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欠損金の繰戻し還付。
赤字の期に、前期に納めた法人税を取り戻す。資本金1億円以下の青色申告法人が使えます

前の期は黒字で法人税を納めたのに、今期は赤字。「去年払った税金は戻ってこないのか」と思う経営者は多いはずです。

答えを先に書くと、資本金1億円以下の青色申告法人なら、今期の赤字を前期に繰り戻して、前期に納めた法人税の還付を請求できます。これが欠損金の繰戻しによる還付です。赤字を翌期以降に持ち越す繰越控除とは逆向きの制度です。

ただし、確定申告書と同時に還付請求書を出すこと、青色申告を続けていること、期限内に申告することが条件です。国税庁のタックスアンサーNo.5763で、使える会社・要件・手続を確認していきます。

公開 最終更新

この記事の要点

青色申告の法人に欠損金額(赤字)が生じたとき、その欠損金額を欠損事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度に繰り戻し、納めた法人税の還付を請求できます。使えるのは資本金1億円以下の中小企業者等が中心です。要件は、還付所得事業年度から連続して青色申告をしていること、欠損事業年度の申告書を期限内に提出すること、その申告書と同時に還付請求書を提出することです。解散や災害の場合の特例もあります。国税庁タックスアンサーNo.5763をもとに整理しました。

先に見ておくと分かりやすいもの

しくみ。赤字を前期に繰り戻して法人税の還付を請求する

欠損金の繰戻し還付は、今期の赤字を前期の黒字にぶつけて、前期に納めた法人税を返してもらう制度です。国税庁のタックスアンサーNo.5763は次のように示しています。

国税庁 タックスアンサー No.5763「欠損金の繰戻しによる還付」

青色申告書である確定申告書を提出する事業年度に欠損金額が生じた場合(以下、この事業年度を「欠損事業年度」といいます。)において、その欠損金額をその欠損事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度(以下「還付所得事業年度」といいます。)に繰り戻して法人税額の還付を請求することができます。

言葉を整理します。欠損事業年度は赤字が出た今期、還付所得事業年度は繰り戻す先の期です。繰り戻せるのは、欠損事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度ですから、1年決算の会社なら前期です。前期に黒字で法人税を納めていなければ、戻す税金がないので使えません。

還付金額は、No.5763によれば、還付所得事業年度の法人税額に、その期の所得金額のうち繰り戻す欠損金額が占める割合をかけて求めます。繰り戻す欠損金額は、法人が還付請求書に記載した金額が限度となり、分母の金額(還付所得事業年度の所得金額)も限度になります。前期の所得を超える赤字を繰り戻しても、前期の法人税の全額までしか戻りません。

使える会社。中小企業者等の青色申告法人

この制度は、いま中小企業者等に限って使えます。No.5763は、中小企業者等以外の法人の平成4年4月1日から令和8年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額については適用しない、としています。大きな会社では長く停止されている制度で、中小企業者等だけが通常の赤字で使えるということです。

中小企業者等の1番目は、普通法人(投資法人、特定目的会社および受託法人を除きます。)のうち、その事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるものまたは資本もしくは出資を有しないものです。ただし、資本金5億円以上の大法人との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人、大通算法人、相互会社などは除かれます。

中小企業者等(No.5763)
1資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下の普通法人など(大法人の完全子会社、大通算法人、相互会社などを除く)
2公益法人等または協同組合等
3法人税法以外の法律によって公益法人等とみなされる法人(認可地縁団体、管理組合法人、特定非営利活動法人など)
4人格のない社団等

ひとり会社や小さな会社は、資本金1億円以下の普通法人ですから、1番目に入ります。加えて、青色申告書を提出する法人であることが前提です。中小企業者等の範囲は中小法人と中小企業者の範囲で整理しています。

3つの要件。連続青色・期限内申告・同時提出

使える会社であっても、手続の要件をすべて満たさないと還付は受けられません。No.5763は、青色申告書を提出する法人の欠損金の繰戻しによる還付について、次の3つを挙げています。

国税庁 タックスアンサー No.5763「欠損金の繰戻しによる還付」

(1) 還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までの各事業年度について連続して青色申告書である確定申告書を提出していること。
(2) 欠損事業年度の青色申告書である確定申告書をその提出期限までに提出していること。
(3) 上記(2)の確定申告書と同時に欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出すること。

1つめは青色申告の連続です。繰り戻す先の期から今期の前の期まで、ずっと青色で申告していることが必要です。2つめは期限内申告です。赤字の期の申告が期限後になると、この制度は使えません。3つめは同時提出です。確定申告書と一緒に「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を出します。

申告してしまってから「還付請求書を出し忘れた」では間に合いません。赤字の決算になりそうな期は、申告書を作る段階で繰戻し還付を使うかどうかを決めておく必要があります。青色申告の承認申請は会社を作ったら出す届出で扱っています。

解散など特別な事実が生じたとき

会社を閉じるときにも、この制度が使えます。No.5763は、解散(適格合併による解散を除きます。)、事業の全部の譲渡、会社更生法等の規定による更生手続の開始など一定の事実(解散等の事実)が生じた場合で、解散等の事実が生じた日前1年以内に終了したいずれかの事業年度または解散等の事実が生じた日の属する事業年度において生じた欠損金額があるときは、同様に欠損金額を繰り戻して法人税の還付を請求できる、としています。

この場合の要件は、還付所得事業年度から欠損事業年度までの各事業年度について連続して青色申告書である確定申告書を提出していることと、解散等の事実が生じた日以後1年以内に欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出することです。通常の場合と違い、確定申告書との同時提出ではなく、1年以内という期限で区切られています。

なお、中小企業者等以外の法人であっても、清算中に終了する各事業年度の欠損金額や解散等の事実が生じた場合の欠損金額については、この制度を適用できるとされています。会社をたたむ局面では、規模の大きな会社にも道が開かれているということです。

災害による欠損金の特例。白色でも使える

災害で損失が出た場合には、別の特例があります。No.5763は、災害のあった日から同日以後1年を経過する日までの間に終了する各事業年度または災害のあった日から同日以後6か月を経過する日までの間に終了する中間期間において生じた災害損失欠損金額がある場合には、その事業年度または中間期間開始の日前1年(青色申告である場合には、前2年)以内に開始したいずれかの事業年度の法人税額のうち災害損失欠損金額に対応する部分の金額について還付を請求できる、としています。

ここでいう災害は、No.5763の注1によれば、震災、風水害、火災、冷害、雪害、干害、落雷、噴火その他の自然現象の異変による災害および鉱害、火薬類の爆発その他の人為による異常な災害ならびに害虫、害獣その他の生物による異常な災害です。災害損失欠損金額は、欠損金額のうち、災害により棚卸資産、固定資産または一定の繰延資産について生じた損失の額(保険金、損害賠償金等により補てんされるものを除きます。)に達するまでの金額です。

この特例の要件は、還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までの各事業年度について連続して確定申告書を提出していること、欠損事業年度の確定申告書または仮決算による中間申告書を提出していること、それと同時に還付請求書を提出することです。「青色申告書である」という限定がなく、白色申告の法人でも使えます。青色なら繰り戻せる期間が前2年に延びます。

小さな会社での使い方。繰越控除との選び方

赤字が出たとき、会社には2つの道があります。1つは繰戻し還付で前期の法人税を取り戻す道、もう1つは赤字を翌期以降に持ち越して将来の黒字と相殺する道(欠損金の繰越控除)です。同じ赤字を両方に使うことはできません。繰り戻した分は繰り越せず、繰り越した分は繰り戻せません。

どちらを選ぶかは、資金と将来の見通しで決めます。いま現金が要るなら繰戻し還付、来期以降に大きな黒字が見込めるなら繰越控除のほうが有利になることもあります。ただし、繰戻し還付で戻るのは法人税だけで、地方税には同じ制度がない点も考慮に入れてください。

実務上の順番は、決算で欠損金額を確定させ、前期の法人税額と所得金額を確かめ、還付請求書を作って確定申告書と同時に提出する、という流れです。No.5763が根拠として挙げているのは、法人税法66条・80条、法人税法施行令155条の2、租税特別措置法66条の12、法人税基本通達17-2-1から17-2-8などです。赤字と黒字の境目で使える損金には貸倒引当金の設定もあります。

よくある質問

欠損金の繰戻し還付とはどのような制度ですか

欠損金の繰戻し還付は、今期の赤字を前期の黒字にぶつけて、前期に納めた法人税を返してもらう制度です。国税庁のタックスアンサーNo.5763は次のように示しています。 言葉を整理します。 欠損事業年度 は赤字が出た今期、 還付所得事業年度 は繰り戻す先の期です。繰り戻せるのは、欠損事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度ですから、 1年決算の会社なら前期です。 前期に黒字で法人税を納めていなければ、戻す税金がないので使えません。→ 本文で読む

欠損金の繰戻し還付はどの会社が使えますか

この制度は、いま中小企業者等に限って使えます。No.5763は、中小企業者等以外の法人の平成4年4月1日から令和8年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額については適用しない、としています。大きな会社では長く停止されている制度で、 中小企業者等だけが通常の赤字で使える ということです。→ 本文で読む

欠損金の繰戻し還付を受ける要件は何ですか

使える会社であっても、手続の要件をすべて満たさないと還付は受けられません。No.5763は、青色申告書を提出する法人の欠損金の繰戻しによる還付について、次の3つを挙げています。 1つめは 青色申告の連続 です。繰り戻す先の期から今期の前の期まで、ずっと青色で申告していることが必要です。2つめは 期限内申告 です。赤字の期の申告が期限後になると、この制度は使えません。3つめは 同時提出 です。確定申告書と一緒に「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を出します。→ 本文で読む

会社を解散するときも繰戻し還付は使えますか

会社を閉じるときにも、この制度が使えます。No.5763は、解散(適格合併による解散を除きます。)、事業の全部の譲渡、会社更生法等の規定による更生手続の開始など一定の事実(解散等の事実)が生じた場合で、解散等の事実が生じた日前1年以内に終了したいずれかの事業年度または解散等の事実が生じた日の属する事業年度において生じた欠損金額があるときは、同様に欠損金額を繰り戻して法人税の還付を請求できる、としています。→ 本文で読む

白色申告の法人でも繰戻し還付を受けられる場合はありますか

災害で損失が出た場合には、別の特例があります。No.5763は、災害のあった日から同日以後1年を経過する日までの間に終了する各事業年度または災害のあった日から同日以後6か月を経過する日までの間に終了する中間期間において生じた災害損失欠損金額がある場合には、その事業年度または中間期間開始の日前1年(青色申告である場合には、前2年)以内に開始したいずれかの事業年度の法人税額のうち災害損失欠損金額に対応する部分の金額について還付を請求できる、としています。→ 本文で読む

繰戻し還付と繰越控除はどちらを選ぶべきですか

赤字が出たとき、会社には2つの道があります。1つは繰戻し還付で前期の法人税を取り戻す道、もう1つは赤字を翌期以降に持ち越して将来の黒字と相殺する道(欠損金の繰越控除)です。 同じ赤字を両方に使うことはできません。 繰り戻した分は繰り越せず、繰り越した分は繰り戻せません。→ 本文で読む

出典

  1. 国税庁「No.5763 欠損金の繰戻しによる還付」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5763.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

赤字の決算になりそうなら、申告期限の前にご相談ください。

欠損金の繰戻し還付は、確定申告書と同時に還付請求書を出さないと使えません。期限を過ぎてからでは間に合いません。前期に法人税を納めていて、今期が赤字の見込みなら、いくら戻るかを申告前に確かめます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。