控除
セルフメディケーション税制の対象になる医薬品。
スイッチOTC医薬品と識別マークで見分けます
かぜ薬や鎮痛薬をドラッグストアで買ったとき、「これはセルフメディケーション税制に使えるのか」と迷う方が多くいらっしゃいます。
答えを先に書くと、対象になるのは「特定一般用医薬品等」と呼ばれる医薬品だけで、いわゆるスイッチOTC医薬品と、令和4年以後に加わった一部の一般用医薬品です。すべての市販薬が対象ではありません。
見分け方は難しくありません。パッケージの識別マークと、領収書の表示です。国税庁のタックスアンサーNo.1132とNo.1129で、何が対象で、いくら控除できて、どんな条件があるのかを順に確認します。
この記事の要点
セルフメディケーション税制の対象は、市販薬のうち医療用薬剤との代替性が特に高い「特定一般用医薬品等」です。いわゆるスイッチOTC医薬品と、令和4年以後に加わった同種の効能をもつ一般用医薬品の一部で、パッケージの識別マークや領収書の表示で見分けます。控除額は購入費から12,000円を引いた額(最高88,000円)で、通常の医療費控除との選択です。国税庁タックスアンサーNo.1132・No.1129をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
- 関連医療費控除の基本
- ご案内会社員の副業の確定申告
対象は「特定一般用医薬品等」の購入費
セルフメディケーション税制で控除の対象になるのは、特定一般用医薬品等購入費です。国税庁のタックスアンサーNo.1132は、これを、医療用薬剤との代替性が特に高いものとして厚生労働大臣が財務大臣と協議して定める一般用医薬品等の購入の対価、と説明しています。市販薬のすべてが対象になるわけではありません。
国税庁 タックスアンサー No.1129「特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】」
特定一般用医薬品等購入費とは、医師によって処方される医薬品(医療用医薬品)から、ドラッグストアで購入できるOTC医薬品に転用された医薬品(スイッチOTC医薬品)等の購入費をいいます。
「一般用医薬品等」とは、薬局やドラッグストアで買える要指導医薬品と一般用医薬品のことです。もともと医師の処方が必要だった成分が市販薬に転用されたもの、というのが対象の中心です。なお、新医薬品に該当するものと、人の身体に直接使用されないものは除かれています。
スイッチOTC医薬品と、それ以外の一般用医薬品
対象の医薬品は、大きく2つに分かれます。1つはいわゆるスイッチOTC医薬品、もう1つはスイッチOTC医薬品と同種の効能または効果をもつ一般用医薬品で告示に掲げられたものです。No.1132は、前者の有効成分としてアシクロビル、アシタザノラストなどを挙げ、令和8年4月1日現在100成分が定められている、としています。
後者は、アスピリン、アセトアミノフェンなどで、令和8年4月1日現在42成分です。ただし成分だけで決まるのではなく、外用鎮痛消炎薬、解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬、かぜ薬、鼻炎用点鼻薬、鼻炎用内服薬、抗ヒスタミン薬その他のアレルギー用薬としての効能または効果を有する製剤に限られています。
| 区分 | 成分の例 | 告示の成分数(令和8年4月1日現在) |
|---|---|---|
| スイッチOTC医薬品 | アシクロビル、アシタザノラスト など | 100成分 |
| スイッチOTC医薬品以外の一般用医薬品 | アスピリン、アセトアミノフェン など(解熱鎮痛薬・かぜ薬・鼻炎用薬などの効能に限る) | 42成分 |
具体的な品目は、厚生労働省ホームページの「対象品目一覧」で確認できます。成分名から判断するのは難しいので、実際には次に書く識別マークと領収書で見分けるのが確実です。
買った時期で対象の範囲が変わる
対象の範囲は、いつ買ったかで少し違います。No.1132は、平成29年1月1日から令和3年12月31日までに購入したものと、令和4年1月1日から令和8年12月31日までに購入したものとで、範囲を分けて示しています。
前の期間は、スイッチOTC医薬品に当たるものだけが対象でした。後の期間は、それに加えてスイッチOTC医薬品と同種の効能または効果をもち、医療保険療養給付費の適正化の効果が著しく高いと認められる一般用医薬品が対象に入りました。前の節の「42成分」はこちらです。
一方で、絞られた部分もあります。令和8年1月1日以降に購入したものについては、医療保険療養給付費の適正化の効果が低いと認められる医薬品が対象から除かれます。去年まで対象だった商品が今年は対象外、ということも起こり得ますので、買った年ごとに表示を確かめてください。
識別マークと領収書の表示で見分ける
対象かどうかは、店頭と領収書で確認できます。No.1132は、一部の対象医薬品については、パッケージにセルフメディケーション税制の対象である旨を示す識別マークが掲載されている、としています。No.1129は、購入の際の領収書等に対象商品である旨が表示されている、としています。
国税庁 タックスアンサー No.1132「セルフメディケーション税制の対象となる特定一般用医薬品等購入費」
なお、一部の対象医薬品については、その医薬品のパッケージにセルフメディケーション税制の対象である旨を示す識別マークが掲載されています。
実務では、レシートの対象商品の欄に付いている印が最も頼りになります。マークが付いていない対象商品もありますので、マークが無いからといって対象外と決めつけず、迷うものは厚生労働省の一覧で確かめるとよいでしょう。レシートは年ごとにまとめて保管し、対象商品の金額だけを合計します。
控除額は購入費から12,000円を引いた額。最高88,000円
控除の金額は、No.1129に書かれています。実際に支払った特定一般用医薬品等購入費の合計額から、保険金などで補填される部分を除いたうえで、12,000円を差し引いた金額です。上限は88,000円です。
国税庁 タックスアンサー No.1129「特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】」
セルフメディケーション税制による医療費控除額は、実際に支払った特定一般用医薬品等購入費の合計額(保険金などで補填される部分を除きます。)から12,000円を差し引いた金額(最高88,000円)です。
自分の分だけでなく、生計を一にする配偶者その他の親族のために支払った分も合計できます。一方で、人間ドックなど「一定の取組」そのものにかかった費用は、この控除の対象になりません。
健康診断や予防接種などの「一定の取組」が条件
この税制には、医薬品を買ったこと以外にもう1つ条件があります。No.1129は、適用を受けようとする年分に、健康の保持増進および疾病の予防への取組として「一定の取組」を行っている居住者が対象になる、としています。次の6つです。
- 保険者(健康保険組合、市区町村国保等)が実施する健康診査(人間ドック、各種健(検)診等)
- 市区町村が健康増進事業として行う健康診査
- 予防接種(定期予防接種、インフルエンザワクチンの予防接種)
- 勤務先で実施する定期健康診断(事業主健診)
- 特定健康診査(いわゆるメタボ健診)、特定保健指導
- 市区町村が健康増進事業として実施するがん検診
取組を行っている必要があるのは、申告する本人だけです。No.1129は、生計を一にする配偶者その他の親族が取組を行っている必要はない、と明記しています。会社員なら勤務先の定期健康診断で条件を満たします。取組を行ったことを明らかにする書類は、申告書への添付は不要ですが、確定申告期限等から5年を経過する日までの間、税務署から提示や提出を求められる場合があります。
通常の医療費控除との選択。あとから変えられない
セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例です。No.1129は、通常の医療費控除との選択適用であり、この特例の適用を受ける場合は通常の医療費控除を併せて受けることはできない、としています。両方を同じ年に使うことはできません。
そしてもう1点、いずれかを選択したあとで、更正の請求や修正申告によりこの選択を変更することはできません。申告してから「通常の医療費控除のほうが有利だった」と気づいても、やり直しはできないということです。申告前に、病院の医療費の合計と、対象の市販薬の合計を並べて、どちらで申告するかを決めてください。通常の医療費控除の要件は医療費控除の基本で整理しています。
手続としては、セルフメディケーション税制の明細書を確定申告書に添付します。領収書そのものの添付は不要ですが、確定申告期限等から5年を経過する日までの間は、税務署から提示や提出を求められる場合がありますので、捨てずに保管してください。
よくある質問
セルフメディケーション税制の対象になる医薬品は何ですか
セルフメディケーション税制で控除の対象になるのは、 特定一般用医薬品等購入費 です。国税庁のタックスアンサーNo.1132は、これを、医療用薬剤との代替性が特に高いものとして厚生労働大臣が財務大臣と協議して定める一般用医薬品等の購入の対価、と説明しています。市販薬のすべてが対象になるわけではありません。→ 本文で読む
スイッチOTC医薬品とは何ですか
対象の医薬品は、大きく2つに分かれます。1つは いわゆるスイッチOTC医薬品 、もう1つは スイッチOTC医薬品と同種の効能または効果をもつ一般用医薬品 で告示に掲げられたものです。No.1132は、前者の有効成分としてアシクロビル、アシタザノラストなどを挙げ、令和8年4月1日現在100成分が定められている、としています。→ 本文で読む
買った薬がセルフメディケーション税制の対象かどうかはどう見分けますか
対象かどうかは、店頭と領収書で確認できます。No.1132は、一部の対象医薬品については、パッケージにセルフメディケーション税制の対象である旨を示す識別マークが掲載されている、としています。No.1129は、購入の際の領収書等に対象商品である旨が表示されている、としています。→ 本文で読む
セルフメディケーション税制の控除額はいくらですか
控除の金額は、No.1129に書かれています。実際に支払った特定一般用医薬品等購入費の合計額から、保険金などで補填される部分を除いたうえで、 12,000円を差し引いた金額 です。上限は 88,000円 です。→ 本文で読む
セルフメディケーション税制の「一定の取組」とは何ですか
この税制には、医薬品を買ったこと以外にもう1つ条件があります。No.1129は、適用を受けようとする年分に、健康の保持増進および疾病の予防への取組として 「一定の取組」 を行っている居住者が対象になる、としています。次の6つです。→ 本文で読む
セルフメディケーション税制と医療費控除は両方使えますか
セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例です。No.1129は、通常の医療費控除との選択適用であり、この特例の適用を受ける場合は通常の医療費控除を併せて受けることはできない、としています。両方を同じ年に使うことはできません。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1132 セルフメディケーション税制の対象となる特定一般用医薬品等購入費」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1132.htm - 国税庁「No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1129.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
ドラッグストアの領収書は、捨てずに1年分まとめておいてください。
セルフメディケーション税制は、対象商品の表示がある領収書を集めれば計算できます。通常の医療費控除とどちらが有利かは、その年の医療費の合計と市販薬の合計を並べて決めます。健康診断や予防接種を受けた記録も忘れずにお持ちください。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
あわせて読む
同じテーマの記事
所得控除
要介護認定と障害者控除。65歳以上は市町村長等の認定
介護保険法の要介護認定を受けたことで、そのまま所得税の障害者控除の対象になるわけではありません。
所得控除
扶養控除は38万円・63万円・48万円・58万円の4段階
扶養控除の額は、一般38万円、特定扶養親族(19歳以上23歳未満)63万円、老人扶養親族(70…
所得控除
配偶者控除は配偶者の所得62万円以下。給与なら136万円以下
配偶者の合計所得金額が62万円以下(令和8年分から。
所得控除
パート収入は178万円まで所得税がかかりません(令和8年分から)
令和8年分から、給与所得控除の最低額74万円と基礎控除104万円を合わせて、パート収入178万…