法人
グループ会社に払う経営指導料・管理費は、
計算方法の分かる書類が要ります
親会社やグループ会社から「経営指導料」「管理費」「マネジメントフィー」を請求され、請求書には名目と金額しか書いていない。小さな会社のグループでも、よくある形です。
令和8年度の税制改正で、こうした関連者との取引について契約書や請求書で中身と計算方法が分からなければ、それを補う書類を用意して保存する特例ができました。
国税庁は2026年9月30日、この特例に関する法人税基本通達(17-3-1から17-3-11まで、新設)の趣旨説明を公表しました。何が対象で、何をどこまで書けばよいのかを、その本文に沿って確認します。
この記事の要点
令和8年度の税制改正で、関連者間取引に係る書類の整理保存の特例ができました。親会社などの関連者に払う経営指導料・管理費・ロイヤルティなどで、契約書や請求書に役務の内容や対価の計算方法が書かれていなければ、その不足を補う「特定事項記載書類」を申告期限までに用意し、7年間保存します。国税庁が2026年9月30日に公表した法人税基本通達17-3-1〜17-3-11の趣旨説明をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
何が新しくなったか。足りない事項を補う書類を用意する
新しくできたのは「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」です。関連者との一定の取引で、契約書や請求書などに取引の中身や対価の計算方法が書かれていない場合に、それを明らかにする書類を別に用意して保存するという内容です。
国税庁「法人税基本通達等の一部改正について」等の趣旨説明 制度の概要
その特定事項記載書類をその取引を行った事業年度の申告書の提出期限までに取得し、又は作成し、その特定事項記載書類を整理し、起算日から7年間、これを納税地等に保存しなければならない特例が創設された
趣旨説明によると、書かれているべき事項は、資産または役務の提供の明細、その取引で自社が負担する費用の額の計算の方法など、取引の対価の額を算定するために必要な事項です。これらが取引の書類に無いときに、その「無い事項」を明らかにする書類を特定事項記載書類と呼びます。
用意する期限は、その取引を行った事業年度の申告書の提出期限までです。そして起算日から7年間保存します。根拠は、青色申告法人について法人税法施行規則第59条の2第1項、青色申告でない普通法人等について第67条の2第1項です。通達17-3-11により、青色申告でない会社にも同じ取扱いが準用されます。
関連者とは。50%以上の株式保有と実質的な支配
対象になる相手は「関連者」です。趣旨説明は、いずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の総数等の50%以上を直接または間接に保有する関係その他の一定の特殊の関係のある法人、と説明しています。判定は移転価格税制の関連者と同様の基準によります。
親会社と子会社のように、株式の50%以上を持っている関係が典型です。通達はこの判定について、細かな点も明らかにしています。
| 通達 | 内容 |
|---|---|
| 17-3-1・17-3-2 | 払込みがまだ済んでいない株式も、発行済株式・保有する株式に含めて判定する |
| 17-3-2(注) | 名義株は、実際の権利者が持っているものとして判定する |
| 17-3-3 | 株式の保有がなくても、実質的に事業の方針を支配している関係があれば関連者になる |
17-3-3が実質的な支配の例として挙げるのは、相手から提供される著作権・工業所有権・ノウハウ等に依存して事業をしていることと、役員の2分の1以上または代表する権限を有する役員が相手によって実質的に決定されていることです。名義を借りて株式を分けていても、実際の権利者で判定されます。なお、ここに挙げたのは例示で、ほかの事実も実態に応じて判定するとされています。
対象になる取引。ロイヤルティ、費用の分担、経営指導
対象は、関連者から自社に対して行われる取引のうち、販売費・一般管理費その他の費用の額のもとになるものです。大きく分けて、工業所有権等の譲渡や貸付けと、一定の役務の提供の2つがあります。
1つめの工業所有権等には、特許権や商標権のほか、ノウハウ、設計や図面に化体された生産方式、デザインも含まれます(17-3-4)。グループ内で払うロイヤルティやライセンス料がこれに当たります。
2つめの役務の提供について、通達は次のような例を挙げています。
| 区分 | 通達が挙げている例 |
|---|---|
| 費用の分担(17-3-9) | グループ共通のブランドのための広告宣伝・販売促進・市場分析、研究開発、情報システムやデータベースの共通利用、建物・設備の共通利用 |
| 経営の管理・指導(17-3-10) | 事業計画の策定・業績管理・内部管理体制の整備についての助言や指導、人事・労務・法務・財務などの業務の支援、事業運営に役立つ情報の定期的な提供 |
趣旨説明は、こうした役務の請求書には「経営指導料」「マネジメントフィー」「サービスフィー」「管理費」「運営支援料」等の抽象的な表示しかないことも少なくないと指摘しています。複数の役務をまとめて請求していて内訳が分かれていなくても、それだけで対象外にはなりません。
反対に、専ら株主としての立場で行う活動で、役務の提供として対価の授受を予定していないものは、通常、対象になりません(17-3-10の注1)。ただし、親会社が行ったというだけで株主としての活動になるわけではなく、実質が子会社への経営支援や助言であれば対象になり得る、とされています。
用意する書類は「足りない事項」だけでよい
新しい書類と聞くと、取引の説明資料を一から作る必要があるように思えますが、そうではありません。通達17-3-6は、特定事項記載書類には取引の内容のすべてを書く必要はなく、足りない事項が明らかにされていれば足りる、としています。
さらに17-3-7は、複数の書類を合わせて読めば必要な事項が確認できる場合は、特定事項記載書類は要らないとしています。趣旨説明はその例として、次のような場合を挙げています。
- 契約書に貸付けの内容・その機能・対価の算定方法が書かれていて、請求書と計算資料でその算定方法による具体的な金額が確認できる場合
- 基本契約書に役務の内容と費用配賦の考え方が書かれていて、毎期の配賦計算資料で負担額が確認できる場合
つまり、契約書・請求書・計算資料のどこかに中身と計算方法が書いてあれば、新しい書類は作らなくてよいということです。困るのは、契約書が無い、あるいは契約書にも金額の決め方が書かれておらず、請求書には名目と金額しかないという場合です。
毎年作り直すのか。条件が変わらなければ1つでよい
グループ内の管理料やロイヤルティは、同じ契約で何年も続くのがふつうです。通達17-3-5は、取引が2以上の事業年度にわたって続く場合、契約を結んだ年だけでなく、役務の提供などが行われた各事業年度に特例の適用がある、としています。
そのうえで17-3-8は、取引条件や役務の内容に変更がないことが契約書などで確認できるときは、1つの特定事項記載書類を作って保存しておけばよいとしています。毎年同じものを作り直す必要はありません。
ただし趣旨説明は、ロイヤルティの算定方法を変えた、費用配賦の基準を見直した、役務の内容そのものが変わった、という場合は、改めて書類で確認できるかを検討し、必要なら新しい書類を用意することになる、としています。また、保存期間は事業年度ごとに数え、起算日はそれぞれの事業年度の確定申告期限の翌日です。古い年度の書類を使い回している間は、捨てられないということです。
いまのうちに見直しておきたいこと
この特例は、関連者との取引の内容と支払金額の計算根拠を、書類から客観的に把握できる状態にしておくためのものです。グループで会社をお持ちの場合は、次の順で手元の書類を確かめておくと、申告期限の直前に慌てずに済みます。
- 親会社・子会社など、株式の50%以上の関係にある会社との取引で、費用になっているものを洗い出す(管理料、経営指導料、ロイヤルティ、システム利用料、共用している建物や設備の負担金など)
- それぞれについて、契約書・請求書・計算資料のどこかに、役務の内容と金額の計算方法が書かれているかを見る
- 書かれていなければ、足りない事項だけを書いた書類を、その事業年度の申告期限までに用意する
- 計算方法や役務の内容を変えた年は、書類を作り直す
どの事業年度から適用されるかは、今回の趣旨説明の本文には書かれていません。決算期と取引の内容によって準備の時期が変わりますので、個別に確かめてください。グループ会社と契約書を交わすときの印紙税は継続的取引の基本となる契約書で整理しています。
よくある質問
関連者間取引に係る書類の整理保存の特例とは何ですか
新しくできたのは「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」です。関連者との一定の取引で、契約書や請求書などに取引の中身や対価の計算方法が書かれていない場合に、それを明らかにする書類を別に用意して保存するという内容です。→ 本文で読む
関連者にはどのような会社が当たりますか
対象になる相手は「関連者」です。趣旨説明は、いずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の総数等の50%以上を直接または間接に保有する関係その他の一定の特殊の関係のある法人、と説明しています。判定は移転価格税制の関連者と同様の基準によります。→ 本文で読む
グループ会社に払う経営指導料や管理費は対象になりますか
対象は、関連者から自社に対して行われる取引のうち、販売費・一般管理費その他の費用の額のもとになるものです。大きく分けて、工業所有権等の譲渡や貸付けと、一定の役務の提供の2つがあります。→ 本文で読む
契約書と請求書があれば新しい書類は要りませんか
新しい書類と聞くと、取引の説明資料を一から作る必要があるように思えますが、そうではありません。通達17-3-6は、特定事項記載書類には取引の内容のすべてを書く必要はなく、足りない事項が明らかにされていれば足りる、としています。→ 本文で読む
同じ契約が続く場合、書類は毎年作り直す必要がありますか
グループ内の管理料やロイヤルティは、同じ契約で何年も続くのがふつうです。通達17-3-5は、取引が2以上の事業年度にわたって続く場合、契約を結んだ年だけでなく、役務の提供などが行われた各事業年度に特例の適用がある、としています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「令和8年6月30日付課法2-9ほか1課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)等の趣旨説明」(2026年9月30日掲載)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/260630/index.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
グループ会社との契約書と請求書を、一度並べてみてください。
経営指導料や管理費の請求書に、役務の内容と金額の計算方法が書かれているか。契約書と計算資料で読み取れれば、新しい書類は要りません。読み取れなければ、足りない事項だけを書いた書類を申告期限までに用意します。グループで会社をお持ちの方は、契約書・請求書・配賦の計算表をお持ちください。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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