譲渡
土地建物を売ったときの収入金額。
売買代金のほか、固定資産税の精算金や物で受け取った分も含めます。分割払いでも売った年の収入です
土地や建物を売った方の申告で、「収入金額は売買契約書の金額ですよね」と確認されることがよくあります。
答えを先に書くと、基本は買主から受け取る金銭の額ですが、固定資産税の精算金や、金銭以外で受け取ったものの時価も収入金額に含めます。契約書の売買代金だけを写すと、収入金額が少なくなっていることがあります。
また、法人に安く売った場合や、代金を何年かに分けて受け取る場合には、収入金額の考え方に特別な決まりがあります。国税庁のタックスアンサーNo.3214で、収入金額に何を含めるのかを順に確認していきます。
この記事の要点
土地建物の譲渡所得の収入金額は、通常、買主から受け取る金銭の額です。譲渡した日から年末までの固定資産税・都市計画税に相当する額を受け取ったときは収入金額に含め、金銭以外で受け取った物や権利は時価で見ます。法人に時価の2分の1未満で売った・贈与した場合は時価が収入金額になり、代金を2年以上に分けて受け取っても全額が売った年の収入です。国税庁タックスアンサーNo.3214・No.3202をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
収入金額は、通常、買主から受け取る金銭の額
土地建物の譲渡所得の収入金額は、通常、買主から受け取る金銭の額です。国税庁のタックスアンサーNo.3214は、譲渡所得の収入金額は、通常、土地や建物の譲渡の対価として買主から受け取る金銭の額である、としています。
売買契約書に書かれた売買代金が出発点です。ただし、No.3214は「通常」と断ったうえで、収入金額に含めるものをいくつか追加で挙げています。契約書の金額をそのまま写すだけでは足りない場合がある、というのがこの記事のポイントです。順に見ていきます。
固定資産税・都市計画税の精算金は収入金額に含める
決済のときに買主から受け取る固定資産税・都市計画税の精算金は、収入金額に含めます。No.3214は、譲渡代金のほかに、譲渡した日から年末までの期間に対応する固定資産税および都市計画税(未経過固定資産税等)に相当する額の支払を受けた場合には、その額は譲渡価額(収入金額)に算入される、としています。
国税庁 タックスアンサー No.3214「土地建物を売ったときの収入金額に含める金額」
譲渡代金のほかに、譲渡した日から年末までの期間に対応する固定資産税および都市計画税(未経過固定資産税等)に相当する額の支払を受けた場合には、その額は譲渡価額(収入金額)に算入されます。
不動産の取引では、その年の固定資産税を売主が納めたうえで、引渡し日以降の分を買主が売主に支払う、という精算が広く行われています。売主の感覚では「税金を立て替えた分を返してもらった」ものですが、税務上は税金の精算ではなく、売買代金の一部として扱います。固定資産税は、その年の所有者(売主)が納める税金であって、買主に納税義務が移るわけではないからです。決済時の精算書に「固定資産税精算金」とあれば、その額を収入金額に足してください。
金銭以外で受け取ったものは時価。その他の経済的な利益も含む
金銭の代わりに物や権利を受け取った場合は、その時価が収入金額になります。No.3214は、金銭の代わりに物や権利などを受け取った場合も、その物や権利などの時価が収入金額になる、としています。
たとえば、土地を渡す代わりに別の土地や建物を受け取る交換のような取引や、代金の一部を物で受け取る取引です。現金が入ってこなくても、受け取った物や権利の時価で収入があったものとして計算します。
さらに、No.3214は、資産を譲り渡すことによってその他経済的な利益を受けた場合は、その経済的な利益も収入金額に含まれる、としています。売主の借金を買主が引き受けてくれた、といった場合の利益も、収入金額の一部です。「いくら受け取ったか」ではなく「いくら分の利益を得たか」で見る、と考えてください。
法人に時価の2分の1未満で売った・贈与したときは時価が収入金額
個人が法人に対して土地建物を時価の2分の1を下回る価額で売ったり、贈与したりした場合は、実際の代金ではなく時価が収入金額になります。No.3214は、個人が法人に対して土地建物を時価の2分の1を下回る価額で売った場合や贈与した場合はその土地建物の時価が収入金額になる、としています。
国税庁 タックスアンサー No.3214「土地建物を売ったときの収入金額に含める金額」
個人が法人に対して土地建物を時価の2分の1を下回る価額で売った場合や贈与した場合はその土地建物の時価が収入金額になります。
ご自身が経営する会社に、個人で持っている土地を安く売る、あるいは無償で移す、という場面で問題になります。受け取った金額がゼロでも、時価で売ったものとして譲渡所得の計算をします。相手が法人の場合に限った決まりです。個人間の取引には別の考え方がありますが、No.3214には書かれていませんので、ここでは法人相手の場合として押さえてください。会社に資産を移すときは、時価の資料を先にそろえておく必要があります。
現物出資・代物弁済・借地権の消滅の場合の収入金額
売った場合でなくても、収入金額があるものとして扱う場面があります。No.3214は、次の3つを挙げています。
| 場面 | 収入金額になるもの |
|---|---|
| イ 法人に対して土地建物を現物出資した | 受け取る出資持分や株式の時価 |
| ロ 債務の弁済のために土地建物を債権者に渡した | その土地建物の時価 |
| ハ 借地権などの資産を消滅させた | その対価として一時に受ける補償金など |
いずれも、お金を受け取って売ったわけではないのに、譲渡所得の計算をする場面です。現物出資は株式を受け取る取引、代物弁済は借金を土地建物で返す取引で、どちらも土地建物を手放して何かを得ていますから、譲渡があったものとして扱います。借地権を地主に返して補償金を受け取った場合も、その補償金が収入金額です。売るために借家人に払った立退料は譲渡費用になりますが、その考え方は立退料は必要経費か取得費かで整理しています。
代金を2年以上に分けて受け取っても、売った年の収入金額
売却代金を何年かに分けて受け取る契約でも、全額が売った年の収入金額です。No.3214は、1つの契約に基づく土地などの売却代金を2年以上に分けて受け取る場合、その売却代金の全額がその土地建物を譲渡した年の収入金額になる、としています。
「今年は半分しか受け取っていないから、半分だけ申告する」ということはできません。譲渡した年に、契約で決まった代金の全額を収入金額として申告します。まだ受け取っていない代金の分の税金も、売った年に納めることになりますから、分割払いの契約をするときは、納税資金を手元に確保しておく必要があります。
収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いて譲渡所得を計算する
収入金額が決まったら、そこから取得費と譲渡費用を差し引いて譲渡所得を計算します。No.3202は、譲渡所得の金額は、土地や建物を売った金額(収入金額)から取得費と譲渡費用を差し引いて計算する、としています。
取得費は、買い入れたときの購入代金や購入手数料などに、その後の改良費・設備費を加えた合計額で、建物は所有期間中の減価償却費相当額を差し引きます。No.3202は、取得費が分からなかったり、実際の取得費が譲渡価額の5パーセントよりも少ないときは、譲渡価額の5パーセントを取得費(概算取得費)とすることができる、としています。ここでいう譲渡価額は、この記事で見てきた収入金額です。固定資産税の精算金を収入金額に含めると、概算取得費もその分だけ大きくなります。詳しくは取得費が分からないときの5%で確認できます。
譲渡費用は、No.3202によれば、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、売却するときに借家人などに支払った立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などです。収入金額を正しく拾い、取得費と譲渡費用を漏らさず集めることが、譲渡所得の計算の基本です。自宅を売った場合の特例はマイホームを売ったときの特別控除にまとめています。
よくある質問
土地建物を売ったときの収入金額は何ですか
土地建物の譲渡所得の収入金額は、通常、買主から受け取る金銭の額です。国税庁のタックスアンサーNo.3214は、譲渡所得の収入金額は、通常、土地や建物の譲渡の対価として買主から受け取る金銭の額である、としています。→ 本文で読む
買主から受け取った固定資産税の精算金は収入金額に含めますか
決済のときに買主から受け取る固定資産税・都市計画税の精算金は、収入金額に含めます。No.3214は、譲渡代金のほかに、譲渡した日から年末までの期間に対応する固定資産税および都市計画税(未経過固定資産税等)に相当する額の支払を受けた場合には、その額は譲渡価額(収入金額)に算入される、としています。→ 本文で読む
代金を金銭以外で受け取った場合の収入金額はどうなりますか
金銭の代わりに物や権利を受け取った場合は、その時価が収入金額になります。No.3214は、金銭の代わりに物や権利などを受け取った場合も、その物や権利などの時価が収入金額になる、としています。→ 本文で読む
自分の会社に土地を安く売ったとき、収入金額はいくらになりますか
個人が法人に対して土地建物を時価の2分の1を下回る価額で売ったり、贈与したりした場合は、実際の代金ではなく時価が収入金額になります。No.3214は、個人が法人に対して土地建物を時価の2分の1を下回る価額で売った場合や贈与した場合はその土地建物の時価が収入金額になる、としています。→ 本文で読む
借金の代わりに土地建物を渡した場合も譲渡所得の申告が必要ですか
売った場合でなくても、収入金額があるものとして扱う場面があります。No.3214は、次の3つを挙げています。 いずれも、お金を受け取って売ったわけではないのに、譲渡所得の計算をする場面です。 現物出資は株式を受け取る取引、代物弁済は借金を土地建物で返す取引 で、どちらも土地建物を手放して何かを得ていますから、譲渡があったものとして扱います。 借地権を地主に返して補償金を受け取った場合も、その補償金が収入金額です。 売るために借家人に払った立退料は譲渡費用になりますが、その考え方は 立退料は必要経費か取得費か で整理しています。→ 本文で読む
売却代金を分割で受け取る場合、収入金額はどの年に計上しますか
売却代金を何年かに分けて受け取る契約でも、全額が売った年の収入金額です。No.3214は、1つの契約に基づく土地などの売却代金を2年以上に分けて受け取る場合、その売却代金の全額がその土地建物を譲渡した年の収入金額になる、としています。→ 本文で読む
譲渡所得は収入金額から何を差し引いて計算しますか
収入金額が決まったら、そこから取得費と譲渡費用を差し引いて譲渡所得を計算します。No.3202は、譲渡所得の金額は、土地や建物を売った金額(収入金額)から取得費と譲渡費用を差し引いて計算する、としています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.3214 土地建物を売ったときの収入金額に含める金額」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3214.htm - 国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
売買契約書と決済時の精算書を、両方そろえてください。
収入金額は契約書の売買代金だけではなく、決済時に受け取った固定資産税の精算金も含めます。法人への売却や親族間の取引では、受け取った金額ではなく時価で見る場合があります。契約書・精算書・取得時の資料をお持ちいただければ、収入金額と取得費・譲渡費用を並べて譲渡所得を計算します。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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