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経費

自宅や自家用車を事業に転用したときの減価償却。
耐用年数の1.5倍で減価の額を引き、簡便法で償却します

開業にあたって、「もともと持っていた車や自宅の一部を事業に使うが、経費にできるのか」というご質問をいただきます。

答えを先に書くと、個人で使っていた中古資産を事業に転用した場合も減価償却できます。ただし、買った値段そのままではなく、個人で使っていた期間の「減価の額」を引いた金額から償却を始めます。その減価の額は、法定耐用年数の1.5倍の年数で旧定額法に準じて計算します。

転用後の償却は、中古資産の見積耐用年数(簡便法)を使えます。計算の順番と端数の扱いを間違えやすいところですので、国税庁のタックスアンサーNo.2108に沿って確かめます。

公開 最終更新

この記事の要点

個人で使っていた中古の家屋や自動車を事業や不動産貸付に使い始めたときの減価償却は2段階です。まず、法定耐用年数の1.5倍の年数で旧定額法に準じて非業務用期間の減価の額を計算し、取得価額から引いて転用日の未償却残高を出します。次に、中古資産の見積耐用年数(簡便法)による償却率で、転用後の減価償却費を計算します。償却方法は転用日ではなく取得日で決まります。国税庁タックスアンサーNo.2108をもとに整理しました。

先に見ておくと分かりやすいもの

計算は2段階。減価の額を引いてから償却する

非業務用資産を業務用に転用した場合の減価償却は、①個人で使っていた期間の「減価の額」を計算して取得価額から引き、転用日の未償却残高を出す、②その未償却残高を基に転用後の減価償却費を計算する、という2段階です。国税庁のタックスアンサーNo.2108は次のように説明しています。

国税庁 タックスアンサー No.2108「中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却」

まず、非業務用資産として使用していた期間における「減価の額」の計算を行い、この「減価の額」をその資産の取得価額から控除した金額をその業務の用に供した日におけるその資産の未償却残高とします。

非業務用資産とは、中古で取得した家屋や自動車のように使用や期間の経過で減価する資産で、不動産所得・事業所得・山林所得・雑所得を生ずべき業務に使っていないものです。個人で使っていた期間は経費になっていませんが、その間も価値は減っているので、その分を先に差し引くという考え方です。

転用日の未償却残高。法定耐用年数の1.5倍で旧定額法に準じて計算

転用日の未償却残高は、取得価額から、業務に使っていなかった期間について、法定耐用年数の1.5倍に相当する年数で旧定額法に準じて計算した減価の額を控除した金額です。個人使用の期間は事業より傷みが少ないと考えて、耐用年数を長めに見る仕組みです。

項目内容
転用日の未償却残高取得価額 - 非業務用期間の減価の額
減価の額の計算に使う年数法定耐用年数の1.5倍に相当する年数
減価の額の計算方法旧定額法に準じて計算
掛ける年数取得した日から業務の用に供した日までの期間に係る年数

ここで使うのは、取得日にかかわらず旧定額法です。国税庁は「非業務用資産の減価の額の計算は、旧定額法によることに留意してください」と注意を添えています。また、この計算には所得税法施行令第134条第2項(償却累積額による償却費の特例)の適用はありません。

なお、平成19年3月31日以前に取得した資産で、減価の額の累積額が取得価額の95パーセントに達している非業務用資産を転用した場合は、平成20年分以後において同項の規定に従って減価償却費を計算します。かなり古い資産を転用するケースの特則ですので、一般の方はまず上の表の計算を押さえてください。昭和27年12月31日以前に取得した資産についても別の計算式が定められています。

端数の扱い。6か月以上は1年、1.5倍の端数は切り捨て

端数の扱いは2か所あります。業務に使っていなかった期間の年数に1年未満の端数があるときは、6か月以上は1年とし、6か月に満たない端数は切り捨てます。法定耐用年数の1.5倍に相当する年数に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。

何の端数か扱い
業務に使っていなかった期間の年数6か月以上の端数は1年、6か月未満は切り捨て
法定耐用年数×1.5の年数1年未満の端数は切り捨て

2つの端数処理の方向が違うので注意してください。使っていなかった期間は「四捨五入に近い切り上げあり」、1.5倍の年数は「常に切り捨て」です。車検証の登録日や売買契約書の日付から転用日までを月数で数え、それを年数に直すところで最初の端数処理が入ります。

転用後の償却方法は取得日で決まる

業務に使い始めた後の償却方法は、その資産の取得年月日(転用した日ではありません)によって決まります。建物は平成10年4月1日以後の取得なら旧定額法または定額法だけ、それ以外の資産は定額法と定率法の選択ができます。

取得年月日建物建物附属設備・構築物左記以外の一般的な有形減価償却資産
平成10年3月31日以前旧定額法または旧定率法旧定額法または旧定率法旧定額法または旧定率法
平成10年4月1日から平成19年3月31日まで旧定額法旧定額法または旧定率法旧定額法または旧定率法
平成19年4月1日から平成24年3月31日まで定額法定額法または(250パーセント)定率法定額法または(250パーセント)定率法
平成24年4月1日から平成28年3月31日まで定額法定額法または(200パーセント)定率法定額法または(200パーセント)定率法
平成28年4月1日以後定額法定額法定額法または定率法

平成24年4月1日以後に取得した資産に使える定率法の償却率は、定額法の償却率を2.5倍した250パーセント定率法から、2倍した200パーセント定率法に引き下げられています。数年前に買った自家用車を今年転用した場合、償却方法の判定は「数年前の取得日」で行います。転用日で表を見ないよう注意してください。

中古資産の耐用年数。簡便法の計算

転用した資産が中古で取得したものであれば、法定耐用年数ではなく、取得の時以後の使用可能期間の年数を耐用年数とすることができます。見積もりが難しいときは、次の算式(簡便法)で計算した年数を使えます。

区分簡便法の算式
イ 法定耐用年数の一部を経過した資産(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20/100
ロ 法定耐用年数の全部を経過した資産法定耐用年数×20/100

計算した年数に1年未満の端数があれば切り捨て、2年未満になった場合は2年とします。ここで大切なのは、経過年数は「新築等されてから中古資産を取得した時までの期間」で、自分が個人として使っていた期間は含まないという点です。また、その資産を使うために取得価額の50パーセントを超える資本的支出をした場合は、簡便法は使えません。

「取得の時」で見積もる耐用年数と、「転用日」までの減価の額の計算は、起点が違います。中古資産の耐用年数の考え方は中古資産の耐用年数と簡便法でも説明しています。

転用後の減価償却費の計算

転用後の減価償却費は、転用日の未償却残高または取得価額を基に、中古資産の耐用年数に応じた償却率を用いて計算します。償却方法が旧定額法・旧定率法か、定額法・定率法かで、参照する計算方法が分かれます。

償却方法計算方法の参照先
旧定額法・旧定率法国税庁 コード2105「旧定額法と旧定率法による減価償却(平成19年3月31日以前に取得した場合)」
定額法・定率法国税庁 コード2106「定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」

実際の申告では、①取得価額と取得日の確認、②転用日までの年数と1.5倍の年数の計算、③減価の額と未償却残高の計算、④簡便法による耐用年数の計算、⑤償却率を掛けて年の途中なら月割り、という順で進みます。自宅や自家用車のように私用でも使い続ける資産は、さらに家事按分で事業使用分だけを必要経費にします。転用後に大きな修理をした場合は、経費にできる修繕費か取得価額に加える資本的支出かの判断も必要です(修繕費と資本的支出)。

よくある質問

個人で使っていた車を事業に使い始めたら減価償却できますか

非業務用資産を業務用に転用した場合の減価償却は、 ①個人で使っていた期間の「減価の額」を計算して取得価額から引き、転用日の未償却残高を出す、②その未償却残高を基に転用後の減価償却費を計算する 、という2段階です。国税庁のタックスアンサーNo.2108は次のように説明しています。→ 本文で読む

転用した資産の未償却残高はどのように計算しますか

転用日の未償却残高は、 取得価額から、業務に使っていなかった期間について、法定耐用年数の1.5倍に相当する年数で旧定額法に準じて計算した減価の額を控除した金額 です。個人使用の期間は事業より傷みが少ないと考えて、耐用年数を長めに見る仕組みです。→ 本文で読む

転用までの期間に1年未満の端数があるときはどうしますか

端数の扱いは2か所あります。 業務に使っていなかった期間の年数に1年未満の端数があるときは、6か月以上は1年とし、6か月に満たない端数は切り捨てます 。 法定耐用年数の1.5倍に相当する年数に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます 。→ 本文で読む

転用した資産の償却方法は転用日で決まりますか

業務に使い始めた後の償却方法は、 その資産の取得年月日(転用した日ではありません) によって決まります。建物は平成10年4月1日以後の取得なら旧定額法または定額法だけ、それ以外の資産は定額法と定率法の選択ができます。→ 本文で読む

転用した中古資産の耐用年数はどう計算しますか

転用した資産が中古で取得したものであれば、法定耐用年数ではなく、 取得の時以後の使用可能期間の年数を耐用年数 とすることができます。見積もりが難しいときは、次の算式(簡便法)で計算した年数を使えます。→ 本文で読む

転用後の減価償却費はどのように計算しますか

転用後の減価償却費は、 転用日の未償却残高または取得価額を基に、中古資産の耐用年数に応じた償却率を用いて計算 します。償却方法が旧定額法・旧定率法か、定額法・定率法かで、参照する計算方法が分かれます。→ 本文で読む

出典

  1. 国税庁「No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2108.htm

この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。

転用した資産は、買った日・値段・事業に使い始めた日の3つを控えてください。

自家用車や自宅の一部を事業に使い始めた年は、この計算のほかに家事按分も必要になります。買ったときの契約書や車検証で取得日と取得価額を確かめ、転用日までの年数を数えるところから始めます。開業初年度の帳簿づくりからお手伝いします。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。