申告
持っている株の発行会社が破産したとき。
原則は損失にできませんが、特定管理口座に移してあれば譲渡損失とみなして通算・繰越できます
保有していた株の発行会社が破産し、株が紙くずになった。「売って損をしたわけではないが、損失として申告できないのか」というご相談です。
答えを先に書くと、原則は控除できませんが、特定口座から「特定管理口座」に移してあった株式については、取得価額を譲渡損失とみなして、ほかの株の譲渡益や配当と通算できる特例があります。控除しきれない分は翌年以後に繰り越せます。
ポイントは、上場廃止のときに特定管理口座へ移してあるかどうかです。国税庁のタックスアンサーNo.1475とNo.1474で、特例の条件と手続を確認していきます。
この記事の要点
株式の発行会社が破産して株の価値がなくなっても、その損失は原則としてほかの株の譲渡益や給与所得から控除できません。ただし、特定口座の上場株式が上場廃止後に特定管理口座に移され、発行会社に清算結了や破産手続開始の決定などの一定の事実が生じたときは、取得価額を上場株式等の譲渡損失とみなして譲渡益から控除でき、残りは損益通算と翌年以後3年間の繰越控除の対象です。国税庁タックスアンサーNo.1475・No.1474をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
原則は、価値がなくなった株の損失は控除できない
まず原則です。国税庁のタックスアンサーNo.1475は、株式または公社債の発行会社の破産等により個人が所有する株式等の価値が失われたとしても、それによる損失は原則として他の株式等の譲渡益や給与所得など他の所得の金額から控除することはできない、としています。
国税庁 タックスアンサー No.1475「破産等により株式の価値が失われたときの特例」
株式または公社債(以下「株式等」といいます。)の発行会社の破産等により個人が所有する株式等の価値が失われたとしても、それによる損失は原則として他の株式等の譲渡益や給与所得など他の所得の金額から控除することはできません。
譲渡所得の損失は「譲渡」があってはじめて生じます。会社が破産して株の価値がゼロになっても、売ったわけではないので、税金の計算上は損失が出ていない扱いになります。ここが、売って損をした場合との違いです。
特例。取得価額を上場株式等の譲渡損失とみなす
その原則に対する特例がこの制度です。No.1475は、特定口座に保管されていた内国法人の上場株式または公社債が、上場廃止となった日以後、特定管理株式等または特定口座内公社債に該当していた場合で、発行法人に清算結了等の一定の事実が生じた時は、その株式等の譲渡があったものとして、取得価額を上場株式等の譲渡損失の金額とみなし、その年の他の上場株式等の譲渡益から控除できる、としています。
「取得価額」がそのまま損失になるのがこの特例の要です。買った値段の全額が、その年に譲渡損失として生じたものとみなされます。ただし、対象は内国法人が発行した上場株式または公社債で、特定口座に保管されていたものに限られます。一般口座で持っていた株式や、もともと非上場の株式は対象になりません。
特定管理口座とは。上場廃止のときに移しておく
特例を使うには、株式が「特定管理株式等」または「特定口座内公社債」に該当している必要があります。No.1475は、それぞれ次のように定めています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 特定管理株式等 | 上場廃止となった日以後引き続き、特定口座を開設する金融商品取引業者等に開設される特定管理口座に係る振替口座簿に記載・記録され、または特定管理口座に保管の委託がされている内国法人が発行した株式または公社債 |
| 特定口座内公社債 | 特定口座に係る振替口座簿に記載・記録され、または特定口座に保管の委託がされている内国法人が発行した公社債 |
特定管理口座とは、特定口座に保管している内国法人の株式等が上場株式等に該当しないこととなったときに、その株式等を特定口座からの移管により保管の委託がされることなど一定の要件を満たす口座です。上場廃止になった株を、特定口座からそのまま受け入れる専用の口座と考えてください。
開設には手続が要ります。No.1475は、特定口座を開設している金融商品取引業者等に対して、最初に特定管理口座に上場株式等に該当しなくなった株式等を受け入れる時までに「特定管理口座開設届出書」を提出する必要がある、としています。また、異なる金融商品取引業者等の間で特定口座から特定管理口座への受入れはできませんので、特定口座がある証券会社ごとに特定管理口座を開設しておく必要があります。
譲渡があったものとされる一定の事実
特定管理口座に移してあるだけでは損失になりません。発行法人に「一定の事実」が生じた年に、譲渡があったものとみなされます。No.1475が株式について挙げている事実は次のとおりです。
| 特定管理株式等である株式に係る一定の事実 | |
|---|---|
| イ | 特定株式発行法人が解散(合併による解散を除く)をし、その清算が結了したこと |
| ロ | 特定株式発行法人が破産法の規定による破産手続開始の決定を受けたこと |
| ハ | 発行済株式の全部を無償で消滅させることを定めた会社更生法の更生計画につき認可の決定を受け、その計画に基づき発行済株式の全部を無償で消滅させたこと |
| ニ | 発行済株式の全部を無償で消滅させることを定めた民事再生法の再生計画につき認可の決定が確定し、その計画に基づき発行済株式の全部を無償で消滅させたこと |
| ホ | 特定株式発行法人が預金保険法の規定による特別危機管理開始決定を受けたこと |
破産の場合は破産手続開始の決定を受けた時点で、清算の場合は清算が結了した時点です。上場廃止になった時点ではありません。公社債についても、清算結了、破産手続の廃止・終結の決定により社債の債権の全部について弁済を受けられないことが確定したこと、更生計画・再生計画に基づき社債を無償で消滅させたこと、が一定の事実として定められています。
控除しきれない分は損益通算と3年間の繰越控除
みなされた譲渡損失は、その年のほかの上場株式等の譲渡益から控除します。No.1475は、控除しきれなかった場合は、上場株式等に係る譲渡損失の金額として損益通算および繰越控除の対象とすることができる、としています。
その先はNo.1474の一般のルールと同じです。申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等と損益通算し、それでも控除しきれない金額は翌年以後3年間にわたり繰越控除できます。繰り越すには、損失が生じた年分に付表と計算明細書を添付した確定申告書を出し、その後の年も連続して付表の添付のある確定申告書を提出する必要があります。上場株式等の譲渡がなかった年も、繰り越すための申告が必要です。しくみは株の譲渡損失の損益通算と繰越で整理しています。
なお、給与所得など株式以外の所得から控除することはできません。損益通算できる所得の範囲は損益通算できる4つの所得をご覧ください。
確定申告書に記載し、証券会社の書類を添える
この特例は確定申告で受けます。No.1475は、一定の事実が生じた年分の確定申告書に、この特例の適用を受ける旨を記載するとともに、次の書類を添付する必要がある、としています。
- 特例の対象となる株式等について、特定管理口座または特定口座を開設し、または開設していた金融商品取引業者等から交付を受けた、一定の事実等を確認した旨を証する書類
- 特例の対象となる価値を喪失した株式等とそれ以外の株式等とを区分して記載された株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
証券会社から届く「価値喪失株式等に係る証明書」のような書類が、最初の書類に当たります。一定の事実が生じた年分の申告で使う特例ですので、破産手続開始の決定が出た年を確かめて、その年の確定申告に含めてください。配当と通算するときの申告方法の選び方は配当所得の3つの選び方で整理しています。
よくある質問
株の発行会社が破産して価値がなくなった損失は控除できますか
まず原則です。国税庁のタックスアンサーNo.1475は、株式または公社債の発行会社の破産等により個人が所有する株式等の価値が失われたとしても、それによる損失は原則として他の株式等の譲渡益や給与所得など他の所得の金額から控除することはできない、としています。→ 本文で読む
破産した会社の株の損失を申告できる特例はありますか
その原則に対する特例がこの制度です。No.1475は、特定口座に保管されていた内国法人の上場株式または公社債が、上場廃止となった日以後、特定管理株式等または特定口座内公社債に該当していた場合で、発行法人に清算結了等の一定の事実が生じた時は、その株式等の譲渡があったものとして、 取得価額を上場株式等の譲渡損失の金額とみなし 、その年の他の上場株式等の譲渡益から控除できる、としています。→ 本文で読む
特定管理口座とは何ですか
特例を使うには、株式が「特定管理株式等」または「特定口座内公社債」に該当している必要があります。No.1475は、それぞれ次のように定めています。 特定管理口座とは、特定口座に保管している内国法人の株式等が上場株式等に該当しないこととなったときに、その株式等を特定口座からの移管により保管の委託がされることなど一定の要件を満たす口座です。 上場廃止になった株を、特定口座からそのまま受け入れる専用の口座 と考えてください。→ 本文で読む
上場廃止になった時点で株の損失を申告できますか
特定管理口座に移してあるだけでは損失になりません。発行法人に「一定の事実」が生じた年に、譲渡があったものとみなされます。No.1475が株式について挙げている事実は次のとおりです。→ 本文で読む
破産した会社の株の損失は翌年に繰り越せますか
みなされた譲渡損失は、その年のほかの上場株式等の譲渡益から控除します。No.1475は、控除しきれなかった場合は、上場株式等に係る譲渡損失の金額として損益通算および繰越控除の対象とすることができる、としています。→ 本文で読む
破産した会社の株の損失を申告するには何が必要ですか
この特例は確定申告で受けます。No.1475は、一定の事実が生じた年分の確定申告書に、この特例の適用を受ける旨を記載するとともに、次の書類を添付する必要がある、としています。 証券会社から届く「価値喪失株式等に係る証明書」のような書類が、最初の書類に当たります。 一定の事実が生じた年分の申告で使う特例 ですので、破産手続開始の決定が出た年を確かめて、その年の確定申告に含めてください。配当と通算するときの申告方法の選び方は 配当所得の3つの選び方 で整理しています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1475 破産等により株式の価値が失われたときの特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1475.htm - 国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1474.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
保有銘柄の上場廃止の知らせが来たら、証券会社に特定管理口座の手続を確かめてください。
特例が使えるかどうかは、上場廃止のときに特定口座から特定管理口座へ移してあるかで決まります。移していなければ、後から損失にはできません。清算結了や破産手続開始の決定があった年に、証券会社から届く書類を添えて申告します。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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