経費
事業主が加害者として払った損害賠償金は必要経費になるか。
業務関連性があり、故意・重大な過失がない場合に限られます
配達の途中で事故を起こして相手に賠償金を払った。現場で他人の物を壊して弁償した。この支払いは経費になるのかというご相談です。
答えを先に書くと、業務に関連した事故で、しかも事故の原因に故意または重大な過失がない場合に限って、事業所得の必要経費になります。業務と関係のない事故はもちろん、業務中でも無免許運転や酒気帯び運転のような重大な過失があれば経費にはなりません。
従業員が起こした事故の賠償金を事業主が負担したときは、判定の物差しが少し変わります。国税庁のタックスアンサーNo.1710で順に確かめていきます。
この記事の要点
個人事業主が加害者として支払った損害賠償金(慰謝料・示談金・見舞金を含む)が事業所得の必要経費になるかは、事故の業務関連性と、事故原因に故意または重大な過失があったかで判定します。業務に関連しない事故や、無免許運転・酒気帯び運転などによる事故の賠償金は必要経費になりません。従業員の事故の賠償金を事業主が負担した場合は、事業主に故意・重大な過失がなければ業務に関連するものは必要経費です。国税庁タックスアンサーNo.1710をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
- 関連副業の必要経費
- ご案内一人親方・建設業の確定申告
損害賠償金の範囲。慰謝料・示談金・見舞金も含む
ここでいう損害賠償金は、名目を問いません。国税庁のタックスアンサーNo.1710は、この場合の損害賠償金には、慰謝料、示談金、見舞金等の名目を問わず、他人に与えた損害を補てんするために支払う一切の金額が含まれる、としています。
裁判で決まった賠償金だけでなく、示談で決めた金額、お詫びとして渡した見舞金も同じ扱いです。「見舞金だから経費」「賠償金だから経費にならない」という名前による区別はありません。問われるのは、次に見る業務との関連と、事故の原因です。
事業主が加害者の場合。業務関連性と故意・重大な過失で判定する
事業主自身が加害者になった場合、損害賠償金が事業所得の必要経費になるかどうかは、事故の業務関連性の有無と、事故原因に故意または重大な過失があったかどうかの2つで判定します。No.1710はこの判定を次のように示しています。
国税庁 タックスアンサー No.1710「事業主・使用人が加害者として損害賠償金を支払ったとき」
損害賠償金が事業所得の必要経費となるかどうかは、事故の業務関連性の有無と事故原因に故意または重大な過失があったかどうかにより判定します。
| 事故の状況 | 必要経費になるか |
|---|---|
| 業務に関連のない事故 | ならない |
| 業務に関連しているが、故意または重大な過失があった事故 | ならない |
| 業務に関連していて、故意または重大な過失がない事故 | なる |
まず、業務に関連のない事故は必要経費になりません。休日に私用で運転していて起こした事故の賠償金は、事業とは無関係です。次に、業務に関連してはいても、事故原因に故意または重大な過失があった場合も必要経費になりません。
No.1710は、必要経費になるのは、商品の配送や売掛金などの集金の途中など業務に関連した事故で、しかも故意または重大な過失がない場合に限られる、とまとめています。「業務中」と「重大な過失がない」の両方が必要です。必要経費の基本的な考え方は副業の必要経費で整理しています。
重大な過失とは。無免許・高速度・酒気帯び・信号無視
「重大な過失」があったかどうかは、加害者が本来払うべきであった注意を払ったかどうかで判定します。No.1710は、加害者の職業、地位、事故当時の周囲の状況、侵害した権利の内容および取締法規の有無などの具体的事情を考慮する、としています。
国税庁 タックスアンサー No.1710「事業主・使用人が加害者として損害賠償金を支払ったとき」
例えば、交通事故の場合ですと、無免許運転、高速度運転、酒気帯び運転、信号無視などによる事故は、特別の事情がない限り重大な過失があったとされます。
交通事故でいえば、無免許運転、高速度運転、酒気帯び運転、信号無視が重大な過失の例です。これらによる事故は、特別の事情がない限り重大な過失があったものとされ、業務中であっても賠償金は経費になりません。ふつうに注意して運転していたうえでの事故か、法令を破った結果の事故かが分かれ目です。
使用人が加害者の場合。事業主に故意・重大な過失があるか
従業員(使用人)が事故を起こし、その賠償金を事業主が負担した場合は、まず事業主自身に故意または重大な過失があったかを見ます。No.1710は、使用人の行為に関し事業主に故意または重大な過失がある場合には、使用人に故意または重大な過失がないときであっても事業主の必要経費にならない、としています。
事業主に故意または重大な過失がない場合は、使用人に故意または重大な過失があったかどうかを問わず、次のように分かれます。
| 事業主に故意・重大な過失がない場合の支払い | 必要経費になるか |
|---|---|
| 業務に関連するもの | なる |
| 業務に関連しないもので、家族従業員以外の使用人について、雇用主の立場上やむを得ず負担したもの | なる |
| その他のもの | ならない |
事業主自身の場合と違うのは2点です。ひとつは、使用人側に重大な過失があっても、事業主に過失がなければ業務関連の賠償金は経費になること。もうひとつは、業務と関連しない事故でも、家族以外の従業員について雇用主の立場上やむを得ず負担したものは経費になることです。家族従業員の私的な事故の賠償金を負担した場合は、この「やむを得ず」には入りません。雇っている人が「使用人」にあたるかどうかは一人親方は外注費か給与かの判定と重なります。
経費にするために残しておくもの
損害賠償金を必要経費にするには、業務との関連と、事故の原因に故意や重大な過失がなかったことを、あとから説明できる資料が要ります。事故の日時と場所、何の業務の途中だったか、事故証明や保険会社の書類、示談書や領収書を一式まとめておいてください。
なお、この記事は支払う側の話です。逆に事故の被害者として損害賠償金や慰謝料を受け取った場合、心身に加えられた損害に基づくものは非課税所得です。受け取る側の扱いは非課税所得の一覧で整理しています。No.1710が根拠として挙げているのは、所法45、所令98、所基通45-6~8です。
よくある質問
見舞金や示談金も損害賠償金として扱われますか
ここでいう損害賠償金は、名目を問いません。国税庁のタックスアンサーNo.1710は、この場合の損害賠償金には、慰謝料、示談金、見舞金等の名目を問わず、他人に与えた損害を補てんするために支払う一切の金額が含まれる、としています。→ 本文で読む
事業主が払った損害賠償金は必要経費になりますか
事業主自身が加害者になった場合、損害賠償金が事業所得の必要経費になるかどうかは、事故の業務関連性の有無と、事故原因に故意または重大な過失があったかどうかの2つで判定します。No.1710はこの判定を次のように示しています。→ 本文で読む
損害賠償金が経費にならない「重大な過失」とは何ですか
「重大な過失」があったかどうかは、加害者が本来払うべきであった注意を払ったかどうかで判定します。No.1710は、加害者の職業、地位、事故当時の周囲の状況、侵害した権利の内容および取締法規の有無などの具体的事情を考慮する、としています。→ 本文で読む
従業員が起こした事故の賠償金を事業主が払ったら経費になりますか
従業員(使用人)が事故を起こし、その賠償金を事業主が負担した場合は、まず事業主自身に故意または重大な過失があったかを見ます。No.1710は、使用人の行為に関し事業主に故意または重大な過失がある場合には、使用人に故意または重大な過失がないときであっても事業主の必要経費にならない、としています。→ 本文で読む
損害賠償金を経費にするにはどんな資料が必要ですか
損害賠償金を必要経費にするには、業務との関連と、事故の原因に故意や重大な過失がなかったことを、あとから説明できる資料が要ります。事故の日時と場所、何の業務の途中だったか、事故証明や保険会社の書類、示談書や領収書を一式まとめておいてください。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1710 事業主・使用人が加害者として損害賠償金を支払ったとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1710.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
事故の経緯と、支払いの根拠になった書類を残しておいてください。
損害賠償金が必要経費になるかは、業務との関連と、事故の原因に重大な過失がなかったかで決まります。示談書や保険会社の書類、事故証明など、経緯が分かる資料があれば判定できます。従業員の事故の賠償金を負担した場合は、事業主側の過失の有無が問われます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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