算入時期」
(1) その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知をしていること。
1つめは通知です。「賞与を出す」と全体に伝えるだけでは足りません。各人別に金額を、同時期に支給を受けるすべての使用人へ通知します。期末までに、一人ひとりに金額を示した書面を渡すのが確実です。
2つめは支払いの期限です。No.5350は、(1)の通知をした金額を通知したすべての使用人に対し、その通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていることを求めています。3月決算なら、4月末までに全員へ支払います。通知した金額どおりに、通知した全員へ払うことが前提です。
3つめは損金経理です。その支給額につき(1)の通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。決算で未払費用として賞与を費用に計上しておくということです。翌期の帳簿にだけ載せたのでは、要件を満たしません。
「通知」に当たらない場合。支給日在職者のみの定め
通知の要件には落とし穴があります。No.5350の注1は、法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知は、ここでいう「通知」には該当しない、としています。
国税庁 タックスアンサー No.5350「使用人賞与の損金算入時期」
法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知は、ここでいう「通知」には該当しません。
就業規則や賞与規程に「支給日に在籍する者に支給する」という条項が入っている会社は少なくありません。この条項があると、期末に通知しても、支給日までに退職した人には払わないことになり、通知した金額を通知した全員に払うという構造が崩れます。決算賞与を期末の損金にしたいなら、支給日在籍要件をその賞与には適用しないことを規程や通知書で明確にしておく必要があります。
パートタイマーと正社員を区分して通知できる
「同時期に支給を受けるすべての使用人」に通知するといっても、正社員とパートで賞与の扱いを分けている会社があります。No.5350の注2は、パートタイマーまたは臨時雇い等の身分で雇用している者(雇用関係が継続的なものであって、他の使用人と同様に賞与の支給の対象としている者を除きます。)とその他の使用人を区分している場合には、その区分ごとに支給額の通知を行ったかどうかを判定することができる、としています。
つまり、正社員だけに決算賞与を出し、パートには出さないという会社でも、正社員の区分のなかで全員に通知していれば要件を満たせます。ただし括弧書きに注意してください。雇用が継続的で、ほかの使用人と同じように賞与の対象にしているパートは、区分の外に置けません。その方には正社員と同じく通知が必要です。パートの給与の源泉徴収はパートやアルバイトの源泉徴収で整理しています。
就業規則で支給予定日が決まっている賞与
夏と冬の賞与のように、労働協約や就業規則で支給予定日が定められている賞与は、1番目の区分です。No.5350は、支給予定日が到来している賞与(使用人にその支給額が通知されているもので、かつ、その支給予定日またはその通知をした日の属する事業年度においてその支給額につき損金経理したものに限ります。)について、その支給予定日またはその通知をした日のいずれか遅い日の属する事業年度の損金としています。
ここでも、支給額の通知と損金経理が条件に入っています。支給予定日が期末より前に到来していても、金額を通知していなければこの区分には入りません。支給予定日と通知日の「遅い日」で判定しますから、規則上の支給日が期末前でも、通知が期末後になれば翌期の損金です。
使用人兼務役員の賞与と、役員の賞与
No.5350は、使用人に対して支給する賞与の額には、使用人兼務役員に対して支給する賞与のうち使用人としての職務に対応する部分の金額が含まれる、としています。使用人兼務役員の賞与は、使用人部分だけがこの記事の対象で、役員部分は役員給与の扱いです。
ひとり会社の社長は、代表取締役ですから使用人兼務役員にはなれません。社長自身に決算賞与を出して損金にする、という使い方はできないということです。誰が使用人兼務役員になれないかは使用人兼務役員になれない人で、役員給与の原則は定期同額給与で整理しています。No.5350が根拠として挙げているのは、法人税法施行令72条の3と法人税基本通達9-2-43から44です。
よくある質問
従業員への賞与はいつの事業年度の損金になりますか
従業員への賞与は、原則として実際に支払った日の属する事業年度の損金です。国税庁のタックスアンサーNo.5350は、使用人に支給する賞与を3つに区分し、それぞれ損金に算入する事業年度を定めています。そのうち3番目の「上記1および2に掲げる賞与以外の賞与」は、その支払をした日の属する事業年度の損金とされています。→ 本文で読む
未払いの決算賞与を今期の損金にする要件は何ですか
期末時点で未払いの賞与を今期の損金にする要件は3つで、No.5350はそのすべてを満たす賞与について、使用人にその支給額の通知をした日の属する事業年度の損金としています。 1つめは 通知 です。「賞与を出す」と全体に伝えるだけでは足りません。各人別に金額を、同時期に支給を受けるすべての使用人へ通知します。期末までに、一人ひとりに金額を示した書面を渡すのが確実です。→ 本文で読む
支給日に在籍する人にだけ賞与を払う規程があると何が問題ですか
通知の要件には落とし穴があります。No.5350の注1は、法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知は、ここでいう「通知」には該当しない、としています。→ 本文で読む
パートに決算賞与を出さなくても正社員分は損金にできますか
「同時期に支給を受けるすべての使用人」に通知するといっても、正社員とパートで賞与の扱いを分けている会社があります。No.5350の注2は、パートタイマーまたは臨時雇い等の身分で雇用している者(雇用関係が継続的なものであって、他の使用人と同様に賞与の支給の対象としている者を除きます。)とその他の使用人を区分している場合には、その区分ごとに支給額の通知を行ったかどうかを判定することができる、としています。→ 本文で読む
就業規則で支給日が決まっている賞与はいつの損金ですか
夏と冬の賞与のように、労働協約や就業規則で支給予定日が定められている賞与は、1番目の区分です。No.5350は、支給予定日が到来している賞与(使用人にその支給額が通知されているもので、かつ、その支給予定日またはその通知をした日の属する事業年度においてその支給額につき損金経理したものに限ります。)について、その支給予定日またはその通知をした日のいずれか遅い日の属する事業年度の損金としています。→ 本文で読む
ひとり会社の社長に決算賞与を出して損金にできますか
No.5350は、使用人に対して支給する賞与の額には、使用人兼務役員に対して支給する賞与のうち使用人としての職務に対応する部分の金額が含まれる、としています。使用人兼務役員の賞与は、使用人部分だけがこの記事の対象で、役員部分は役員給与の扱いです。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.5350 使用人賞与の損金算入時期」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5350.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
決算賞与は、期末までの通知と支払いの日付を残してください。
未払いの決算賞与を今期の損金にするには、通知・支払期限・損金経理の3つを満たしている証拠が要ります。通知書の控えと日付、振込の記録があれば、あとから確かめられます。金額を決める前に、今期の着地と資金の両方を見ておくと安心です。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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