申告
交換業者のハッキングで補償金を受け取ったとき。
非課税の損害賠償金ではなく雑所得です
預けていた交換業者がハッキングに遭い、暗号資産は返ってこない。代わりに日本円で補償金が振り込まれた。被害の埋め合わせなのだから、税金はかからないのではないか。そう考えるのは自然だと思います。
国税庁のタックスアンサーNo.1525は、この補償金は非課税となる損害賠償金には該当せず、原則として総合課税の雑所得の対象になるとしています。
なぜ雑所得になるのか、所得はいくらになるのか、損が出たときはどうなるのかを、No.1525の本文で確認します。
この記事の要点
暗号資産交換業者が不正送信の被害に遭い、預けていた暗号資産の代わりに日本円の補償金を受け取った場合、その補償金は非課税となる損害賠償金には当たらず、原則として総合課税の雑所得です。補償金と同額で暗号資産を売却したのと同じ結果になるためです。補償金の計算の基礎になった1単位当たりの価額が取得単価より低ければ損失になり、他の雑所得と通算できます。国税庁タックスアンサーNo.1525をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
補償金は原則として総合課税の雑所得
先に結論です。交換業者が不正送信の被害に遭い、預けていた暗号資産の代わりに日本円の補償金を受け取った場合、その補償金は非課税となる損害賠償金には該当せず、原則として総合課税の雑所得の対象になります。
国税庁 タックスアンサー No.1525「暗号資産交換業者から暗号資産に代えて金銭の補償を受けた場合」
したがって、ご質問の補償金は、非課税となる損害賠償金には該当せず、原則として総合課税の雑所得の対象となります。
No.1525の設例では、補償金の額は、預けていた暗号資産の保有数量に、返還できなくなった時点での価額等を基に算出した1単位当たりの価額を掛けた金額とされています。こうした計算で支払われる補償金が前提です。
補償金と同額で暗号資産を売ったのと同じ結果になる
損害賠償金でも、すべてが非課税になるわけではありません。No.1525は、本来所得となるべきもの、または得られたであろう利益を喪失した場合にこれが賠償されるときは、非課税にならないとしています。
暗号資産を返せない代わりに払われる補償金は、返還できなくなった暗号資産に代えて支払われる金銭です。その補償金と同額で暗号資産を売却して金銭を得たのと同一の結果になるため、本来所得となるべきもの、得られたであろう利益を喪失した部分が含まれている、という整理です。
ただしNo.1525は、顧客と交換業者の契約内容や補償金の性質などを総合勘案して判断する、とも書いています。通常の補償であれば雑所得、と考えておくのがよいでしょう。非課税になる損害賠償金の範囲は損害賠償金が非課税になる場合で整理しています。
所得金額は補償金から譲渡原価を引いた額
暗号資産を売ったのと同じ結果になる、ということは、計算も売却と同じ形です。補償金の額から、補償の対象になった暗号資産の譲渡原価を引いた金額が所得金額になると考えられます。
譲渡原価は、その暗号資産の1単位当たりの取得価額に数量を掛けて出します。同じ暗号資産を何度も買っていれば、総平均法か移動平均法で1単位当たりの価額を計算します。計算のしかたは暗号資産の税金は原則として雑所得をご覧ください。
補償金を受け取った年の収入になる点にも注意してください。その年のほかの暗号資産の取引と合わせて、雑所得の金額を計算します。
取得単価より低い補償なら損失。他の雑所得と通算できる
高いときに買った暗号資産なら、補償金の額のほうが取得価額より小さいこともあります。No.1525は、補償金の計算の基礎となった1単位当たりの価額がもともとの取得単価よりも低額である場合には損失が生じ、その損失を他の雑所得の金額と通算できるとしています。
通算できるのは、同じ雑所得の中です。国税庁の暗号資産FAQは、雑所得の計算上生じた損失は給与所得などほかの所得から差し引けないとしています。補償で損が出ても、給与の税金が戻ってくるわけではありません。
自分のウォレットから流出した場合
No.1525が扱っているのは、交換業者に預けていた暗号資産が流出し、交換業者から補償金を受け取った場合です。ご自身で管理するウォレットから暗号資産が流出した場合や、秘密鍵を失った場合の扱いは、国税庁のFAQ・タックスアンサーに直接の記載がありません。
こうした場合は、何が起きたのか、取り戻せる見込みがあるのかといった事実関係で判断が変わります。日付・数量・取引の記録と、流出の経緯が分かる資料を残したうえで、個別にご相談ください。盗難などの損失を控除する雑損控除は、対象になる資産や損失の範囲が決まっている制度です。
よくある質問
交換業者のハッキングで受け取った補償金に税金はかかりますか
先に結論です。 交換業者が不正送信の被害に遭い、預けていた暗号資産の代わりに日本円の補償金を受け取った場合、その補償金は非課税となる損害賠償金には該当せず、原則として総合課税の雑所得の対象になります。→ 本文で読む
暗号資産の補償金が非課税の損害賠償金にならないのはなぜですか
損害賠償金でも、すべてが非課税になるわけではありません。 No.1525は、本来所得となるべきもの、または得られたであろう利益を喪失した場合にこれが賠償されるときは、非課税にならないとしています。→ 本文で読む
補償金を受け取ったときの所得金額はどう計算しますか
暗号資産を売ったのと同じ結果になる、ということは、計算も売却と同じ形です。 補償金の額から、補償の対象になった暗号資産の譲渡原価を引いた金額が所得金額 になると考えられます。 譲渡原価は、その暗号資産の1単位当たりの取得価額に数量を掛けて出します。同じ暗号資産を何度も買っていれば、総平均法か移動平均法で1単位当たりの価額を計算します。計算のしかたは 暗号資産の税金は原則として雑所得 をご覧ください。→ 本文で読む
補償金が取得価額より少ない場合の損失は通算できますか
高いときに買った暗号資産なら、補償金の額のほうが取得価額より小さいこともあります。 No.1525は、補償金の計算の基礎となった1単位当たりの価額がもともとの取得単価よりも低額である場合には損失が生じ、その損失を他の雑所得の金額と通算できるとしています。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.1525 暗号資産交換業者から暗号資産に代えて金銭の補償を受けた場合」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1525.htm - 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」平成30年11月(令和7年12月最終改訂)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
補償の通知と、預けていた暗号資産の取得価額をそろえておいてください。
補償金の所得を計算するには、補償金の計算の基礎になった1単位当たりの価額と、預けていた暗号資産の取得単価が必要です。交換業者からの通知と、それまでの取引履歴を残しておいてください。損失が出る場合は、同じ年の他の雑所得との通算まで含めて整理します。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。
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