法人
中小法人・中小企業者の範囲。
資本金1億円以下でも、大法人の子会社や所得15億円超は外れます
税金の説明を読むと、「中小法人は」「中小企業者等は」という言葉がたびたび出てきます。資本金の小さいひとり会社が当てはまるのは想像がつきますが、正確にはどこまでが中小なのでしょうか。
答えを先に書くと、入口は資本金の額または出資金の額が1億円以下です。ただし、大法人の完全子会社や、所得が年平均15億円を超える会社などは、資本金が小さくても外れます。制度ごとに範囲の書き方が少しずつ違います。
国税庁のタックスアンサーNo.5432は、令和7年4月1日以後に開始する事業年度における措置法上の中小法人・中小企業者の範囲を制度別に整理しています。ひとり会社や小さな会社であれば、まず全部に当てはまります。ただ、どこで外れるのかを知っておくと、増資や資本提携を考えるときに役立ちます。
この記事の要点
法人税の軽減税率、交際費の定額控除、貸倒引当金、欠損金の繰戻し還付、少額減価償却資産の特例など、中小企業向けの制度の入口は「資本金の額または出資金の額が1億円以下」です。ただし資本金5億円以上の大法人と完全支配関係がある会社、過去3年の平均所得が15億円を超える適用除外事業者などは外れます。中小企業者では、大規模法人に株式の2分の1以上を持たれている会社も外れます。国税庁タックスアンサーNo.5432とNo.5759をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
入口は資本金1億円以下。制度によって呼び方が違う
中小法人・中小企業者の入口は、資本金の額または出資金の額が1億円以下であることです。国税庁のタックスアンサーNo.5432は、令和7年4月1日以後に開始する事業年度における措置法上の各制度の中小法人および中小企業者の範囲を、制度ごとに示しています。
「中小法人」と「中小企業者」は似た言葉ですが、No.5432では制度ごとに使い分けられています。法人税率の特例、貸倒引当金の特例、交際費等の中小特例、欠損金の繰戻し還付では中小法人、研究開発税制や少額減価償却資産の特例、中小企業投資促進税制では中小企業者です。どちらも資本金1億円以下が入口ですが、外れる会社の書き方が違います。順に見ていきます。
法人税率の特例の中小法人。年800万円以下の部分に軽減税率
いちばん身近なのが法人税率です。No.5432は、中小企業者等の法人税率の特例の対象となる中小法人を、普通法人のうち、各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるものまたは資本もしくは出資を有しないもので、一定の法人を除いたもの、としています。
その税率はNo.5759にあります。普通法人のうち資本金1億円以下の法人などは、令和7年4月1日以後に開始する事業年度において、年800万円以下の部分が15%、年800万円超の部分が23.20%です。上記以外の普通法人は所得の全体に23.20%がかかりますから、年800万円以下の部分に軽減があるのが中小法人の恩恵です。
| 区分 | 年800万円以下の部分 | 年800万円超の部分 |
|---|---|---|
| 資本金1億円以下の法人など(中小法人) | 15% | 23.20% |
| 上記のうち適用除外事業者 | 19% | 23.20% |
| 上記以外の普通法人 | 23.20% | |
No.5759の注7には、令和7年4月1日以後に開始する事業年度において、所得金額が年10億円を超える事業年度については、年800万円以下の部分に適用される税率は17%となる、ともあります。小さな会社にはまず関係のない注記ですが、軽減税率は「小さい会社のため」という趣旨で設計されていることが分かります。法人と個人の税率の比較はいくらから法人にすべきかで扱っています。
資本金が小さくても外れる会社。大法人の子会社と適用除外事業者
資本金1億円以下でも中小法人から外れる会社があります。No.5432が法人税率の特例について挙げているのは、相互会社、大法人との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人、投資法人、特定目的会社、受託法人などです。
ここでいう大法人とは、資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人、相互会社および外国相互会社、受託法人です。資本金5億円以上の会社に株式を100%持たれている子会社は、自分の資本金が小さくても中小法人ではありません。親会社の規模で判定されるということです。
もうひとつが適用除外事業者です。No.5432の注1は次のように定義しています。
国税庁 タックスアンサー No.5432「措置法上の中小法人及び中小企業者」
適用除外事業者とは、基準年度(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度をいいます。以下同じです。)の所得金額の合計額を各基準年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算した金額(設立後3年を経過していないことなどの一定の事由がある場合には、一定の調整を加えた金額)が15億円を超える法人をいいます。
過去3年の所得の年平均が15億円を超える会社は、資本金を小さくしていても中小法人の特例から外れます。資本金の大きさではなく、実際の稼ぐ力で見る基準です。
中小企業者の範囲。大規模法人に2分の1以上持たれていると外れる
少額減価償却資産の特例や研究開発税制で使われる「中小企業者」は、資本金1億円以下という入口は同じですが、外れる会社の基準が株式の持たれ方で決まります。No.5432は、次の法人を中小企業者から除いています。
| 中小企業者から除かれる法人 | |
|---|---|
| (1) | 発行済株式または出資の総数または総額の2分の1以上を同一の大規模法人に所有されている法人 |
| (2) | 発行済株式または出資の総数または総額の3分の2以上を複数の大規模法人に所有されている法人 |
ここでいう大規模法人は、No.5432の注3によれば、資本金の額または出資金の額が1億円を超える法人、資本または出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人、大法人との間に完全支配関係がある普通法人などで、中小企業投資育成株式会社は除かれます。
大法人の基準は資本金5億円以上でしたが、大規模法人は資本金1億円超です。資本金1億円超の会社に株式の半分以上を持たれると、自社が資本金1億円以下でも中小企業者から外れます。取引先の出資を受けるときに見落としやすい点です。なお、資本または出資を有しない法人は、常時使用する従業員の数が1,000人以下であれば中小企業者に入ります。
中小法人向けの主な制度
No.5432が範囲を示している制度を並べると、中小法人・中小企業者であることで何が使えるのかが見えてきます。
| 制度 | No.5432での呼び方 |
|---|---|
| 中小企業者等の法人税率の特例 | 中小法人 |
| 中小企業者等の貸倒引当金の特例 | 中小法人 |
| 交際費等の損金不算入制度の中小特例 | 中小法人 |
| 欠損金の繰戻しによる還付(不適用制度の除外) | 中小企業者 |
| 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例 | 中小企業者 |
| 給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度 | 中小企業者 |
| 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度 | 中小企業者 |
交際費等の中小特例は、No.5265によれば、期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下である等の法人について、交際費等の額のうち800万円にその事業年度の月数を乗じ、これを12で除して計算した金額(定額控除限度額)を超える部分が損金不算入になる、というものです。年800万円まで交際費等を損金にできるのは中小法人だけです。
No.5432によれば、交際費等の中小特例の中小法人は、各事業年度終了の「日」において資本金の額または出資金の額が1億円以下であるものとされ、法人税率の特例とは違い、適用除外事業者を除く定めはありません。同じ「中小法人」でも、制度ごとに細かい違いがあります。少額減価償却資産は少額減価償却資産、欠損金の繰戻し還付は欠損金の繰戻し還付、貸倒引当金は貸倒引当金の設定でそれぞれ扱っています。
ひとり会社・小さな会社の位置づけ
ひとり会社や売上の小さな会社は、資本金1億円以下で、大法人の子会社でもなく、所得が年平均15億円を超えることもありません。No.5432のどの制度でも中小法人・中小企業者に入ります。軽減税率、交際費の定額控除、少額減価償却資産の特例、欠損金の繰戻し還付は、すべて使える立場です。
気をつけるのは、会社の形が変わるときです。他社の出資を受けて大規模法人に株式の2分の1以上を持たれる、資本金5億円以上の会社の完全子会社になる、といった場面で、中小の枠から外れます。増資や資本提携の話が出たときは、資本金の額だけでなく、誰がどれだけ株式を持つことになるかを、この記事の基準に当ててみてください。No.5432が根拠として挙げているのは、租税特別措置法42条の3の2、42条の4、42条の6、57条の9、61条の4、66条の12、67条の5などです。
よくある質問
中小法人と中小企業者はどう違いますか
中小法人・中小企業者の入口は、資本金の額または出資金の額が1億円以下であることです。国税庁のタックスアンサーNo.5432は、令和7年4月1日以後に開始する事業年度における措置法上の各制度の中小法人および中小企業者の範囲を、制度ごとに示しています。→ 本文で読む
中小法人の法人税率はいくらですか
いちばん身近なのが法人税率です。No.5432は、中小企業者等の法人税率の特例の対象となる中小法人を、普通法人のうち、各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるものまたは資本もしくは出資を有しないもので、一定の法人を除いたもの、としています。→ 本文で読む
資本金1億円以下でも中小法人にならない会社はありますか
資本金1億円以下でも中小法人から外れる会社があります。No.5432が法人税率の特例について挙げているのは、相互会社、大法人との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人、投資法人、特定目的会社、受託法人などです。→ 本文で読む
大きな会社に出資してもらうと中小企業者から外れますか
少額減価償却資産の特例や研究開発税制で使われる「中小企業者」は、資本金1億円以下という入口は同じですが、外れる会社の基準が株式の持たれ方で決まります。No.5432は、次の法人を中小企業者から除いています。→ 本文で読む
中小法人になると使える制度は何ですか
No.5432が範囲を示している制度を並べると、中小法人・中小企業者であることで何が使えるのかが見えてきます。 交際費等の中小特例は、No.5265によれば、期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下である等の法人について、交際費等の額のうち800万円にその事業年度の月数を乗じ、これを12で除して計算した金額(定額控除限度額)を超える部分が損金不算入になる、というものです。 年800万円まで交際費等を損金にできる のは中小法人だけです。→ 本文で読む
ひとり会社は中小法人に入りますか
ひとり会社や売上の小さな会社は、資本金1億円以下で、大法人の子会社でもなく、所得が年平均15億円を超えることもありません。 No.5432のどの制度でも中小法人・中小企業者に入ります。 軽減税率、交際費の定額控除、少額減価償却資産の特例、欠損金の繰戻し還付は、すべて使える立場です。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.5432 措置法上の中小法人及び中小企業者」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5432.htm - 国税庁「No.5759 法人税の税率」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm - 国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
資本金を増やすとき、他社の出資を受けるときは、中小の枠を確かめてください。
資本金1億円以下という入口はゆるやかですが、大法人の完全子会社になったり、大規模法人に株式の半分以上を持たれたりすると、軽減税率や少額減価償却資産の特例などがまとめて使えなくなります。会社の形を変える前に、どの制度に影響するかを一緒に確かめます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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