不動産
自宅を貸し始めたときの減価償却。
住んでいた期間の減価の額を耐用年数1.5倍の旧定額法で計算し、取得価額から引きます
転勤で自宅を貸す、実家を相続して賃貸に出す、自家用車を事業に使い始める。もともと自分で使っていた物を、収入を生む用途に回すことがあります。
このとき困るのが減価償却です。買ったときの値段をそのまま使うわけにはいきません。答えを先に書くと、住んでいた期間の「減価の額」を、法定耐用年数の1.5倍の年数で旧定額法により計算し、取得価額から引いた残りを出発点にします。
国税庁のタックスアンサーNo.2109は、この計算を2段階で示しています。未償却残高の出し方と、その後の償却方法の選び方を順に確認していきます。
この記事の要点
自宅や自家用車など業務に使っていなかった資産(非業務用資産)を貸付けや事業に使い始めたときの減価償却は、まず非業務用として使っていた期間の「減価の額」を、法定耐用年数の1.5倍の年数で旧定額法により計算し、取得価額から差し引いて業務に使い始めた日の未償却残高を出します。そのうえで、資産の取得年月日に応じた償却方法で業務開始後の減価償却費を計算します。国税庁タックスアンサーNo.2109をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
転用したときの減価償却は2段階で計算する
家屋や自動車のように使用や期間の経過により減価する資産で、不動産所得・事業所得・山林所得・雑所得を生ずべき業務の用に供していなかったもの(非業務用資産)を業務の用に供した場合の減価償却費は、2段階で計算します。まず非業務用として使っていた期間の「減価の額」を求めて未償却残高を出し、次にその未償却残高または取得価額を基礎に業務開始後の減価償却費を計算します。
国税庁 タックスアンサー No.2109「新築家屋等を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却」
まず、非業務用資産として使用していた期間における「減価の額」の計算を行い、この「減価の額」をその資産の取得価額から控除した金額をその業務の用に供した日におけるその資産の未償却残高とします。
自宅として住んでいた間も、建物の価値は減っています。その減った分を先に取得価額から引いておかないと、貸し始めてからの減価償却費が過大になるという考え方です。住んでいた期間の減価は経費にはなりませんが、計算のうえでは差し引きます。
業務に使い始めた日の未償却残高の計算
業務の用に供した日における未償却残高は、その資産の取得価額から、業務の用に供されていなかった期間について、法定耐用年数(新品の耐用年数)の1.5倍に相当する年数で旧定額法に準じて計算した減価の額を控除した金額です。取得価額に、1.5倍の年数による旧定額法の年間の減価の額を求め、それに非業務用だった期間の年数を乗じた金額を差し引きます。
| 業務の用に供した日における未償却残高(No.2109の計算式) | ||
|---|---|---|
| その資産の取得価額 | - | 業務の用に供されていなかった期間につき、その資産の法定耐用年数の1.5倍に相当する年数で、旧定額法に準じて計算した減価の額 |
ポイントは「法定耐用年数の1.5倍」です。自宅として使っている間は、事業用より傷みが少ないと見て、耐用年数を1.5倍に延ばしてゆっくり減価させます。その分、貸し始めた時点の未償却残高は大きく残り、貸し始めてからの減価償却費に回せる金額が多くなります。使う耐用年数は「新品の耐用年数」で、中古で買った場合の見積もりとは別の話です。中古物件の耐用年数は中古マンション・アパートの耐用年数で整理しています。
期間と年数の端数の扱い。6か月以上は1年
業務の用に供されていなかった期間に係る年数に1年未満の端数があるときは、6か月以上の端数は1年とし、6か月に満たない端数は切り捨てます。1.5倍に相当する年数に1年未満の端数があるときは、1年未満の端数は切り捨てます。
2つの端数処理があります。ひとつは住んでいた期間の年数で、6か月以上なら1年に繰り上げ、6か月未満なら切り捨てです。もうひとつは1.5倍した耐用年数で、こちらは1年未満を常に切り捨てます。同じ「1年未満の端数」でも、扱いが違うので、計算のときに混ぜないでください。
たとえば住んでいた期間の端数が6か月ちょうどなら1年と数え、耐用年数を1.5倍して端数が出れば切り捨てて整数の年数にします。この年数で旧定額法の減価の額を求めます。
減価の額は旧定額法で計算する。償却累積額の特例は使わない
非業務用資産の減価の額の計算は、旧定額法によります。No.2109の注記は、この計算においては、所得税法施行令第134条第2項(減価償却費の償却累積額による償却費の特例)の適用はない、としています。資産を取得したのがいつであっても、非業務用の期間の減価の額は旧定額法で計算します。
国税庁 タックスアンサー No.2109「新築家屋等を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却」
(注1)非業務用資産の減価の額の計算は、旧定額法によることに留意してください。
業務開始後の償却方法が定額法であっても、非業務用だった期間の減価の額は「旧」定額法です。名前が似ていて混同しやすいところです。旧定額法は残存価額を残す前提で計算する方法で、定額法とは計算の仕方が違います。
古い資産については補足があります。平成19年3月31日以前に取得した資産で、減価の額の累積額が取得価額の95パーセントに相当する金額に達した非業務用資産を業務の用に供した場合は、平成20年分以後において所得税法施行令第134条第2項の規定に従って減価償却費を計算します。また、昭和27年12月31日以前に取得した資産を業務の用に供した場合は、昭和28年1月1日現在の相続税評価額などを基にした別の計算式が示されています。相続した古い実家を貸す場合にかかわることがありますので、取得年月日が古いときは注意してください。
業務に使い始めた後の償却方法は、取得年月日で決まる
業務の用に供している期間の減価償却資産の償却方法は、その資産の取得年月日により異なります。No.2109は、見るのは取得年月日であって、非業務用から業務用に転用した日ではない、と明記しています。
ここは間違えやすいところです。貸し始めた日ではなく、その家を買った日(新築した日)で償却方法が決まります。たとえば古い時期に新築した自宅をいま貸し始めた場合、償却方法は新築当時の区分で選びます。未償却残高は転用日に出しますが、償却方法の区分は取得日で見る、と分けて覚えてください。
そして、上で計算した業務の用に供した日における未償却残高または取得価額を基に、取得年月日に応じた償却方法で減価償却費を計算します。具体的な計算はコード2105「旧定額法と旧定率法による減価償却(平成19年3月31日以前に取得した場合)」とコード2106「定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」が案内されています。
取得年月日ごとの償却方法の表
取得年月日ごとの償却方法は、建物、建物附属設備および構築物、それ以外の一般的な有形減価償却資産の3つに分けて、No.2109の表に示されています。建物は平成10年4月1日以後の取得なら定額法系のみで、定率法は選べません。
| 取得年月日 | 建物 | 建物附属設備および構築物 | 左記以外の一般的な有形減価償却資産 |
|---|---|---|---|
| 平成10年3月31日以前 | 旧定額法または旧定率法 | 旧定額法または旧定率法 | 旧定額法または旧定率法 |
| 平成10年4月1日から平成19年3月31日まで | 旧定額法 | 旧定額法または旧定率法 | 旧定額法または旧定率法 |
| 平成19年4月1日から平成24年3月31日まで | 定額法 | 定額法または(250パーセント)定率法 | 定額法または(250パーセント)定率法 |
| 平成24年4月1日から平成28年3月31日まで | 定額法 | 定額法または(200パーセント)定率法 | 定額法または(200パーセント)定率法 |
| 平成28年4月1日以後 | 定額法 | 定額法 | 定額法または定率法 |
自宅を貸す場合、主役は建物です。平成10年4月1日以後に取得した建物は、旧定額法か定額法しかありません。平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備・構築物も定額法だけです。住宅の貸付けでは、多くの場合、定額法系で計算することになります。
定率法については、No.2109の注記に、平成24年4月1日以後に取得する減価償却資産の償却費の計算上選定できる定率法の償却率が、定額法の償却率を2.5倍した償却率(250パーセント定率法)から、定額法の償却率を2倍した償却率(200パーセント定率法)に引き下げられた、とあります。自家用車を事業に使い始めた場合などは、ここが関係します。貸し始めた年に出す届出は不動産の貸付けを始めたときの届出で整理しています。
よくある質問
自宅を貸し始めたときの減価償却はどう計算しますか
家屋や自動車のように使用や期間の経過により減価する資産で、不動産所得・事業所得・山林所得・雑所得を生ずべき業務の用に供していなかったもの(非業務用資産)を業務の用に供した場合の減価償却費は、2段階で計算します。まず非業務用として使っていた期間の「減価の額」を求めて未償却残高を出し、次にその未償却残高または取得価額を基礎に業務開始後の減価償却費を計算します。→ 本文で読む
転用した資産の未償却残高はどう計算しますか
業務の用に供した日における未償却残高は、その資産の取得価額から、業務の用に供されていなかった期間について、法定耐用年数(新品の耐用年数)の1.5倍に相当する年数で旧定額法に準じて計算した減価の額を控除した金額です。取得価額に、1.5倍の年数による旧定額法の年間の減価の額を求め、それに非業務用だった期間の年数を乗じた金額を差し引きます。→ 本文で読む
住んでいた期間の年数に端数があるときはどうしますか
業務の用に供されていなかった期間に係る年数に1年未満の端数があるときは、6か月以上の端数は1年とし、6か月に満たない端数は切り捨てます。1.5倍に相当する年数に1年未満の端数があるときは、1年未満の端数は切り捨てます。→ 本文で読む
非業務用の期間の減価の額はどの方法で計算しますか
非業務用資産の減価の額の計算は、旧定額法によります。No.2109の注記は、この計算においては、所得税法施行令第134条第2項(減価償却費の償却累積額による償却費の特例)の適用はない、としています。資産を取得したのがいつであっても、非業務用の期間の減価の額は旧定額法で計算します。→ 本文で読む
転用後の償却方法は転用した日で決まりますか
業務の用に供している期間の減価償却資産の償却方法は、その資産の取得年月日により異なります。No.2109は、見るのは取得年月日であって、非業務用から業務用に転用した日ではない、と明記しています。→ 本文で読む
貸し始めた建物は定額法と定率法のどちらで償却しますか
取得年月日ごとの償却方法は、建物、建物附属設備および構築物、それ以外の一般的な有形減価償却資産の3つに分けて、No.2109の表に示されています。建物は平成10年4月1日以後の取得なら定額法系のみで、定率法は選べません。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.2109 新築家屋等を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2109.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
自宅を貸し始める前に、購入時の契約書と登記事項証明書を探してください。
転用後の減価償却費は、取得価額と取得年月日、住んでいた期間の年数で決まります。売買契約書や工事請負契約書に建物の価額が書かれているか、土地と建物が分かれているかで計算の手間が変わります。書類をお持ちいただければ、未償却残高と初年度の減価償却費を一緒に計算します。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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