申告
上場株式の配当の申告分離課税。
税率は20.315%、株の譲渡損失と損益通算できるが配当控除は使えません
上場株式の配当を受け取っている方から、「配当は申告したほうが得ですか」と聞かれます。
答えを先に書くと、上場株式等の配当には申告不要・総合課税・申告分離課税の3つの方法があり、株の譲渡損失と相殺したいなら申告分離課税、配当控除を使いたいなら総合課税、どちらも要らなければ申告不要という選び方になります。申告分離課税の税率は20.315%です。
ただし、申告すると配当が合計所得金額に含まれ、扶養控除などの判定が変わることがあります。一度選んだ方法はあとから変更できません。国税庁のタックスアンサーNo.1331を中心に、選ぶ前に知っておきたいことを確認していきます。
この記事の要点
上場株式等の配当(大口株主等を除く)は、総合課税に代えて申告分離課税を選択できます。税率は20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、地方税5%)で、申告分離課税を選ぶと上場株式等の譲渡損失と損益通算できますが、配当控除は使えません。申告する配当は全額同じ方法を選び、あとから変更できません。申告した配当は合計所得金額に含まれます。国税庁タックスアンサーNo.1331・No.1330・No.1474をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
上場株式等の配当は3つの方法から選ぶ。申告不要・総合課税・申告分離課税
上場株式等の配当等は、確定申告をしない(申告不要)、総合課税で申告する、申告分離課税で申告する、の3つから選べます。国税庁のタックスアンサーNo.1331は、上場株式等の配当等(大口株主等が受けるものを除く)については、総合課税に代えて他の所得の金額と区分して税金を計算する申告分離課税を選択することができる、としています。
国税庁 タックスアンサー No.1331「上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」
上場株式等の配当等を申告する場合には、その申告する上場株式等の配当等の全額について、総合課税と申告分離課税のいずれかを選択することになります。
申告する場合は、申告する配当の全額について、総合課税か申告分離課税のどちらか一方を選びます。銘柄ごとに分けることはできません。No.1331は、上場株式等の配当等に関する課税関係の主な部分を次のように整理しています。
| 総合課税を選択 | 申告分離課税を選択 | 確定申告をしない | |
|---|---|---|---|
| 借入金利子の控除 | あり | あり | なし |
| 税率 | 累進税率 | 所得税15.315% 地方税5% | 所得税15.315% 地方税5% |
| 配当控除 | あり | なし | なし |
| 上場株式等の譲渡損失との損益通算 | なし | あり | なし |
| 扶養控除等の判定 | 合計所得金額に含まれる | 合計所得金額に含まれる | 合計所得金額に含まれない |
損益通算を使えるのは申告分離課税だけ、配当控除を使えるのは総合課税だけ、合計所得金額に含まれないのは申告不要だけです。この表を見ながら、何を優先するかで方法を決めます。
申告分離課税の税率は20.315%
申告分離課税を選んだ配当の税率は20.315%です。No.1331は、申告分離課税では、20.315パーセント(所得税および復興特別所得税15.315パーセント、地方税5パーセント)の税率が適用される、としています。
総合課税は累進税率ですから、ほかの所得が多い方ほど税率が上がります。申告分離課税は、ほかの所得がいくらあっても20.315%で固定です。No.1331の注記は、平成25年から令和29年の各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(その年分の基準所得税額の2.1パーセント)を併せて申告・納付することになる、としています。
さらに、令和9年分以後は内訳が変わります。No.1331は、復興特別所得税の税率が基準所得税額の1.1パーセントとなり、防衛特別所得税を基準所得税額の1パーセントの税率で、所得税および復興特別所得税と合わせて申告・納付する、としています。内訳は変わりますが、No.1331は合計税率に変更はない、としています。
受け取るときに15.315%(他に地方税5%)が源泉徴収されている
上場株式等の配当は、受け取る時点で税金が差し引かれています。No.1331は、上場株式等の配当等(大口株主等が支払いを受けるものを除く)は、15.315パーセント(他に地方税5パーセント)の税率により所得税および復興特別所得税が源泉徴収される、としています。
申告分離課税の税率と源泉徴収の税率は同じです。ですから、申告分離課税で申告しても、損益通算などがなければ税額は変わりません。申告分離課税を選ぶ意味は、次に見る譲渡損失との損益通算にあります。
源泉徴収の内訳も、令和9年1月1日以後に生ずる所得については変わります。No.1331は、復興特別所得税の税率が1.1パーセントに引き下げられ、防衛特別所得税(源泉徴収すべき所得税の額の1%相当額)が併せて源泉徴収されるとしたうえで、合計税率に変更はないので、源泉徴収税額の計算方法に変更は生じない、としています。配当所得の計算の基本はNo.1330「配当金を受け取ったとき」にあり、収入金額から株式などを取得するための借入金の利子を差し引いて配当所得の金額を計算します。
申告分離課税を選ぶと、株の譲渡損失と損益通算できる
申告分離課税を選ぶ最大の理由は、上場株式等の譲渡損失との損益通算です。No.1331は、上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合またはその年の前年以前3年内の各年に生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額のうち前年以前で控除されていないものがある場合には、一定の要件の下、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等の金額から控除することができる、としています。
国税庁 タックスアンサー No.1474「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
確定申告により、その年分の上場株式等の配当等に係る利子所得の金額および配当所得の金額(上場株式等に係る配当所得については、申告分離課税を選択したものに限ります。)と損益通算することができます。
株を売って損が出た年に配当を受け取っていれば、申告分離課税で配当を申告することで、配当から源泉徴収された税金が戻ることがあります。控除できるのは配当所得等の金額までです。No.1331は「当該上場株式等の配当所得等の金額を限度とします」としています。総合課税を選んだ配当とは通算できません。損益通算と繰越控除の手続は株の譲渡損失は配当と通算、3年間繰越できるで確認できます。
申告分離課税では配当控除は使えない
申告分離課税を選んだ配当には、配当控除の適用はありません。No.1331は、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得については、配当控除の適用はありません、と明記しています。
配当控除は、総合課税で申告した配当について受けられる税額控除です。No.1330は、総合課税の対象とした配当所得については、一定のものを除き配当控除の適用を受けることができる、としています。損益通算と配当控除は、同じ配当について両方は使えません。譲渡損失がある年は申告分離課税、ない年で所得が低めの方は総合課税、と年ごとに考えることになります。なお、No.1331は、外国法人から受ける配当等や投資法人から支払を受ける配当等などは配当控除の対象とならない、としています。総合課税を選んでも配当控除が使えない配当がある点は、選ぶ前に確かめてください。
申告すると合計所得金額に含まれる。扶養控除等の判定に注意
配当を申告すると、総合課税でも申告分離課税でも、その配当は合計所得金額に含まれます。No.1331の表は、扶養控除等の判定について、総合課税・申告分離課税は「合計所得金額に含まれる」、確定申告をしない場合は「合計所得金額に含まれない」としています。
ここは見落としやすいところです。配偶者や親を扶養に入れている場合に、その扶養されている側が配当を申告すると、合計所得金額が増えて扶養控除や配偶者控除の判定が変わることがあります。No.1331の注記は、損益通算の特例の適用を受けている場合はその適用後の金額、繰越控除の適用を受けている場合はその適用前の金額になる、としています。損益通算で配当が相殺されれば判定上の所得は減りますが、繰越控除で相殺しても判定上は減りません。扶養控除の要件は扶養控除の4段階で整理しています。
一度選んだ方法は変更できない。大口株主等は総合課税だけ
確定申告で選んだ方法は、あとから変更できません。No.1331は、申告不要、申告分離課税、総合課税のいずれによるかは確定申告において選択し、確定申告において選択した、または、選択しなかった方法は、その後、修正申告や更正の請求において変更することはできない、としています。
「申告不要にしたが、あとで申告分離課税にして損益通算したい」「総合課税で申告したが、申告分離課税に変えたい」は、いずれもできません。申告書を出す前に決めきる必要があります。
もうひとつ、大口株主等の扱いです。No.1331は、大口株主等が支払いを受ける上場株式等の配当等は総合課税の対象となり、申告分離課税や確定申告不要制度(少額配当である場合を除く)を選択することはできない、としています。ここでの大口株主等には、No.1330に掲げる発行済株式の総数等の3パーセント以上を有する個人のほか、令和5年10月1日以後に支払われる配当について、同族会社である法人の保有分を合算して3パーセント以上となる場合の受取人も含まれます。大口株主等が受ける配当は20.42パーセントの税率で源泉徴収され、総合課税で申告することになります。特定口座に配当を受け入れている方は特定口座制度もあわせてご覧ください。
よくある質問
上場株式の配当の申告方法にはどのような選択肢がありますか
上場株式等の配当等は、確定申告をしない(申告不要)、総合課税で申告する、申告分離課税で申告する、の3つから選べます。国税庁のタックスアンサーNo.1331は、上場株式等の配当等(大口株主等が受けるものを除く)については、総合課税に代えて他の所得の金額と区分して税金を計算する申告分離課税を選択することができる、としています。→ 本文で読む
配当の申告分離課税の税率はいくらですか
申告分離課税を選んだ配当の税率は20.315%です。No.1331は、申告分離課税では、20.315パーセント(所得税および復興特別所得税15.315パーセント、地方税5パーセント)の税率が適用される、としています。→ 本文で読む
配当から源泉徴収されている税率はいくらですか
上場株式等の配当は、受け取る時点で税金が差し引かれています。No.1331は、上場株式等の配当等(大口株主等が支払いを受けるものを除く)は、15.315パーセント(他に地方税5パーセント)の税率により所得税および復興特別所得税が源泉徴収される、としています。→ 本文で読む
株の譲渡損失と配当を損益通算するにはどの方法で申告しますか
申告分離課税を選ぶ最大の理由は、上場株式等の譲渡損失との損益通算です。No.1331は、上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合またはその年の前年以前3年内の各年に生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額のうち前年以前で控除されていないものがある場合には、一定の要件の下、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等の金額から控除することができる、としています。→ 本文で読む
申告分離課税を選ぶと配当控除は受けられますか
申告分離課税を選んだ配当には、配当控除の適用はありません。No.1331は、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得については、配当控除の適用はありません、と明記しています。 配当控除は、総合課税で申告した配当について受けられる税額控除です。No.1330は、総合課税の対象とした配当所得については、一定のものを除き配当控除の適用を受けることができる、としています。 損益通算と配当控除は、同じ配当について両方は使えません。 譲渡損失がある年は申告分離課税、ない年で所得が低めの方は総合課税、と年ごとに考えることになります。→ 本文で読む
配当を申告すると扶養控除の判定に影響しますか
配当を申告すると、総合課税でも申告分離課税でも、その配当は合計所得金額に含まれます。No.1331の表は、扶養控除等の判定について、総合課税・申告分離課税は「合計所得金額に含まれる」、確定申告をしない場合は「合計所得金額に含まれない」としています。→ 本文で読む
配当の申告方法はあとから変更できますか
確定申告で選んだ方法は、あとから変更できません。No.1331は、申告不要、申告分離課税、総合課税のいずれによるかは確定申告において選択し、確定申告において選択した、または、選択しなかった方法は、その後、修正申告や更正の請求において変更することはできない、としています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1331.htm - 国税庁「No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1330.htm - 国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1474.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
配当の申告方法は、株の損益と家族の扶養をあわせて決めてください。
譲渡損失と相殺するなら申告分離課税、配当控除を使うなら総合課税、どちらも使わないなら申告不要と、目的で方法が分かれます。申告すると合計所得金額が増え、扶養に入っている方は判定が変わることがあります。証券会社の年間取引報告書と配当の支払通知書をお持ちいただければ、どの方法が有利かを計算して比べます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
あわせて読む
同じテーマの記事
株式・投資・保険金の税金
慰謝料・損害賠償金は非課税。事業の補てん分は収入
交通事故などで加害者から受け取る治療費・慰謝料・損害賠償金は、原則として非課税です。
株式・投資・保険金の税金
公社債の償還金の税金。源泉分離課税と申告分離課税
公社債の償還金の課税は2つに分かれます。
株式・投資・保険金の税金
金融類似商品の税金は20.315%の源泉分離課税。対象は6つ
金融類似商品の収益には、一律20.315パーセント(所得税15.315パーセント、地方税5パー…
株式・投資・保険金の税金
満期保険金・解約返戻金の税金は一時所得か贈与税
生命保険の満期や解約で保険金を受け取った場合、保険料の負担者と保険金受取人が同一人なら所得税、…