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源泉徴収

育成就労外国人に払う給与は、給与所得として源泉徴収します。
国税庁の文書回答事例が出ました

技能実習生を受け入れている事業者の方に関わる話です。

令和9年4月1日から、技能実習制度に代わって育成就労制度が始まります。では、育成就労で来た方に払う給与から源泉徴収するのか。租税条約の免税は使えるのか。

この点について、出入国在留管理庁と厚生労働省が国税庁に照会し、令和8年9月15日付で回答が出ました。結論は「給与所得として源泉徴収の対象」です。順に見ていきます。

公開 最終更新

この記事の要点

令和9年4月1日から育成就労制度の運用が始まります。出入国在留管理庁と厚生労働省の照会に対し、国税庁は令和8年9月15日付で「貴見のとおりで差し支えありません」と回答しました。育成就労外国人は原則として租税条約にいう「専ら…訓練を受ける」者に該当せず、育成就労実施者から受ける給与は給与所得として所得税の課税対象、源泉徴収の対象になる、という内容です。技能実習制度とは制度の目的が異なる点が理由として挙げられています。関係する法令条項は所得税法第28条、第183条、租税条約。国税庁の文書回答事例をもとに整理しました。

先に見ておくと分かりやすいもの

結論:給与所得として源泉徴収します

先に結論から書きます。育成就労外国人が育成就労実施者(受入れ機関)から支払を受ける給与の収入金額は、給与所得として所得税の課税対象となり、源泉徴収の対象になります。租税条約にある学生・事業修習者の免税規定は、原則として使えません。国税庁の回答は次のとおりです。

国税庁 文書回答事例「回答内容」(令和8年9月15日)

標題のことについては、ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません。

「貴見」というのは、照会した側が示した見解のことです。つまり、照会者が「源泉徴収の対象と取り扱って差し支えないか」と尋ね、国税庁が「そのとおりで差し支えない」と答えた、という形になっています。関係する法令条項として挙げられているのは、所得税法第28条、第183条、そして租税条約です。

誰が誰に照会したのか

この文書回答事例は、個別の会社が自分の取引について尋ねたものではありません。照会したのは出入国在留管理庁と厚生労働省で、照会者の欄には出入国在留管理庁 政策課長と、厚生労働省 参事官(海外人材育成担当)の名前が並んでいます。制度を所管する省庁が、制度の運用開始前に税務上の取扱いを確認した、という性格のものです。

項目内容
照会者出入国在留管理庁(法人番号 7000012030004)/厚生労働省(法人番号 6000012070001)
照会の日付令和8年9月3日
回答年月日令和8年9月15日
回答者国税庁課税部長
関係する法令条項等所得税法第28条、第183条、租税条約

所管省庁が先に確認してくれているので、受入れ側としては、これを拠りどころにできます。個別に事前照会を出す必要はありません。

なぜ論点になるのか。租税条約の「専ら…訓練を受ける」

そもそもなぜ論点になるのか。照会の趣旨にその説明があります。所得税法上、居住者が雇用契約に基づき給与の支払を受ける場合、その給与は給与所得として課税対象になります。ところが租税条約の中には、これとは別に免税を定めているものがあるのです。

照会「1 照会の趣旨」より

我が国が締結した所得に対する租税に関する二重課税の回避又は脱税の防止のための条約(以下「租税条約」といいます。)の中には、個人が「専ら…訓練を受ける」者に該当する場合には、一定の要件の下で、我が国で支払われる給与に係る所得税を免除する規定(注)を有しているものがあります。

照会は、この規定の例として日タイ租税条約第19条を挙げています。技能実習制度の下では、この「専ら…訓練を受ける」者に当たるとして免税の適用を受けてきた例がありました。制度が育成就労に変わったとき、同じ扱いでよいのか。そこが確認されたわけです。

該当しないとされた理由

照会者が示した理由は、制度の目的と実態の両面からのものです。育成就労外国人は、人手不足分野における人材確保をも目的とした制度により在留する者であり、育成就労実施者との雇用契約に基づき、育成就労産業分野に属する幅広い技能を要する業務に従事し、その対価として給与の支払を受けることが予定されている。だから原則として「専ら…訓練を受ける」者には該当しない、という組み立てです。

照会「3 事前照会者の求める見解となることの理由」より

原則として、租税条約で定める「専ら…訓練を受ける」者に該当せず、育成就労実施者から支払を受ける給与の収入金額については、給与所得として、所得税の課税対象及び源泉徴収の対象になるものと考えられます。

ポイントは「専ら」という言葉です。訓練の要素がまったくないという話ではなく、訓練だけを受けているわけではないという判断です。育成就労は雇用契約に基づく就労であり、その対価として給与が支払われる。だから給与所得だ、ということになります。

技能実習制度と何が違うのか

照会の事実関係には、技能実習制度との違いが具体的に並べられています。なぜ従来と結論が変わるのかは、ここを読むとはっきりします。育成就労制度は、人手不足分野において、我が国での3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成し、人材を確保する制度と説明されています。

論点技能実習制度育成就労制度
制度の目的技能等の移転による国際協力の推進人材育成と人材確保
帰国本国に帰国後に活用することを前提とし、帰国が制度上の原則帰国を前提とする要件等を撤廃
労働力の需給調整手段として行われてはならない旨が法律に規定同旨の規定は設けられていない
業務の区分必須業務・関連業務・周辺業務の区分あり必須業務の時間制限を緩和、関連業務・周辺業務の区分を廃止

「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」という規定は、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律第3条第2項に置かれていたものです。育成就労法には同旨の規定がありません。また業務区分の廃止は、外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律施行規則第13条第2項に関するもので、照会は「柔軟な働き方が可能となりました」と説明しています。制度として就労の色が濃くなった、ということです。

なお、育成就労を行わせようとする者は、育成就労外国人ごとに育成就労の実施に関する計画(育成就労計画)を作成し、所定の認定を受ける必要があります(育成就労法第8条)。税務の話ではありませんが、受入れの前提になる手続です。

回答に付された2つのただし書き

国税庁の回答には、文書回答事例に共通して付される申し添えが2つあります。これは読み飛ばさないほうがよいところです。実際の扱いがこのとおりになるとは限らない、という趣旨だからです。

回答内容より

(1) この文書回答は、ご照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答ですので、個々の納税者が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあります。
(2) この回答内容は国税庁としての見解であり、個々の納税者の申告内容等を拘束するものではありません。

照会の趣旨にも「原則として」という言葉が入っています。実態が照会の前提と違えば、結論も変わり得ます。とはいえ、制度を所管する省庁が示した事実関係に沿って受け入れているかぎり、この回答に従って源泉徴収するのが素直です。

受入れ側の実務でやること

受入れ側でやることは、日本人の従業員を雇ったときと基本的に同じになります。雇用契約に基づいて給与を支払い、給与所得として源泉徴収し、納付する。租税条約に関する届出書を出して免税を受ける、という流れにはならない、という点だけが従来と違うところです。

制度の運用開始は令和9年4月1日です。いま技能実習生を受け入れていて、育成就労に移行することを考えている事業者の方は、給与計算のしかたが変わる可能性があります。移行の時期が決まった段階で、源泉徴収税額の計算と、年末調整の対象になるかどうかを一度確認しておいてください。扶養控除等申告書の受け取りも含めて、雇用の入口で整えておくほうが後が楽です。

当事務所はふじみ野市鶴ケ岡にあります。製造・建設・介護・農業で外国人材を受け入れている事業者の方から、給与計算と源泉徴収のご相談をいただくことがあります。制度が切り替わる前に見ておきたいという段階でも、お気軽にご相談ください。

よくある質問

育成就労外国人に支払う給与からの源泉徴収は必要ですか

先に結論から書きます。育成就労外国人が育成就労実施者(受入れ機関)から支払を受ける給与の収入金額は、 給与所得として所得税の課税対象となり、源泉徴収の対象 になります。租税条約にある学生・事業修習者の免税規定は、原則として使えません。国税庁の回答は次のとおりです。→ 本文で読む

租税条約の免税は使えますか

そもそもなぜ論点になるのか。照会の趣旨にその説明があります。所得税法上、居住者が雇用契約に基づき給与の支払を受ける場合、その給与は給与所得として課税対象になります。ところが租税条約の中には、これとは別に免税を定めているものがあるのです。→ 本文で読む

技能実習制度と育成就労制度では税務上の扱いが違うのですか

照会の事実関係には、技能実習制度との違いが具体的に並べられています。なぜ従来と結論が変わるのかは、ここを読むとはっきりします。育成就労制度は、人手不足分野において、我が国での3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成し、人材を確保する制度と説明されています。→ 本文で読む

この文書回答事例は誰が照会したものですか

この文書回答事例は、個別の会社が自分の取引について尋ねたものではありません。照会したのは 出入国在留管理庁と厚生労働省 で、照会者の欄には出入国在留管理庁 政策課長と、厚生労働省 参事官(海外人材育成担当)の名前が並んでいます。制度を所管する省庁が、制度の運用開始前に税務上の取扱いを確認した、という性格のものです。→ 本文で読む

育成就労制度はいつから始まりますか

受入れ側でやることは、日本人の従業員を雇ったときと基本的に同じになります。雇用契約に基づいて給与を支払い、給与所得として源泉徴収し、納付する。租税条約に関する届出書を出して免税を受ける、という流れにはならない、という点だけが従来と違うところです。→ 本文で読む

出典

  1. 国税庁「育成就労外国人が育成就労実施者から支払を受ける給与の課税関係について」(文書回答事例・回答年月日 令和8年9月15日・回答者 国税庁課税部長)
    https://www.nta.go.jp/law/bunshokaito/gensen/260915/index.htm
  2. 同 別紙(照会)出入国在留管理庁政策課長・厚生労働省参事官(海外人材育成担当)/令和8年9月3日
    https://www.nta.go.jp/law/bunshokaito/gensen/260915/01.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

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