経費
貸倒引当金の設定。
中小法人は売掛金に法定繰入率(卸売・小売は1,000分の10)をかけて損金にできます
売掛金を抱えたまま決算を迎えると、「回収できないかもしれない分を、あらかじめ経費にできないか」と考えることがあります。それが貸倒引当金です。
答えを先に書くと、資本金1億円以下の中小法人は、期末の売掛金などの帳簿価額に業種別の法定繰入率をかけた金額まで、貸倒引当金として損金にできます。卸売・小売なら1,000分の10、その他の事業なら1,000分の6です。実際に貸倒れが起きていなくても使えます。
国税庁のタックスアンサーNo.5501は、この繰入限度額の計算を、原則の貸倒実績率と中小法人向けの法定繰入率の2つで示しています。対象になる債権の範囲はNo.5500にあります。順に確認していきます。
この記事の要点
貸倒引当金は、期末の売掛金や貸付金などの帳簿価額に繰入率をかけた繰入限度額まで損金にできます。原則は過去3年間の貸倒損失に基づく貸倒実績率ですが、資本金1億円以下の中小法人は法定繰入率を使えます。卸売業・小売業(飲食店業を含む)は1,000分の10、製造業は1,000分の8、その他の事業は1,000分の6です。繰り入れられる法人は中小法人など一定の法人に限られます。国税庁タックスアンサーNo.5501とNo.5500をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
貸倒引当金のしくみ。個別評価と一括評価
貸倒引当金は、売掛金などが将来回収できなくなることを見込んで、あらかじめ費用として計上するものです。国税庁のタックスアンサーNo.5501は、貸倒引当金の繰入限度額は個別評価金銭債権と一括評価金銭債権とに区分して計算することとされている、としています。
個別評価は、相手先が倒産したなど、回収に問題が生じている債権を1件ずつ見る方法です。一括評価は、それ以外の債権をまとめて、全体に一定の率をかける方法です。この記事で扱うのは一括評価のほうで、特に問題のない売掛金にも使えるのが特徴です。
法人税では、繰入限度額まで損金にできます。限度額を超えて引き当てた分は損金になりません。逆に、限度額まで引き当てるかどうかは会社の判断で、必ず引き当てる義務はありません。
対象になる債権。売掛金・貸付金・未収金
一括評価金銭債権とは、No.5500によれば、売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権で、個別評価金銭債権を除いたものです。No.5500は当たるものと当たらないものを具体的に挙げています。
| 一括評価金銭債権に当たるもの | 当たらないもの |
|---|---|
| 売掛金、貸付金 | 預貯金およびその未収利子、未収配当 |
| 未収の譲渡代金、未収加工料、未収請負金、未収手数料、未収保管料、未収地代家賃等で益金の額に算入されたもの | 保証金、敷金、預け金 |
| 他人のために立替払をした場合の立替金 | 手付金、前渡金等のように資産の取得の代価または費用の支出に充てるものとして支出した金額 |
| 未収の損害賠償金で益金の額に算入されたもの | 前払給料、概算払旅費、前渡交際費等のように将来精算される費用の前払として一時的に仮払金、立替金等として経理されている金額 |
| 保証債務を履行した場合の求償権 | 仕入割戻しの未収金 |
小さな会社で残高があるのは、売掛金、未収の請負金や手数料、社長や関係会社への貸付金あたりです。これらは対象になります。一方、事務所の敷金や保証金、仕入先への前渡金、従業員への仮払金は対象になりません。「相手に対して払ってもらう権利」でも、売上や貸付けから生じたものかどうかで分かれます。
繰り入れられる法人は限られる。中小法人が中心
貸倒引当金は、どの会社でも使えるわけではありません。No.5501は、貸倒引当金を繰り入れることのできる適用法人は次の法人に限定されている、として5つを挙げています。
その1番目が、普通法人(投資法人および特定目的会社を除きます。)のうち、各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの(大法人との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人などおよび大通算法人を除きます。)または資本もしくは出資を有しないもの(大通算法人を除きます。)です。ここでいう大法人とは、資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人、相互会社および外国相互会社、受託法人です。
ほかに、公益法人等または協同組合等、人格のない社団等、銀行、保険会社その他これらに準ずる法人、金融に関する取引に係る金銭債権を有する一定の法人が挙げられています。資本金1億円以下で大法人の子会社でない会社は、この1番目に入ります。中小法人の範囲は中小法人と中小企業者の範囲で整理しています。
原則は貸倒実績率。過去3年間の貸倒損失から計算
繰入限度額の計算の原則は、実績に基づく方法です。No.5501は次のように示しています。
国税庁 タックスアンサー No.5501「一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定」
貸倒引当金の設定対象事業年度末の一括評価金銭債権の帳簿価額に、過去3年間の貸倒損失発生額に基づく実績繰入率を乗じて計算します。
繰入限度額 = 期末一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額 × 貸倒実績率
過去3年間に実際にどれだけ貸倒れが出たかを、その間の債権残高と比べて率にします。No.5501の注によれば、貸倒実績率は小数点以下4位未満を切り上げて計算し、算式中の月数は暦に従って計算し、1か月に満たない端数が生じたときはこれを1か月とします。
過去3年間に貸倒れが1件もなければ、貸倒実績率はゼロで、この方法では引き当てられません。小さな会社ではこの状態が普通です。そこで次の法定繰入率が意味を持ちます。
中小法人は法定繰入率が使える。業種別の率
中小法人は、貸倒実績率に代えて法定繰入率で繰入限度額を計算できます。No.5501は、中小法人、公益法人等または協同組合等、人格のない社団等について、実績繰入率に基づく計算に代えて法定繰入率による計算が認められている、としています。ここでいう中小法人は、前の節の1番目の法人で、適用除外事業者(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等)は除かれます。
| 事業の区分 | 法定繰入率 |
|---|---|
| 卸売業および小売業(飲食店業および料理店業を含み、割賦販売小売業を除く) | 1,000分の10 |
| 製造業(電気業、ガス業、熱供給業、水道業および修理業を含む) | 1,000分の8 |
| 金融業および保険業 | 1,000分の3 |
| 割賦販売小売業ならびに包括信用購入あっせん業および個別信用購入あっせん業 | 1,000分の7 |
| その他の事業 | 1,000分の6 |
飲食店は卸売業・小売業の区分に含まれるので1,000分の10です。ITやコンサルティング、建設、サービス業などは「その他の事業」で1,000分の6です。No.5501の注には、割賦販売小売業等の1,000分の7について、令和3年4月1日前に開始する事業年度分については1,000分の13が適用される、とあります。
法定繰入率は、実際の貸倒れがなくても使えます。過去に貸倒れがゼロの会社でも、期末の売掛金の1,000分の6や1,000分の10を損金にできるのが、この特例の値打ちです。
小さな会社での使い方と注意点
使い方は、期末の一括評価金銭債権の帳簿価額を合計し、自社の業種の法定繰入率をかけるだけです。売掛金のほか、未収金や貸付金のうち対象になるものを漏れなく集め、敷金や前渡金など対象にならないものを外します。
注意点は3つあります。1つめは、翌期に戻し入れることです。貸倒引当金は費用の前倒しで、翌期には前期に繰り入れた額を収益(戻入)に計上し、改めて期末残高で繰り入れます。永久に税金が減るのではなく、時期がずれる効果です。2つめは、繰入限度額を超えた分は損金にならないことです。3つめは、社長への貸付金も金銭債権として対象になりますが、貸付けそのものが妥当かどうかは別に問われることです。
売掛金が少ないひとり会社では金額は大きくなりませんが、請負や卸で期末残高が積み上がる会社では、赤字と黒字の境目を動かす程度の効果はあります。赤字になった期の制度は欠損金の繰戻し還付で扱っています。No.5501が根拠として挙げているのは、法人税法52条・66条、法人税法施行令96条、租税特別措置法57条の9、租税特別措置法施行令33条の7、法人税基本通達11-2-16から18・20です。
よくある質問
貸倒引当金とは何ですか
貸倒引当金は、売掛金などが将来回収できなくなることを見込んで、あらかじめ費用として計上するものです。国税庁のタックスアンサーNo.5501は、貸倒引当金の繰入限度額は個別評価金銭債権と一括評価金銭債権とに区分して計算することとされている、としています。→ 本文で読む
貸倒引当金の対象になる債権は何ですか
一括評価金銭債権とは、No.5500によれば、売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権で、個別評価金銭債権を除いたものです。No.5500は当たるものと当たらないものを具体的に挙げています。→ 本文で読む
どの会社でも貸倒引当金を損金にできますか
貸倒引当金は、どの会社でも使えるわけではありません。No.5501は、貸倒引当金を繰り入れることのできる適用法人は次の法人に限定されている、として5つを挙げています。 その1番目が、普通法人(投資法人および特定目的会社を除きます。)のうち、各事業年度終了の時において 資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの (大法人との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人などおよび大通算法人を除きます。)または資本もしくは出資を有しないもの(大通算法人を除きます。)です。ここでいう大法人とは、資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人、相互会社および外国相互会社、受託法人です。→ 本文で読む
過去に貸倒れがない会社は貸倒引当金を設定できますか
繰入限度額の計算の原則は、実績に基づく方法です。No.5501は次のように示しています。 過去3年間に実際にどれだけ貸倒れが出たかを、その間の債権残高と比べて率にします。No.5501の注によれば、貸倒実績率は小数点以下4位未満を切り上げて計算し、算式中の月数は暦に従って計算し、1か月に満たない端数が生じたときはこれを1か月とします。→ 本文で読む
法定繰入率は業種でどう違いますか
中小法人は、貸倒実績率に代えて法定繰入率で繰入限度額を計算できます。No.5501は、中小法人、公益法人等または協同組合等、人格のない社団等について、実績繰入率に基づく計算に代えて法定繰入率による計算が認められている、としています。ここでいう中小法人は、前の節の1番目の法人で、適用除外事業者(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等)は除かれます。→ 本文で読む
貸倒引当金を使うときの注意点は何ですか
使い方は、期末の一括評価金銭債権の帳簿価額を合計し、自社の業種の法定繰入率をかけるだけです。売掛金のほか、未収金や貸付金のうち対象になるものを漏れなく集め、敷金や前渡金など対象にならないものを外します。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.5501 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5501.htm - 国税庁「No.5500 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の対象となる金銭債権の範囲」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5500.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
期末の売掛金の一覧があれば、貸倒引当金の限度額はすぐ計算できます。
貸倒引当金は、売掛金や貸付金が残っている会社なら、実際の貸倒れがなくても使える損金です。ただし対象になる債権と、ならない債権の仕分けが要ります。期末の残高一覧をお持ちいただければ、法定繰入率でいくらまで繰り入れられるかを確かめられます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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