控除
災害減免法による所得税の軽減免除。
住宅や家財の損害が2分の1以上で所得1,000万円以下なら、所得500万円以下で全額免除
地震や台風、火災で自宅や家財に大きな被害を受けたとき、所得税の救済は2つあります。雑損控除と、災害減免法による軽減免除です。
答えを先に書くと、災害減免法は、住宅や家財の損害金額がその価額の2分の1以上で、その年の所得金額の合計額が1,000万円以下の方が対象で、所得金額の合計額が500万円以下なら所得税の全額が免除されます。雑損控除の適用を受けない場合に使える制度で、どちらか有利な方を選べます。
国税庁のタックスアンサーNo.1902で要件と手続を確認し、雑損控除(No.1110)との違いもあわせて見ていきます。
この記事の要点
災害で住宅や家財に受けた損害金額(保険金などで補てんされる金額を除く)がその価額の2分の1以上で、その年の所得金額の合計額が1,000万円以下なら、雑損控除を受けない場合に災害減免法で所得税が軽減免除されます。所得500万円以下は全額、750万円以下は2分の1、1,000万円以下は4分の1です。雑損控除と有利な方を選べます。国税庁タックスアンサーNo.1902をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
適用の要件。損害2分の1以上、所得1,000万円以下
災害減免法による所得税の軽減免除を受けられるのは、災害によって受けた住宅や家財の損害金額(保険金などにより補てんされる金額を除きます)がその価額の2分の1以上で、かつ、災害にあった年分の所得金額の合計額が1,000万円以下の方です。国税庁のタックスアンサーNo.1902は、その災害による損失額について雑損控除の適用を受けない場合に、この制度で所得税が軽減または免除される、としています。
国税庁 タックスアンサー No.1902「災害減免法による所得税の軽減免除」
災害によって受けた住宅や家財の損害金額(保険金などにより補てんされる金額を除きます。)がその価額の2分の1以上で、かつ、災害にあった年分の所得金額の合計額が1,000万円以下のときにおいて、その災害による損失額について雑損控除の適用を受けない場合は、災害減免法によりその年分の所得税が次のように軽減または免除されます。
要件は3つです。損害が住宅や家財の価額の2分の1以上であること、所得金額の合計額が1,000万円以下であること、雑損控除を受けないことです。損害金額は保険金などで補てんされる金額を除いて判定しますから、保険で多くが補われた場合は2分の1以上にならないことがあります。
No.1902の注記によれば、ここでいう「所得金額の合計額」は、総所得金額のほか、分離課税の譲渡所得の金額、申告分離課税の上場株式等の配当所得等・譲渡所得等の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、山林所得金額、退職所得金額などの合計額です。給与だけでなく、株や不動産の売却益も含めて判定します。
所得金額の合計額に応じて全額・2分の1・4分の1
軽減または免除される所得税の額は、所得金額の合計額に応じて3段階です。No.1902の表を整理すると次のとおりです。
| 所得金額の合計額 | 軽減または免除される所得税の額 |
|---|---|
| 500万円以下 | 所得税の額の全額 |
| 500万円を超え750万円以下 | 所得税の額の2分の1 |
| 750万円を超え1,000万円以下 | 所得税の額の4分の1 |
所得金額の合計額が500万円以下なら、その年分の所得税は全額免除です。給与から源泉徴収されていた所得税があれば、申告により戻ってきます。750万円を超えると4分の1に下がり、1,000万円を超えると対象外です。所得税の額に対する割合で決まるため、所得税が大きい方ほど免除額も大きくなります。
災害・住宅・家財の範囲
対象になる「災害」「住宅」「家財」には、それぞれ範囲が定められています。No.1902は、災害を次のいずれかの場合としています。
- 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
- 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
- 害虫などの生物による異常な災害
住宅または家財の所有者は、納税者本人か、納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、その年分の総所得金額等が62万円以下(令和7年分は58万円以下、令和2年分から令和6年分は48万円以下)の方であることが必要です。No.1902の注記によれば、62万円は令和8年12月1日に施行され、令和8年分から適用される金額です。
「住宅」とは、自己または扶養親族が常時起居する家屋です。No.1902は、常時起居する家屋であれば必ずしも生活の本拠であることを必要とせず、2か所以上の家屋に常時起居しているときはいずれも住宅とする一方、常時起居しない別荘のようなものは住宅としないとしています。住宅に附属する倉庫、物置等の附属建物は住宅に含めます。
「家財」とは、納税者(扶養親族を含みます)の日常生活に通常必要な家具、じゅう器、衣服、書籍その他の家庭用動産です。書画、骨とう、娯楽品等で生活に必要な程度を超えるものは含まれません。
雑損控除との選択。有利な方を選べる
災害で住宅や家財に損害を受けた場合の税金面での救済には、災害減免法のほかに雑損控除があります。No.1902の注記は、いずれか有利な方法を選択できる、としています。雑損控除の側のNo.1110も、その年の所得金額の合計額が1,000万円以下の人が災害にあった場合は災害減免法による軽減免除があり、納税者の選択によりどちらか有利な方法を選べる、としています。
| 災害減免法 | 雑損控除 | |
|---|---|---|
| しくみ | その年分の所得税の額を軽減または免除 | 所得から損失額を控除(所得控除) |
| 所得の要件 | 所得金額の合計額が1,000万円以下 | なし |
| 損害の要件 | 住宅や家財の損害が価額の2分の1以上 | 一定の計算式による控除額 |
| 翌年以後への繰越し | なし(その年分のみ) | 控除しきれない場合は翌年以後3年間繰り越せる |
No.1110によれば、雑損控除の金額は、(損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10%と、(災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円のいずれか多い方で、損失額が大きくてその年の所得金額から控除しきれない場合には翌年以後3年間に繰り越せます。災害減免法はその年分だけの制度ですから、損失が非常に大きく1年では引ききれない場合は、雑損控除の方が有利になることがあります。両方を計算して比べてください。
手続。確定申告書等に被害の状況と損害金額を記載する
災害減免法による軽減免除を受けるには、確定申告書、修正申告書または更正の請求書(確定申告書等)に、適用を受ける旨、被害の状況および損害金額を記載して、納税地の所轄税務署長に提出することが必要です。No.1902がこう定めています。
No.1902の注記によれば、確定申告書の提出により適用を受ける場合、その確定申告書が期限後申告であっても適用されます。また、確定申告書では適用を受けていなかったときでも、修正申告書または更正の請求書を提出する際に適用を受ける選択をすることも可能です。
さらに、確定申告書では雑損控除を選択して適用を受けていても、修正申告書または更正の請求書を提出する際に、雑損控除に代えて災害減免法による軽減免除の適用を受ける選択ができます。申告した後で「災害減免法の方が有利だった」と分かった場合も、やり直す道があります。修正申告と更正の請求の使い分けは確定申告を間違えたときで整理しています。
給与や年金の源泉所得税の徴収猶予と還付
確定申告を待たずに受けられる救済もあります。No.1902は、給与所得者や公的年金等の受給者が災害による被害を受けた場合は、一定の手続をすることにより、源泉所得税の徴収猶予や還付が受けられる場合がある、としています。詳細はコード8003で案内されています。
被災した年の途中から、給与や年金から差し引かれる所得税を止めたり、すでに引かれた分を戻したりする手続です。年末まで待たずに手元の資金を確保できる点で、災害減免法の申告とは別に確かめる価値があります。
被災された年は、所得税の申告そのものが後回しになりがちです。災害減免法は期限後申告でも適用されますから、落ち着いてから申告しても間に合います。申告を忘れた場合の扱いは確定申告を忘れたとき、源泉徴収された所得税を戻す申告の期間は還付申告の期間をご覧ください。
よくある質問
災害減免法による所得税の軽減免除を受けられるのはどのような場合ですか
災害減免法による所得税の軽減免除を受けられるのは、災害によって受けた住宅や家財の損害金額(保険金などにより補てんされる金額を除きます)がその価額の2分の1以上で、かつ、災害にあった年分の所得金額の合計額が1,000万円以下の方です。国税庁のタックスアンサーNo.1902は、その災害による損失額について雑損控除の適用を受けない場合に、この制度で所得税が軽減または免除される、としています。→ 本文で読む
災害減免法で所得税はいくら軽減されますか
軽減または免除される所得税の額は、所得金額の合計額に応じて3段階です。No.1902の表を整理すると次のとおりです。 所得金額の合計額が500万円以下なら、その年分の所得税は全額免除です。 給与から源泉徴収されていた所得税があれば、申告により戻ってきます。 750万円を超えると4分の1に下がり、1,000万円を超えると対象外です。 所得税の額に対する割合で決まるため、所得税が大きい方ほど免除額も大きくなります。→ 本文で読む
別荘や骨とう品の損害も災害減免法の対象になりますか
対象になる「災害」「住宅」「家財」には、それぞれ範囲が定められています。No.1902は、災害を次のいずれかの場合としています。 住宅または家財の所有者は、納税者本人か、納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、その年分の総所得金額等が62万円以下(令和7年分は58万円以下、令和2年分から令和6年分は48万円以下)の方であることが必要です。No.1902の注記によれば、62万円は令和8年12月1日に施行され、令和8年分から適用される金額です。→ 本文で読む
災害減免法と雑損控除はどちらを選ぶべきですか
災害で住宅や家財に損害を受けた場合の税金面での救済には、災害減免法のほかに雑損控除があります。No.1902の注記は、いずれか有利な方法を選択できる、としています。雑損控除の側のNo.1110も、その年の所得金額の合計額が1,000万円以下の人が災害にあった場合は災害減免法による軽減免除があり、納税者の選択によりどちらか有利な方法を選べる、としています。→ 本文で読む
災害減免法は期限後申告でも適用されますか
災害減免法による軽減免除を受けるには、確定申告書、修正申告書または更正の請求書(確定申告書等)に、適用を受ける旨、被害の状況および損害金額を記載して、納税地の所轄税務署長に提出することが必要です。No.1902がこう定めています。→ 本文で読む
被災した年の給与から源泉徴収される所得税を止めることはできますか
確定申告を待たずに受けられる救済もあります。No.1902は、給与所得者や公的年金等の受給者が災害による被害を受けた場合は、一定の手続をすることにより、源泉所得税の徴収猶予や還付が受けられる場合がある、としています。詳細はコード8003で案内されています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1902 災害減免法による所得税の軽減免除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1902.htm - 国税庁「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1110.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
被災された年の申告は、雑損控除と災害減免法の両方を計算して比べます。
災害減免法はその年の所得税を軽減免除する制度、雑損控除は所得から差し引く制度で、損害の大きさと所得によってどちらが有利かが変わります。被害の状況が分かる写真や罹災証明、修理の見積書、保険金の通知をお持ちいただければ、両方を計算して比べます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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