譲渡
譲渡費用になるものは売るために直接かかった費用。
仲介手数料・印紙税・立退料・取壊し費用・違約金・名義書換料
土地や建物を売ったときの税金は、売った金額そのものではなく、取得費と譲渡費用を差し引いた残りにかかります。差し引ける費用を落とさないことが、そのまま税額に効いてきます。
答えを先に書くと、譲渡費用とは土地や建物を売るために直接かかった費用のことで、国税庁は仲介手数料、印紙税、立退料、取壊し費用、違約金、名義書換料の6つを主なものとして挙げています。
一方で、持っている間の修繕費や固定資産税は譲渡費用になりません。国税庁のタックスアンサーNo.3255で、何が入り何が入らないかを確認し、取得費との違いもあわせて見ていきます。
この記事の要点
譲渡所得は、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。譲渡費用とは売るために直接かかった費用で、国税庁は仲介手数料、売主負担の印紙税、貸家を売るための立退料、建物の取壊し費用と損失額、有利に売るための違約金、借地権の名義書換料の6つを挙げています。修繕費や固定資産税は譲渡費用になりません。国税庁タックスアンサーNo.3255をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
譲渡費用は売るために直接かかった費用
譲渡所得は、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。国税庁のタックスアンサーNo.3255は、譲渡費用とは土地や建物を売るために直接かかった費用のこと、と定義しています。「売るために」「直接」の2つが判断の軸です。
国税庁 タックスアンサー No.3255「譲渡費用となるもの」
譲渡費用とは、土地や建物を売るために直接かかった費用のことです。
売った金額が大きくても、取得費と譲渡費用を差し引いた残りが譲渡所得です。譲渡費用を漏らすと、そのぶん譲渡所得が大きく計算され、税金が増えます。逆に、譲渡費用に当たらないものを入れると、後で否認されます。何が入るかを国税庁の列挙で確かめていきます。
主な譲渡費用は6つ
No.3255は、譲渡費用の主なものとして6つを挙げています。いずれも「売るために直接かかった」という性質を持つ費用です。
| 主な譲渡費用 | |
|---|---|
| (1) | 土地や建物を売るために支払った仲介手数料 |
| (2) | 印紙税で売主が負担したもの |
| (3) | 貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料 |
| (4) | 土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額 |
| (5) | 既に売買契約を締結している資産をさらに有利な条件で売るために支払った違約金 |
| (6) | 借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など |
いちばん金額が大きく、ほぼすべての売却で出てくるのが仲介手数料です。不動産会社に支払ったときの領収書を必ず残してください。売買契約書に貼った印紙税も、売主が負担した分は譲渡費用です。買主が負担した印紙税は、売主の譲渡費用にはなりません。
立退料と取壊し費用。売るためなら譲渡費用
貸家を売るために借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料は、譲渡費用です。No.3255の(3)がこれに当たります。ただし、立退料はすべてが譲渡費用になるわけではありません。No.1382は、立退料の扱いを目的によって分けています。
No.1382によれば、賃貸している建物やその敷地を譲渡するために支払う立退料は譲渡費用ですが、それ以外で不動産所得の基因となっていた建物の賃借人を立ち退かせるための立退料は不動産所得の必要経費、土地建物を取得する際に使用者に支払う立退料は取得費です。「売るため」に払ったかどうかで、譲渡費用になるかが決まります。くわしくは立退料は必要経費か取得費かで整理しています。
取壊し費用も同じ考え方です。No.3255の(4)は、土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用と、その建物の損失額を譲渡費用としています。古家を壊して土地として売る場合、工事代金だけでなく、壊した建物の損失額も譲渡費用に入るということです。建物の資料もあわせて残してください。
違約金と名義書換料
No.3255の(5)は、既に売買契約を締結している資産をさらに有利な条件で売るために支払った違約金です。No.3255はこれを、土地などを売る契約をした後、その土地などをより高い価額で他に売却するために既契約者との契約解除に伴い支出した違約金のこと、と説明しています。
先に契約した相手に違約金を払って解除し、より高く買う別の相手に売った場合、その違約金は高く売るために直接かかった費用として譲渡費用になります。単に売却をやめたときの違約金とは性質が違います。
(6)は、借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料などです。借地権の譲渡には地主の承諾が必要で、その際に支払う名義書換料は、借地権を売るために直接かかった費用として譲渡費用に入ります。
譲渡費用にならないもの。維持管理の費用と取立て費用
譲渡費用は売るために直接かかった費用ですから、資産を持っている間にかかった費用は入りません。No.3255は、修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用、売った代金の取立てのための費用などは譲渡費用にならない、としています。
国税庁 タックスアンサー No.3255「譲渡費用となるもの」
したがって、修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用、売った代金の取立てのための費用などは譲渡費用になりません。
| 費用 | 譲渡費用になるか |
|---|---|
| 売るために支払った仲介手数料 | なる |
| 持っている間の修繕費 | ならない(維持管理の費用) |
| 固定資産税 | ならない(維持管理の費用) |
| 売った代金の取立てのための費用 | ならない |
売る直前に修繕をした場合でも、それが資産の維持や管理のための費用であれば譲渡費用ではありません。「売るために直接」かかったといえるかどうかを、費用ごとに考えてください。判断に迷う費用は、領収書とあわせて何のための支出だったかを記録しておくと確認しやすくなります。
取得費との違い。買うときの費用は取得費
譲渡所得の計算で差し引くもうひとつの項目が取得費です。No.3252は、取得費には売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料のほか設備費や改良費なども含まれる、としています。売るときの費用が譲渡費用、買うときの費用が取得費という分け方です。
No.3252が取得費に含まれるものとして挙げるのは、購入時に納めた登録免許税・不動産取得税・印紙税、借主を立ち退かせるために支払った立退料、造成費用、測量費、所有権を確保するための訴訟費用、当初から土地の利用が目的で建物付の土地を購入しておおむね1年以内に取り壊した場合の建物の購入代金や取壊し費用、使用開始日までの借入金の利子、他の物件を取得するために既契約を解除した違約金などです。同じ印紙税、立退料、取壊し費用、違約金でも、買うときのものは取得費、売るときのものは譲渡費用になります。
なお、No.3252によれば、建物の取得費は購入代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額で、事業所得などの必要経費に算入されたものは取得費に含まれません。購入時の資料がなく取得費が分からない場合の扱いは取得費が分からないときで整理しています。申告の期限と書類は譲渡所得の申告期限をご覧ください。
よくある質問
譲渡費用とは何ですか
譲渡所得は、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。国税庁のタックスアンサーNo.3255は、譲渡費用とは土地や建物を売るために直接かかった費用のこと、と定義しています。「売るために」「直接」の2つが判断の軸です。→ 本文で読む
不動産を売ったときの譲渡費用には何が入りますか
No.3255は、譲渡費用の主なものとして6つを挙げています。いずれも「売るために直接かかった」という性質を持つ費用です。 いちばん金額が大きく、ほぼすべての売却で出てくるのが 仲介手数料 です。不動産会社に支払ったときの領収書を必ず残してください。売買契約書に貼った 印紙税 も、売主が負担した分は譲渡費用です。 買主が負担した印紙税は、売主の譲渡費用にはなりません。→ 本文で読む
古家を取り壊して土地を売った場合の取壊し費用は譲渡費用になりますか
貸家を売るために借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料は、譲渡費用です。No.3255の(3)がこれに当たります。ただし、立退料はすべてが譲渡費用になるわけではありません。No.1382は、立退料の扱いを目的によって分けています。→ 本文で読む
売買契約を解除して払った違約金は譲渡費用になりますか
No.3255の(5)は、既に売買契約を締結している資産をさらに有利な条件で売るために支払った違約金です。No.3255はこれを、土地などを売る契約をした後、その土地などをより高い価額で他に売却するために既契約者との契約解除に伴い支出した違約金のこと、と説明しています。→ 本文で読む
売る前にした修繕の費用や固定資産税は譲渡費用になりますか
譲渡費用は売るために直接かかった費用ですから、資産を持っている間にかかった費用は入りません。No.3255は、修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用、売った代金の取立てのための費用などは譲渡費用にならない、としています。→ 本文で読む
譲渡費用と取得費はどう違いますか
譲渡所得の計算で差し引くもうひとつの項目が取得費です。No.3252は、取得費には売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料のほか設備費や改良費なども含まれる、としています。 売るときの費用が譲渡費用、買うときの費用が取得費 という分け方です。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm - 国税庁「No.3252 取得費となるもの」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3252.htm - 国税庁「No.1382 立退料を支払ったとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1382.htm
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
売却に関わる領収書は、売るための費用か、買ったときの費用かで分けて保管してください。
同じ「不動産にかかった費用」でも、売るために直接かかったものは譲渡費用、買ったときにかかったものは取得費、持っている間の修繕や税金はどちらにも入りません。仲介手数料の領収書、売買契約書、取壊し工事の請求書、立退料の支払記録をお持ちいただければ、差し引ける費用を漏れなく整理します。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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