不動産
無利子で預かった保証金には「経済的利益」の課税がある。
適正な利率と、収入に計上する3つの場合
テナントや借地人から保証金を預かっている賃貸オーナーの方に、あまり知られていない論点があります。
答えを先に書くと、保証金を無利子で預かると、その「利息を払わずにお金を使える」という利益が経済的利益として課税の対象になります。ただし、保証金を何に使っているかで、実際に税金が増えるかどうかは変わります。
国税庁のタックスアンサーNo.1377は、扱いを3つの場合に分け、計算に使う適正な利率を年ごとに示しています。順に確認します。
この記事の要点
建物の賃貸や定期借地権の設定で保証金を無利子で預かった賃貸人は、利息を払わずに使えることによる経済的利益が課税の対象です。扱いは3つで、業務の資金や業務用資産の取得に使っていれば利息相当額を収入と必要経費に同額計上、預貯金など金融資産で運用していれば計算不要、それ以外なら利息相当額を不動産所得の収入に計上します。適正な利率は年分ごとに定められています。国税庁タックスアンサーNo.1377をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
- 関連家賃はいつの収入か
- ご案内賃貸オーナーの確定申告
無利子で預かった保証金は、利息分が経済的利益になる
店舗や事務所の賃貸借契約、定期借地権の設定では、賃貸人が賃借人から保証金を預かることがあります。国税庁のタックスアンサーNo.1377は、この保証金を無利子で預かる場合、賃貸人が受ける経済的利益が課税の対象になる、としています。ここでいう保証金は、保証金等の名目の金銭で、賃借人が返還請求権を持つものです。
国税庁 タックスアンサー No.1377「保証金の経済的利益に係る課税関係」
金銭の貸付けまたは提供を無利息または通常の利率より低い利率で受けた場合には、通常の利率により計算した利息の額またはその通常の利率により計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額の経済的利益を受けたことになるため、その経済的利益を各種所得の収入金額に計上することになっています。
考え方はこうです。本来ならお金を借りれば利息を払います。保証金は返す義務のあるお金ですから、実質は借入れと同じです。それを無利子で使えるのなら、払わずに済んだ利息の分だけ利益を受けている、と所得税法は見ます。所得税法では、金銭以外の物や権利、その他の経済的利益も収入金額に含めることになっているためです。
扱いは3つ。保証金を何に使っているかで分かれる
ただし、経済的利益があるからといって、いつも税金が増えるわけではありません。No.1377は、保証金の使い方によって扱いを3つに分けています。
| 保証金の使い方 | 扱い |
|---|---|
| 業務に係る資金として運用、または業務用資産の取得資金に充てている | 適正な利率で計算した利息相当額を収入金額に算入し、同額を必要経費に算入 |
| 金融資産(預貯金、公社債、指定金銭信託、貸付信託等)で運用している | 運用による所得が課税されるので、計算不要 |
| 上記以外 | 適正な利率で計算した利息相当額を収入金額に算入 |
結果として税金が増えるのは3つめだけです。保証金を何に使ったかを帳簿で示せるかどうかが、この論点の分かれ目になります。それぞれの中身を見ていきます。
業務の資金に使っている場合。収入と必要経費に同額を計上
保証金を、貸付けの業務に係る資金として運用している場合や、業務の用に供する資産の取得資金に充てている場合です。たとえば預かった保証金で建物の修繕をした、別の賃貸物件の購入資金にした、という場合がこれに当たります。No.1377は、保証金を返還するまでの各年分の不動産所得等の金額の計算上、保証金につき適正な利率により計算した利息相当額(経済的利益)を収入金額に算入し、同額を必要経費に算入する、としています。
収入に入れる金額と経費に入れる金額が同じですから、差し引きはゼロで、所得は増えません。保証金を借入れに置き換えて考えると、その借入れの利息は業務の必要経費になるはずだから、という理屈です。ただし、計算しなくてよいわけではなく、両建てで計上するのが原則の処理です。
預貯金などで運用している場合。計算は不要
保証金を預貯金、公社債、指定金銭信託、貸付信託などの金融資産で運用している場合です。No.1377は、保証金の運用による所得(利子所得等)が課税対象となるので、保証金の経済的利益に係る所得の金額については計算不要、としています。
預金の利息や公社債の利子には、それ自体に税金がかかります。そのうえで経済的利益まで課税すると二重になりますので、こちらは不要という整理です。預かった保証金を、家賃の口座とは別の定期預金などにそのまま置いておくのが、最も説明しやすい形です。
それ以外の場合。利息相当額を収入に計上する
上の2つに当たらない場合、つまり保証金を生活費に使った、業務と関係のない支出に回した、といった場合です。No.1377は、保証金につき適正な利率により計算した利息に相当する金額を、保証金を返還するまでの各年分の不動産所得等の金額の計算上収入金額に算入する、としています。
この場合は、対応する必要経費がありませんので、利息相当額の分だけ不動産所得が増えます。しかも保証金を返還するまでの各年分ですから、預かっている間は毎年続きます。金額としては大きくならないことが多いものの、申告から漏れやすい項目です。保証金を預かっている物件がある方は、毎年の申告で忘れずに確かめてください。
適正な利率は年分ごとに定められている
計算に使う「適正な利率」は、No.1377に年分ごとの表があります。市場の金利に合わせて毎年変わっており、令和3年分から令和7年分は次のとおりです。
| 年分 | 利率(%) |
|---|---|
| 令和3年 | 0.002 |
| 令和4年 | 0.003 |
| 令和5年 | 0.02 |
| 令和6年 | 0.25 |
| 令和7年 | 0.44 |
ご覧のとおり、令和5年までは非常に低く、経済的利益の金額も小さなものでした。令和6年、令和7年と利率が上がっており、同じ保証金でも計上すべき金額は増えています。前年の申告書の数字をそのまま使うのではなく、その年分の利率を確かめる必要があります。根拠は所得税法36条と所得税基本通達36-15です。
返さなくてよくなった保証金は、その時点で収入になる
ここまでは「返す前提の保証金」の話でした。最後に、保証金そのものの収入計上について触れておきます。国税庁のタックスアンサーNo.1376は、敷金や保証金は本来は預り金ですから、受け取っても収入にはならないが、返還を要しないものは、返還を要しないことが確定した日にその金額を収入に計上する必要がある、としています。
契約で「保証金のうち一定割合は償却して返還しない」と決めている場合、その償却部分は契約時に返還不要が確定していますので、そのときの収入です。退去時に原状回復費と相殺して返さないことになった部分は、その確定した日の収入になります。経済的利益の計算は「返す部分」について、収入計上は「返さない部分」についてと分けて考えると整理しやすいと思います。収入計上の時期の全体は家賃はいつの収入かで、保証金の消費税の扱いは地代・家賃と敷金・権利金の消費税でまとめています。
よくある質問
無利子で預かった保証金に税金はかかりますか
店舗や事務所の賃貸借契約、定期借地権の設定では、賃貸人が賃借人から保証金を預かることがあります。国税庁のタックスアンサーNo.1377は、この保証金を 無利子で預かる 場合、賃貸人が受ける経済的利益が課税の対象になる、としています。ここでいう保証金は、保証金等の名目の金銭で、賃借人が返還請求権を持つものです。→ 本文で読む
保証金の経済的利益の扱いはどう分かれますか
ただし、経済的利益があるからといって、いつも税金が増えるわけではありません。No.1377は、保証金の使い方によって扱いを3つに分けています。 結果として税金が増えるのは3つめだけです。 保証金を何に使ったかを帳簿で示せるかどうかが、この論点の分かれ目 になります。それぞれの中身を見ていきます。→ 本文で読む
保証金を物件の修繕に使った場合の経済的利益はどう計算しますか
保証金を、貸付けの業務に係る資金として運用している場合や、業務の用に供する資産の取得資金に充てている場合です。たとえば預かった保証金で建物の修繕をした、別の賃貸物件の購入資金にした、という場合がこれに当たります。No.1377は、保証金を返還するまでの各年分の不動産所得等の金額の計算上、保証金につき適正な利率により計算した利息相当額(経済的利益)を収入金額に算入し、 同額を必要経費に算入 する、としています。→ 本文で読む
保証金を定期預金に置いている場合も経済的利益を計算しますか
保証金を預貯金、公社債、指定金銭信託、貸付信託などの金融資産で運用している場合です。No.1377は、保証金の運用による所得(利子所得等)が課税対象となるので、保証金の経済的利益に係る所得の金額については 計算不要 、としています。→ 本文で読む
保証金の経済的利益の計算に使う利率は何%ですか
計算に使う「適正な利率」は、No.1377に年分ごとの表があります。市場の金利に合わせて毎年変わっており、令和3年分から令和7年分は次のとおりです。 ご覧のとおり、令和5年までは非常に低く、経済的利益の金額も小さなものでした。 令和6年、令和7年と利率が上がっており、同じ保証金でも計上すべき金額は増えています。 前年の申告書の数字をそのまま使うのではなく、その年分の利率を確かめる必要があります。根拠は所得税法36条と所得税基本通達36-15です。→ 本文で読む
返還しないことになった保証金はいつの収入になりますか
ここまでは「返す前提の保証金」の話でした。最後に、保証金そのものの収入計上について触れておきます。国税庁のタックスアンサーNo.1376は、敷金や保証金は本来は預り金ですから、受け取っても収入にはならないが、 返還を要しないものは、返還を要しないことが確定した日にその金額を収入に計上する 必要がある、としています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1377 保証金の経済的利益に係る課税関係」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1377.htm - 国税庁「No.1376 不動産所得の収入計上時期」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1376.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
保証金を預かったら、その資金の行き先を帳簿で分かるようにしておいてください。
保証金を物件の修繕や別の物件の取得に充てているのか、預金に置いているのか、生活費に使ったのかで、経済的利益の扱いが変わります。適正な利率は年分ごとに違いますので、毎年の申告で確かめる必要があります。契約書と入出金の記録をお持ちいただければ、どの区分に当たるかを一緒に整理します。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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