贈与
共働き夫婦の住宅購入と贈与税。
資金の負担割合と登記の持分
共働きの夫婦が、二人でお金を出し合って住宅を買う。登記は「夫婦で半分ずつ」にしておこう。この登記のしかたが、贈与税の問題になることがあります。
国税庁のタックスアンサーNo.4411は、夫婦で資金を負担したとき、実際の購入資金の負担割合と、所有権登記の持分割合が異なっている場合には、贈与税の問題が生ずることがあるとしています。設例の数字を使って、どこにずれが出るのか、どう揃えれば問題が生じないのかを確認します。
この記事の要点
共働きの夫婦が住宅を共有名義で買うとき、実際の資金の負担割合と所有権登記の持分割合が異なると、贈与税の問題が生じることがあります。国税庁の設例では、3,000万円の住宅を夫2,000万円・妻1,000万円で負担し、登記を2分の1ずつにすると、差額の500万円は夫から妻への贈与になります。資金の負担割合に応じた登記であれば問題は生じません。国税庁タックスアンサーNo.4411をもとに整理しました。
先に見ておくと分かりやすいもの
資金の負担割合と登記の持分がずれると、贈与税の問題が生じる
共働きの夫婦が住宅を購入するとき、購入資金を夫婦で共同して負担することがあります。実際の資金の負担割合と、所有権登記の持分割合が異なっていると、贈与税の問題が生じることがあります。
国税庁 タックスアンサー No.4411「共働きの夫婦が住宅を買ったとき」
そのようなときに、実際の購入資金の負担割合と所有権登記の持分割合が異なっている場合には、贈与税の問題が生ずることがあります。
贈与税は、個人から贈与により財産を取得したときにかかる税金です(No.4402)。夫婦のあいだでも、対価を支払わずに利益を受けたときは、その利益を受けた人が、利益を受けさせた人から贈与により取得したものとみなされます(相続税法第9条)。住宅の持分を、自分が出した資金より多く登記すると、その多い部分が、相手から贈与された扱いになる、という考え方です。
国税庁の設例。3,000万円の住宅を夫2,000万円・妻1,000万円で買った
No.4411は、総額3,000万円の住宅を購入し、夫が2,000万円、妻が1,000万円の資金を負担したものの、所有権の登記は夫と妻それぞれの持分を2分の1とした場合を設例にしています。この場合、差額の500万円は、夫から妻へ贈与があったことになります。
| 夫 | 妻 | |
|---|---|---|
| 購入資金の負担(総額3,000万円) | 2,000万円 | 1,000万円 |
| 登記の持分 | 2分の1 | 2分の1 |
| 持分に相当する価額(3,000万円×2分の1) | 1,500万円 | 1,500万円 |
| 負担した資金との差 | 500万円多く出している | 500万円分の持分が多い |
妻の持分は登記上2分の1なので、3,000万円の2分の1の1,500万円分です。しかし購入のために妻が負担した資金は1,000万円なので、差額の500万円は夫から妻への贈与になります。
国税庁 タックスアンサー No.4411「共働きの夫婦が住宅を買ったとき」
この事例の場合、資金の負担割合に応じて夫3分の2、妻3分の1の所有権登記がなされていれば、贈与税の問題は生じません。
ずれの出し方。持分で受け取った価額から、出した資金を引く
贈与になる額は、登記の持分に相当する価額から、その人が実際に負担した資金を引いて求めます。設例では、妻の持分に相当する価額1,500万円から負担した資金1,000万円を引いた500万円です。
| 手順 | 設例の場合 |
|---|---|
| 1. 購入の総額を確かめる | 3,000万円 |
| 2. 登記の持分から、持分に相当する価額を出す | 妻は2分の1なので1,500万円 |
| 3. その人が実際に負担した資金を確かめる | 妻は1,000万円 |
| 4. 2から3を引く | 500万円。この分が夫から妻への贈与 |
資金の負担割合に応じた持分にすれば、この差は出ません。設例では、夫3分の2、妻3分の1の登記であれば、夫の持分は3,000万円の3分の2の2,000万円、妻の持分は3分の1の1,000万円で、どちらも負担した資金と同じ額になります。
同じ考え方は、資金を出し合う形がほかでもあてはまります。たとえば、3,000万円の住宅の資金を夫がすべて負担し、登記の持分を夫婦で2分の1ずつにした場合は、妻の持分に相当する価額1,500万円から負担した資金を引いた1,500万円が、夫から妻への贈与の対象になる、と同じ手順で計算できます。国税庁の設例そのものではなく、設例の手順を当てはめた場合の例です。
110万円を超えると申告が要る。ほかの贈与と合計する
暦年課税の贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた残りの額にかかります。1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額が110万円以下なら、贈与税はかからず、申告も不要です。
国税庁 タックスアンサー No.4402「贈与税がかかる場合」
したがって、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です。)。
110万円を超える場合は、贈与を受けた人が、財産を取得した年の翌年2月1日から3月15日までの間に、申告と納税をします。設例の500万円は110万円を超えるため、申告を考える側の話になります。ほかの贈与があれば、その年の贈与の合計額で判断します。贈与税の速算表への当てはめかたは贈与税の計算の記事に書きました。
婚姻20年以上の夫婦なら、配偶者控除の特例がある場合がある
婚姻期間が20年以上の夫婦のあいだで、居住用不動産、または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われたときは、贈与税の申告をすることで、基礎控除額110万円のほかに最高2,000万円まで控除できる特例があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 婚姻期間 | 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと |
| 贈与された財産 | 居住用不動産であること、または居住用不動産を取得するための金銭であること |
| 居住 | 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その居住用不動産に現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること |
この特例は、同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか受けられません。適用を受けるには、贈与税の申告書に、戸籍の謄本または抄本、戸籍の附票の写し、居住用不動産の登記事項証明書などを添付して申告します。婚姻期間が20年に満たない夫婦は対象外です。詳しくは国税庁のNo.4452に書かれています。
購入の前に揃えておくこと
登記の持分は、購入の前に、資金の負担割合と揃えておくのが基本です。国税庁の設例では、資金の負担割合に応じた登記であれば、贈与税の問題は生じないとされています。
| 確かめること | 見るところ |
|---|---|
| 購入の総額 | 売買契約書の金額。登記の持分に相当する価額を出す元になる |
| 各人が出す資金 | 頭金や、それぞれが負担する額。誰のお金で払ったかが分かる記録を残しておく |
| 登記の持分 | 負担した資金の割合と揃っているか。2分の1ずつにしたいときは、負担額も揃うか |
| ずれがあるとき | 差額は贈与の対象になる。110万円を超えるか、婚姻20年以上で特例が使えるか |
親からの借入や援助が資金に含まれるときは、親からお金を借りるときの贈与税の記事も確認してください。住宅を買った後の住宅ローン控除は、贈与税とは別の制度です。住宅ローン控除の全体像の記事にまとめました。
よくある質問
共働きの夫婦が住宅を買うと、どんなときに贈与税の問題が生じますか
共働きの夫婦が住宅を購入するとき、購入資金を夫婦で共同して負担することがあります。実際の資金の負担割合と、所有権登記の持分割合が異なっていると、贈与税の問題が生じることがあります。→ 本文で読む
登記を2分の1ずつにしたとき、贈与になる額はいくらですか
No.4411は、総額3,000万円の住宅を購入し、夫が2,000万円、妻が1,000万円の資金を負担したものの、所有権の登記は夫と妻それぞれの持分を2分の1とした場合を設例にしています。この場合、差額の500万円は、夫から妻へ贈与があったことになります。→ 本文で読む
贈与になる額は、どう計算しますか
贈与になる額は、登記の持分に相当する価額から、その人が実際に負担した資金を引いて求めます。設例では、妻の持分に相当する価額1,500万円から負担した資金1,000万円を引いた500万円です。→ 本文で読む
贈与税の申告が必要になるのは、どんなときですか
暦年課税の贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた残りの額にかかります。1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額が110万円以下なら、贈与税はかからず、申告も不要です。→ 本文で読む
夫婦間の居住用不動産の贈与には、特例がありますか
婚姻期間が20年以上の夫婦のあいだで、居住用不動産、または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われたときは、贈与税の申告をすることで、基礎控除額110万円のほかに最高2,000万円まで控除できる特例があります。→ 本文で読む
出典
- 国税庁「No.4411 共働きの夫婦が住宅を買ったとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4411.htm - 国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm - 国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4452.htm - 相続税法(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073
この記事は、記載時点で公表されている法令・通達・国税庁の資料にもとづいて書いています。制度は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いは変わります。実際のご判断にあたっては、税理士にご相談いただくか、所轄の税務署にお確かめください。当事務所は本記事の情報を用いて行われた判断について責任を負いかねます。
共有名義で住宅を買う前に、負担割合と登記の持分を一緒に確認します。
頭金の出し方、ローンの名義、登記の持分の組み合わせで、贈与税の問題が生じるかどうかが変わります。購入前なら持分を調整でき、購入後でも整理のしかたを一緒に考えられます。ふじみ野市とその近隣の方は訪問でのご相談も承ります。初回30分は無料です。