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不動産

海外赴任中に自宅を貸したとき。
非居住者でも国内の家賃収入は日本で確定申告が必要で、納税管理人を決めておきます

海外赴任が決まり、持ち家を人に貸して出国する。会社員の方からよくいただくご相談です。「日本にいないのだから、日本の税金は関係ないのでは」と思われがちですが、そうではありません。

答えを先に書くと、海外勤務で非居住者になっても、日本国内にある不動産の家賃収入は国内源泉所得として日本で確定申告が必要です。本人が海外にいる間の申告や納税を代わりに行う「納税管理人」を決めておくのが出国前の準備です。

出国前に納税管理人を決めたかどうかで、申告の回数と時期が変わります。国税庁のタックスアンサーNo.1926で、手続の流れと計算上の注意点を確認していきます。

公開 最終更新

この記事の要点

1年以上の予定で海外に転勤すると所得税法上の非居住者になりますが、日本国内にある不動産の貸付けによる所得は国内源泉所得として総合課税で日本の確定申告が必要です。確定申告が必要なときは納税管理人を定めて届出書を税務署に出します。出国前に決めていれば翌年の申告期間に一本で済み、決めずに出国すると準確定申告が要ります。法人に貸すと家賃から20.42%が源泉徴収されます。国税庁タックスアンサーNo.1926をもとに整理しました。

先に見ておくと分かりやすいもの

1年以上の予定で海外勤務すると非居住者になる

まず、ご自身の立場が変わる点からです。国税庁のタックスアンサーNo.1926は、日本国内の会社に勤めている給与所得者が1年以上の予定で海外の支店などに転勤すると、一般的には日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者となる、としています。

非居住者になると、海外で受け取る給与には日本の所得税はかかりません。ただし、それで日本の税金と無縁になるわけではありません。日本国内で生じた一定の所得(国内源泉所得)については、非居住者にも納税の義務があります。自宅を貸して受け取る家賃がまさにこれに当たります。

国内の不動産所得などは総合課税で確定申告する

非居住者の課税方法は、総合課税の方法により確定申告をするか、源泉徴収だけで課税を完結させる源泉分離課税かに分かれます。どちらになるかは国内源泉所得の種類と、恒久的施設(PE)を有するかどうかで決まります。No.1926は、次の国内源泉所得はいずれも総合課税の方法で納税額を計算し、確定申告をする必要がある、としています。

総合課税で確定申告が必要な国内源泉所得
1国内にある資産の運用または保有により生じる所得(源泉徴収されない取引)
2国内にある資産(不動産や一定の株式等など)の譲渡により生じる所得
3国内にある不動産等の貸付けにより受け取る対価(不動産所得)
4国内にある営業所等を通じて締結した保険契約等に基づく一時金

海外赴任中に自宅を貸す場合は3の不動産所得です。赴任中に自宅を売った場合は2の譲渡所得になります。いずれも源泉徴収だけでは終わらず、日本で確定申告をすることになります。なお、非居住者期間中の不動産所得の金額の計算方法は、居住者の計算方法と同じです。家賃の計上時期や必要経費の考え方は家賃はいつの収入かで整理しています。

納税管理人を定めて届出書を出す

確定申告が必要となる場合には、納税管理人を定めて届出をします。No.1926は、納税管理人を定め、「所得税・消費税の納税管理人の選任・解任届出書」を、その非居住者の納税地を所轄する税務署長に提出しなければならない、としています。

国税庁 タックスアンサー No.1926「海外勤務中に不動産所得などがある場合」

納税管理人とは、確定申告書の提出や税金の納付などを非居住者に代わってする人のことです(納税管理人は法人でも個人でも構いません。)。

納税管理人は法人でも個人でも構いません。日本に残るご家族にお願いする方もいますし、税理士事務所が引き受けることもあります。申告書の提出、納税、還付金の受取りといった手続の窓口になります。

申告の方法は3つの場合に分かれる

納税管理人をいつ決めたかで、申告の仕方が変わります。No.1926は、非居住者の申告等の方法を3つの場合に分けています。まとめると次のとおりです。

場合申告の方法
(1)年の途中で海外に転出し、転出の時までに納税管理人を指定したその年1月1日から転出する日までの居住者期間に生じたすべての所得と、転出した日の翌日から12月31日までの非居住者期間に生じた国内源泉所得の合計額について、翌年2月16日から3月15日までの間に納税管理人を通じて確定申告・納税
(2)年の途中で納税管理人を指定しないで「出国」した居住者期間に生じたすべての所得について、出国の時までに確定申告(準確定申告)。その後、非居住者期間に国内源泉所得が生じる場合には、居住者期間のすべての所得と非居住者期間の国内源泉所得の合計額について、納税管理人を通じて翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告・納税
(3)年を通じて海外に勤務している国内源泉所得の金額が所得控除の合計額を超える場合には、原則として翌年2月16日から3月15日までの間に納税管理人を通じて確定申告

(1)と(2)の違いは申告の回数です。出国前に納税管理人を決めておけば翌年の申告期間に一本で済みますが、決めずに出国すると、出国の時までに準確定申告をしたうえで、翌年にもう一度申告することになります。「出国」とは、納税管理人を指定せずに非居住者になることをいいます。

赴任2年目以降は(3)です。国内源泉所得の金額が所得控除の合計額を超える年は、毎年、納税管理人を通じて申告します。家賃収入から必要経費を引いた不動産所得が、使える所得控除の合計より大きければ申告が必要と考えてください。

所得控除・税額控除の計算で気をつけること

非居住者の年の申告では、居住者のときと同じように所得控除が使えるわけではありません。No.1926は、税額計算をする際の注意事項として、所得控除と税額控除について次のように整理しています。

控除扱い
医療費控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・地震保険料控除(1)(2)の年は、居住者期間内に支払った金額を基に計算
配偶者(特別)控除・扶養控除・特定親族特別控除・障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除(1)はその年の12月31日、(2)は出国の日で判定
雑損控除・寄附金控除・基礎控除(1)から(3)のいずれも適用できる。ただし非居住者期間の雑損控除の対象は国内にある資産について生じた損失に限る
配当控除・外国税額控除適用を受けられる場合は控除を行い、控除後の所得税を計算
住宅借入金等特別控除引き続き居住していることが要件のひとつだが、転勤等のやむを得ない事情がある場合には一定の要件を満たせば適用を受けられる(コード1234参照)

年を通じて海外にいる(3)の年に使える所得控除は、雑損控除・寄附金控除・基礎控除に絞られます。社会保険料控除や生命保険料控除は、居住者期間に払った分だけです。住宅ローン控除は、転勤で住まなくなった場合の扱いがコード1234にありますので、赴任前に確かめてください。

家賃から20.42%が源泉徴収される。還付申告もできる

非居住者が受け取る国内の不動産の賃貸料は、原則として支払の際に源泉徴収されます。No.1926は、20.42パーセントの税率により計算した額の所得税および復興特別所得税(令和9年分以後は所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税)が源泉徴収される、としています。

国税庁 タックスアンサー No.1926「海外勤務中に不動産所得などがある場合」

ただし、土地、家屋等を自己またはその親族の居住の用に供するために借り受けた個人が支払うものは、源泉徴収されません。

借主が会社(社宅として借りる法人など)であれば、家賃の20.42パーセントが差し引かれて振り込まれます。借主が自分や親族の住まいとして借りる個人であれば、源泉徴収はありません。誰に貸すかで手取りの見え方が変わります。

源泉徴収された税額は、確定申告で精算します。No.1926は、この源泉徴収税額の還付を受けるための申告を行うこともできる、としています。家賃の収入から減価償却費や管理費、固定資産税などの必要経費を引いた不動産所得に対する税額が、源泉徴収された額より少なければ、差額が戻ります。納税管理人を決めておくことは、納めるためだけでなく、還付を受けるためにも必要です。貸し始めたときの届出は不動産の貸付けを始めたときの届出で整理しています。

よくある質問

海外赴任すると所得税の非居住者になりますか

まず、ご自身の立場が変わる点からです。国税庁のタックスアンサーNo.1926は、日本国内の会社に勤めている給与所得者が 1年以上の予定で海外の支店などに転勤 すると、一般的には日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者となる、としています。→ 本文で読む

海外赴任中の自宅の家賃収入は日本で確定申告が必要ですか

非居住者の課税方法は、総合課税の方法により確定申告をするか、源泉徴収だけで課税を完結させる源泉分離課税かに分かれます。どちらになるかは国内源泉所得の種類と、恒久的施設(PE)を有するかどうかで決まります。No.1926は、次の国内源泉所得はいずれも総合課税の方法で納税額を計算し、確定申告をする必要がある、としています。→ 本文で読む

納税管理人とは何ですか

確定申告が必要となる場合には、納税管理人を定めて届出をします。No.1926は、納税管理人を定め、「所得税・消費税の納税管理人の選任・解任届出書」を、その非居住者の納税地を所轄する税務署長に提出しなければならない、としています。→ 本文で読む

海外赴任する年の確定申告はいつまでにしますか

納税管理人をいつ決めたかで、申告の仕方が変わります。No.1926は、非居住者の申告等の方法を3つの場合に分けています。まとめると次のとおりです。 (1)と(2)の違いは申告の回数です。 出国前に納税管理人を決めておけば翌年の申告期間に一本で済みますが、決めずに出国すると、出国の時までに準確定申告をしたうえで、翌年にもう一度申告 することになります。「出国」とは、納税管理人を指定せずに非居住者になることをいいます。→ 本文で読む

非居住者の年に社会保険料控除や生命保険料控除は使えますか

非居住者の年の申告では、居住者のときと同じように所得控除が使えるわけではありません。No.1926は、税額計算をする際の注意事項として、所得控除と税額控除について次のように整理しています。→ 本文で読む

非居住者の家賃収入からはいくら源泉徴収されますか

非居住者が受け取る国内の不動産の賃貸料は、原則として支払の際に源泉徴収されます。No.1926は、20.42パーセントの税率により計算した額の所得税および復興特別所得税(令和9年分以後は所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税)が源泉徴収される、としています。→ 本文で読む

出典

  1. 国税庁「No.1926 海外勤務中に不動産所得などがある場合」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1926.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

出国の日が決まったら、納税管理人の届出を先に済ませてください。

納税管理人を定めずに出国すると、出国の時までに準確定申告が必要になり、その後の家賃収入についてもう一度申告が要ります。出国前に届出を出しておけば、翌年の申告期間に一本で済みます。海外にいる間の申告や還付の手続は、当事務所が納税管理人としてお引き受けすることもできます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。