申告
海外転勤が決まったら。
1年以上の予定なら非居住者になり、最後の給与で年末調整して所得税を精算します
海外赴任の辞令が出ると、引越しやビザの準備に追われますが、税金の手続きも出国前に済ませる必要があります。
答えを先に書くと、1年以上の予定で海外勤務する人は非居住者と推定され、日本の会社は居住者としての最後の給与で年末調整をして、その年の所得税を精算します。12月を待たず、出国前に年末調整をするということです。
会社が手続きの主体ですが、ご本人が申告書を出さなければ控除は受けられません。また、国内に賃貸している不動産があると、出国後も日本での申告が続きます。国税庁のタックスアンサーNo.1920とNo.1926で確認していきます。
この記事の要点
1年以上の予定で海外の支店や子会社に転勤・出向する人は、原則として所得税法上の非居住者と推定され、国外勤務で得た給与には日本の所得税がかかりません。そのため、居住者としての最後の給与の支給時に年末調整をして、源泉徴収された所得税等を精算します。扶養控除などは出国の時の現況で判断し、確定申告が必要な人は出国までに準確定申告をします。国税庁タックスアンサーNo.1920・No.1926をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
1年以上の予定で海外勤務すると非居住者と推定される
日本国内の会社に勤める給与所得者が、1年以上の予定で海外の支店などに転勤したり海外の子会社に出向したりする場合、国外における在留期間があらかじめ1年未満であることが明らかな場合を除いて、原則として所得税法上の非居住者と推定されます。国税庁のタックスアンサーNo.1920がこの前提を示しています。
国税庁 タックスアンサー No.1920「海外勤務と所得税額の精算」
このように国外に居住することとなった人は、国外における在留期間があらかじめ1年未満であることが明らかな場合を除いて原則として、所得税法上の非居住者と推定されます。
分かれ目は「1年未満であることがあらかじめ明らかかどうか」です。赴任期間が決まっていない、あるいは1年以上の予定であれば、出国した時点で非居住者と推定されます。数か月の短期出張は、この記事の対象ではありません。
非居住者の国外勤務の給与には日本の所得税がかからない
会社からの給与だけでほかの所得がない給与所得者を前提にすると、非居住者が国外勤務で得た給与には、原則として日本の所得税は課税されません。出国後の給与は、日本の所得税の対象から外れます。
日本の会社から給与が振り込まれ続けていても、非居住者が国外での勤務で得た給与であれば、日本では課税されないのが原則です。その代わり、赴任先の国の税金の対象になります。日本側の所得税は、出国までの居住者期間の給与で区切って精算する、という流れになります。
居住者としての最後の給与で年末調整して精算する
海外に転勤または出向をする人については、居住者としての最後の給与支給の際に年末調整によって、源泉徴収された所得税および復興特別所得税(令和9年分以後は所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税)を精算する必要があります。年の途中でも、その時点で年末調整を行います。
国税庁 タックスアンサー No.1920「海外勤務と所得税額の精算」
海外に転勤または出向をする人については、居住者としての最後の給与支給の際に年末調整によって、 源泉徴収された所得税および復興特別所得税(令和9年分以後は所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税)を精算する必要があります。
毎月の源泉徴収は、年間を通じて勤務することを前提に計算されています。年の途中で居住者でなくなると、その前提が崩れるので、最後の給与で精算して、多く引かれていれば戻し、足りなければ徴収します。No.1920は、非居住者となる際の年末調整の方法は毎年12月に行う年末調整と基本的には同じ、としています。通常の年末調整の流れは年末調整の対象者と順序で整理しています。
年末調整のために会社へ出す3つの申告書
「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している給与所得者が年の中途で海外に転勤・出向するときは、保険料控除申告書、扶養控除等申告書の異動申告書(変更があれば)、基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書の3つを会社に提出します。
| 提出する申告書 | ポイント | |
|---|---|---|
| (1) | 給与所得者の保険料控除申告書 | 控除する保険料は、非居住者となる日までに支払った金額で計算する |
| (2) | 給与所得者の扶養控除等申告書の異動申告書 | 記載内容に変更がないかをチェックし、変更があれば提出する |
| (3) | 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書 | 併せて会社に提出する |
気をつけたいのは保険料控除です。生命保険料や地震保険料の控除は、非居住者となる日までに支払った金額が対象で、出国後に引き落とされる分は入りません。保険会社の控除証明書は年間の見込額で届くことが多いので、出国日までの支払額を確かめて記入します。
扶養控除などは出国の時の現況で判断する
控除対象扶養親族などになるかならないかは、出国の時の現況で判断します。配偶者や扶養親族に所得があるときは、海外勤務となる年の1年分の所得金額を出国の時の現況で見積もって、配偶者控除や配偶者特別控除、扶養控除、特定親族特別控除が受けられるかどうかを判断します。
通常の年末調整では12月31日の現況で見ますが、出国する人は出国の時が基準日になります。配偶者がパートで働いている場合は、出国後も含めたその年1年分の所得を見積もって、配偶者控除などの要否を判断します。見積もりが実際と大きく違ったときは、後で修正が必要になることも念頭に置いてください。特定親族特別控除の要件は特定親族特別控除で整理しています。
確定申告が必要な人は出国までに準確定申告
給与収入が2,000万円超の人や、主たる給与以外に一定の収入があるなど確定申告が必要な人が、納税管理人の届出をしないで出国するときは、その出国の時までに確定申告(準確定申告)をしなければなりません。年末調整だけでは済まない人がいます。
No.1920が挙げる「出国」とは、納税管理人の届出をしないで国内に住所及び居所を有しないことになることです。副業の所得や不動産の所得がある会社員は、年末調整の対象外の所得があるので、出国前に申告が必要になります。ただし、確定申告で控除しきれない外国税額控除の額、源泉徴収税額または予定納税の額がある場合は除かれています。会社員で確定申告が必要になる場合は会社員でも確定申告が必要な場合で整理しています。
なお、海外で勤務する法人の役員等は扱いが異なります。No.1920は、コード1929「海外で勤務する法人の役員などに対する給与の支払と税務」を参照するよう案内しています。役員として赴任する方は、従業員とは別の整理が必要です。
海外勤務中に国内の不動産収入があるときは納税管理人を定める
海外勤務で非居住者になった人に、国内にある不動産の貸付けによる所得など日本国内で生じた一定の所得(国内源泉所得)があるときは、日本で確定申告が必要になる場合があります。No.1926は、その場合には納税管理人を定め、届出書を所轄税務署長に提出しなければならない、としています。
自宅を貸して赴任する方が典型です。No.1926によると、国内にある不動産等の貸付けにより受け取る対価(不動産所得)は総合課税の方法で確定申告をする必要があり、納税管理人は法人でも個人でも構いません。転出の時までに納税管理人を指定した場合は、居住者期間のすべての所得と非居住者期間の国内源泉所得の合計額について、翌年2月16日から3月15日までの間に納税管理人を通じて確定申告をします。
国内にある不動産の賃貸料については、原則として非居住者がその支払を受ける際に20.42パーセントの税率で所得税等が源泉徴収されますが、土地、家屋等を自己またはその親族の居住の用に供するために借り受けた個人が支払うものは源泉徴収されません。個人に住居として貸すなら源泉徴収はなく、確定申告で納めることになります。非居住者期間中の不動産所得の金額の計算方法は、居住者の計算方法と同じです。出国前に、家族や税理士を納税管理人として届け出ておくと、赴任先から申告に追われることがなくなります。
よくある質問
海外転勤すると非居住者になりますか
日本国内の会社に勤める給与所得者が、1年以上の予定で海外の支店などに転勤したり海外の子会社に出向したりする場合、国外における在留期間があらかじめ1年未満であることが明らかな場合を除いて、原則として所得税法上の非居住者と推定されます。国税庁のタックスアンサーNo.1920がこの前提を示しています。→ 本文で読む
海外勤務中の給与に日本の所得税はかかりますか
会社からの給与だけでほかの所得がない給与所得者を前提にすると、非居住者が国外勤務で得た給与には、原則として日本の所得税は課税されません。出国後の給与は、日本の所得税の対象から外れます。→ 本文で読む
海外転勤する人の年末調整はいつ行いますか
海外に転勤または出向をする人については、居住者としての最後の給与支給の際に年末調整によって、源泉徴収された所得税および復興特別所得税(令和9年分以後は所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税)を精算する必要があります。年の途中でも、その時点で年末調整を行います。→ 本文で読む
海外転勤する年の扶養控除はどの時点で判断しますか
控除対象扶養親族などになるかならないかは、出国の時の現況で判断します。配偶者や扶養親族に所得があるときは、海外勤務となる年の1年分の所得金額を出国の時の現況で見積もって、配偶者控除や配偶者特別控除、扶養控除、特定親族特別控除が受けられるかどうかを判断します。→ 本文で読む
海外転勤の前に確定申告が必要な人はどんな人ですか
給与収入が2,000万円超の人や、主たる給与以外に一定の収入があるなど確定申告が必要な人が、納税管理人の届出をしないで出国するときは、その出国の時までに確定申告(準確定申告)をしなければなりません。年末調整だけでは済まない人がいます。→ 本文で読む
海外赴任中に自宅を貸すと日本で申告が必要ですか
海外勤務で非居住者になった人に、国内にある不動産の貸付けによる所得など日本国内で生じた一定の所得(国内源泉所得)があるときは、日本で確定申告が必要になる場合があります。No.1926は、その場合には納税管理人を定め、届出書を所轄税務署長に提出しなければならない、としています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1920 海外勤務と所得税額の精算」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1920.htm - 国税庁「No.1926 海外勤務中に不動産所得などがある場合」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1926.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
赴任が決まったら、出国日と国内に残す収入を整理してください。
出国前の年末調整は会社が行いますが、保険料控除や扶養の申告書はご本人が出す必要があります。副業や不動産の収入がある方は、出国までの準確定申告や納税管理人の届出が必要になることがあります。赴任前のあわただしい時期ですので、資料をお持ちいただければ手続きの順番を一緒に整理します。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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