不動産
不動産所得の計算。総収入金額から必要経費を引く。
家賃のほか更新料・返さない敷金・共益費も収入です
アパートや駐車場を貸し始めた最初の年、「何が収入で、何が経費なのか」を整理するところから確定申告が始まります。
答えを先に書くと、不動産所得の金額は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。式は単純ですが、総収入金額には家賃だけでなく、更新料や返さない敷金、共益費も入ります。必要経費は、不動産収入を得るために直接必要な費用のうち、家事上の経費と明確に区分できるものです。
国税庁のタックスアンサーNo.1370で範囲を、No.1376で収入に計上する時期を確かめていきます。
この記事の要点
不動産所得は、土地や建物などの不動産の貸付け、借地権など不動産の上に存する権利の設定・貸付け、船舶や航空機の貸付けによる所得で、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。総収入金額には賃貸料のほか、更新料、返還を要しない敷金や保証金、共益費も含みます。必要経費は貸付資産に係る固定資産税・損害保険料・減価償却費・修繕費などです。国税庁タックスアンサーNo.1370・No.1376をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
- 関連家賃はいつの収入か
- ご案内賃貸オーナーの確定申告
不動産所得とは。3つの貸付け
不動産所得は、不動産などを貸して得る所得です。国税庁のタックスアンサーNo.1370は、不動産所得を次の(1)から(3)までの所得(事業所得または譲渡所得に該当するものを除く)と定めています。
| 不動産所得になる貸付け | |
|---|---|
| (1) | 土地や建物などの不動産の貸付け |
| (2) | 借地権など不動産の上に存する権利の設定および貸付け |
| (3) | 船舶や航空機の貸付け |
アパートやマンションの一室、戸建て、駐車場、事務所や店舗の貸付けが(1)です。土地を貸して借地権を設定したときに受け取る対価も(2)として不動産所得に入ります。括弧書きにあるとおり、事業所得や譲渡所得に該当するものは除かれます。たとえば不動産を売った利益は譲渡所得です。
不動産所得の金額は、総収入金額から必要経費を引く
不動産所得の金額は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。No.1370はこの式を、そのまま示しています。
国税庁 タックスアンサー No.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
総収入金額 - 必要経費 = 不動産所得の金額
式そのものは簡単です。実務で問題になるのは、総収入金額に何を入れるかと、必要経費に何を入れてよいかの2つです。以下で順に確かめます。なお、貸している部屋の数などの規模によって扱いが変わる論点は不動産所得の事業的規模で整理しています。
総収入金額に入るもの。家賃だけではない
総収入金額は家賃だけではありません。No.1370は、貸付けによる賃貸料収入のほかに、次のようなものも含まれる、としています。
| 賃貸料のほかに総収入金額に含まれるもの | |
|---|---|
| イ | 名義書換料、承諾料、更新料または頭金などの名目で受領するもの |
| ロ | 敷金や保証金などのうち、返還を要しないもの |
| ハ | 共益費などの名目で受け取る電気代、水道代や掃除代など |
落としやすいのはロ(返還を要しない敷金や保証金)とハ(共益費など)です。敷金や保証金は預り金なので受け取った時点では収入になりませんが、返さないことが決まった部分は収入です。退去時に敷金から差し引いた原状回復費用の分や、契約で「償却」と決めている部分がこれに当たります。
共益費も、電気代や水道代の実費に充てるからといって収入から外すことはできません。共益費は総収入金額に入れ、支払った電気代や水道代は必要経費に入れる、という両建てで計算します。
必要経費になるもの。家事上の経費と明確に区分できること
必要経費にできるのは、不動産収入を得るために直接必要な費用のうち、家事上の経費と明確に区分できるものです。No.1370は、主なものとして貸付資産に係る次の4つを挙げています。
国税庁 タックスアンサー No.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
必要経費とすることができるものは、不動産収入を得るために直接必要な費用のうち家事上の経費と明確に区分できるものであり、主なものとして貸付資産に係る次に掲げるものがあります。
| 主な必要経費(貸付資産に係るもの) | |
|---|---|
| イ | 固定資産税 |
| ロ | 損害保険料 |
| ハ | 減価償却費 |
| ニ | 修繕費 |
ここで大事なのは「貸付資産に係る」と「家事上の経費と明確に区分できる」の2つです。自宅の固定資産税や自宅部分の火災保険料は経費になりません。自宅と賃貸部分が同じ建物にある場合は、貸している部分に対応する金額だけを経費にします。減価償却費は、お金の支出がない年でも経費になる一方、資料からは自動で出てこないので、毎年忘れずに計算します。固定資産税や不動産取得税の入れ方は固定資産税・不動産取得税は必要経費で整理しています。
収入に計上する時期。契約で決めた支払日
家賃を「いつの年の収入にするか」は、No.1376が定めています。原則は、契約や慣習などにより支払日が定められている場合はその定められた支払日、支払日が定められていない場合は実際に支払を受けた日です。請求があったときに支払うべきものと定められているものは、その請求の日です。
つまり、滞納されていて実際には入金されていない家賃でも、契約上の支払日が来ていれば、その年の収入に入れるのが原則です。逆に、翌年分の家賃を前もって受け取っていても、契約上の支払日で判定します。
権利金や礼金は、貸し付ける資産の引渡しを必要とするものは引渡しのあった日、必要としないものは契約の効力発生の日の収入です。名義書換料、承諾料、頭金も同様です。敷金や保証金のうち返還を要しないものは、返還を要しないことが確定した日に収入に計上します。くわしくは家賃はいつの収入かをご覧ください。
よくある質問
不動産所得とはどのような所得ですか
不動産所得は、不動産などを貸して得る所得です。国税庁のタックスアンサーNo.1370は、不動産所得を次の(1)から(3)までの所得(事業所得または譲渡所得に該当するものを除く)と定めています。→ 本文で読む
不動産所得の金額はどのように計算しますか
不動産所得の金額は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。No.1370はこの式を、そのまま示しています。 式そのものは簡単です。実務で問題になるのは、 総収入金額に何を入れるか と、 必要経費に何を入れてよいか の2つです。以下で順に確かめます。なお、貸している部屋の数などの規模によって扱いが変わる論点は 不動産所得の事業的規模 で整理しています。→ 本文で読む
敷金や共益費は不動産所得の収入に入りますか
総収入金額は家賃だけではありません。No.1370は、貸付けによる賃貸料収入のほかに、次のようなものも含まれる、としています。 落としやすいのはロ(返還を要しない敷金や保証金)とハ(共益費など)です。 敷金や保証金は預り金なので受け取った時点では収入になりませんが、返さないことが決まった部分は収入です。 退去時に敷金から差し引いた原状回復費用の分や、契約で「償却」と決めている部分がこれに当たります。→ 本文で読む
不動産所得の必要経費には何が入りますか
必要経費にできるのは、不動産収入を得るために直接必要な費用のうち、家事上の経費と明確に区分できるものです。No.1370は、主なものとして貸付資産に係る次の4つを挙げています。 ここで大事なのは 「貸付資産に係る」 と 「家事上の経費と明確に区分できる」 の2つです。自宅の固定資産税や自宅部分の火災保険料は経費になりません。自宅と賃貸部分が同じ建物にある場合は、貸している部分に対応する金額だけを経費にします。 減価償却費は、お金の支出がない年でも経費になる一方、資料からは自動で出てこないので、毎年忘れずに計算します。 固定資産税や不動産取得税の入れ方は 固定資産税・不動産取得税は必要経費 で整理しています。→ 本文で読む
家賃はいつの年の収入になりますか
家賃を「いつの年の収入にするか」は、No.1376が定めています。原則は、契約や慣習などにより支払日が定められている場合はその定められた支払日、支払日が定められていない場合は実際に支払を受けた日です。請求があったときに支払うべきものと定められているものは、その請求の日です。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm - 国税庁「No.1376 不動産所得の収入計上時期」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1376.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
賃貸借契約書と、管理会社の年間の入出金の一覧を用意してください。
不動産所得の計算は、収入の漏れと経費の入れすぎの両方を防ぐことが要点です。更新料や返さない敷金は収入に入れ、自宅と兼用の支出は明確に区分できる部分だけを経費にします。固定資産税や減価償却費のように資料から自動では出てこない経費も一緒に整理します。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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